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「手はお膝」「壁ぺったん」は【不適切保育】なの?おばけ、鬼などを使えば“脅し”?賛否分かれる「望ましくない関わり」現場の捉え方

  • 2024.3.18

「『望ましくない』と考えられる関わり」とは?

「『望ましくない』と考えられる関わり」とは?
「『望ましくない』と考えられる関わり」とは?

保育研究プロジェクト「子ねくとラボ」が、保育士の「こどもの人権擁護の観点から望ましくないと考えられるかかわり」の考え方に関する意識調査を実施し、その結果を発表しました。調査は、2024年2月21日(水)~2月23日(金)の期間、保育士100人を対象にインターネット上で行われました。

昨今ニュースなどで耳にする「不適切保育」という言葉。政府が示すガイドライン(令和5年5月)では、「不適切な保育」とは、『虐待等と疑われる事案』と捉えていますが、これに繋がる恐れのある行為として、こどもの人権擁護の観点から「『望ましくない』と考えられるかかわり」が概念化されています。

「子ねくとラボ」は、「前者においては、メディアの影響もあって社会全般的に認知されるようになりましたが、一方で後者は、保育士がその判断で分かれることがあり、子どもへの親しみのつもりであったり前後の流れの関係から、周囲が見過ごしてしまう場合も考えられます」といいます。

現役の保育士は「望ましくない関わり」についてどのように考えているのでしょうか。

「『望ましくない』と考えられるかかわり」保育士さんの考えは?

子どもに言うことを聞いてもらうために、強い言葉や脅し言葉(鬼、おばけ、など)を使うことは「こどもの人権擁護の観点から望ましくないと考えられるかかわり」に当たると思いますか?
子どもに言うことを聞いてもらうために、強い言葉や脅し言葉(鬼、おばけ、など)を使うことは「こどもの人権擁護の観点から望ましくないと考えられるかかわり」に当たると思いますか?

「子ねくとラボ」の調査によると、「子どもに言うことを聞いてもらうために、強い言葉や脅し言葉(鬼、おばけ、など)を使うことは『こどもの人権擁護の観点から望ましくないと考えられるかかわり』に当たると思いますか」という質問に対し、「はい」と回答した人が84%でした。

「子ども(乳児を除く)の意思を聞かずに抱っこして、子どもが望んでいない場所へ移動させることは、『こどもの人権擁護の観点から望ましくないと考えられるかかわり』に当たると思いますか。」という質問に対し、76%が「はい」と回答しました。

「はい」と回答した人は理由に、「ただ恐怖感を抱かせるだけで、何の解決にもならないし、自分自身が幼少期に園の部屋に閉じ込められた記憶が残ってるから」「無理やり行かせることはしたくありません。しかし、命の危険や保健衛生的に必要な場合は行います」「状況によるが、子どもへの言葉がけもなく、気持ちを尊重しない行動は、不安や不信感を抱かせる」などを挙げました。

「いいえ」と回答した人は理由に、「危険を回避するためなら必要だと思う」「周囲に危険が及ぶ場合は、安全確保が優先。 その他の場合は、子どもとの対話が優先。静かな環境は必要」「危険行為から子どもの身を守る為、他人を傷つける行為をやめさせる為、パニックを落ち着かせる為など必要な理由があれば一概に望ましくないと言えない為」などを挙げました。

指示で子どもを動かすのは「望ましくないかかわり」?

指示で子どもを動かす(例:壁ぺったん、手はお膝、など)ことは「こどもの人権擁護の観点から望ましくないと考えられるかかわり」に当たると思いますか
指示で子どもを動かす(例:壁ぺったん、手はお膝、など)ことは「こどもの人権擁護の観点から望ましくないと考えられるかかわり」に当たると思いますか

「指示で子どもを動かす(例:壁ぺったん、手はお膝、など)ことは『こどもの人権擁護の観点から望ましくないと考えられるかかわり』に当たると思いますか」という質問には、「はい」は45%、「いいえ」が55%と、「いいえ」が上回る結果でした。

「はい」と回答した人は理由に、「言葉がけで変わる、指示ではなく誘いかける」「自分で考えるのではなく、監視管理された生活環境にいると感じる。 自然災害などの緊急時には、指示になることがあると思う」などを挙げました。

「いいえ」と回答した人は理由に、「遊びの一貫として取り入れれば当たると思わない」「子どもにとって分かりやすい表現であり、人権問題を感じないから」「ある程度のしつけは大事」「微妙だけど集団を安全にと思うとやむを得ない」などを挙げました。

「今日は良い子で過ごせたね」の声かけは「望ましくない」?

「『“今日は”良い子で過ごせたね』と子どもに声を掛けることは『こどもの人権擁護の観点から望ましくないと考えられるかかわり』に当たると思いますか」という質問に対し、「はい」が72%、「いいえ」が28%という結果でした。

「はい」と回答した人は理由に、「今日はというのが子どもにとってプレッシャーになりそう」「何をもって良いとするのかの基準が示されていないから」「定義が曖昧」「ただその子らしくいることを否定している感じがするから」などを挙げました。

一方「いいえ」と回答した人は、理由に、「褒めることは子どもの成長に繋がる」「い子でいなければいけないと言う価値観の押し付けはNGだが、その子の行動を評価すること自体は問題ない。良い悪いという言葉に固執しだすと言葉狩りになる。事実を伝える気表現法として受け取れる関係性や信頼関係の問題だと考える」「今日の一日の振り返りなどから会話が生まれて派生させることで語彙力が伸びる」「人格形成によくない影響を及ぼすことと人権侵害はイコールではないと思うから」などの意見が挙げられました。

最近、給食時の「完食指導」についてさまざまな議論がされています。

「給食時、子どもの成長を想い、嫌がっている食材も残さず食べさせることは『こどもの人権擁護の観点から望ましくないと考えられるかかわり』に当たると思いますか」という質問に対し、「はい」と回答した人は72%でした。

最後に、勤め先の保育園について「『こどもの人権擁護の観点から望ましくないと考えられるかかわり』に対処するための十分な支援や機会が提供されているか」について、「非常にそう思う」が28%、「ややそう思う」が49%という結果でした。

保育の現場のアップデートだけでなく、周囲の支援強化を

調査を行った「子ねくとラボ」は、「『不適切な保育』と『望ましくないかかわり』の違い、そして具体的には何がその行為に該当するのか、今回の調査でも、賛否が分かれる結果となりました。

意見は違えど、日常的に子どもと関わる中で、保育士が子ども一人ひとりの意思を尊重し、成長を支える環境づくりに注力していることが伺えます。

子育て・保育を取り巻く環境や価値観が日々変化する中、虐待や虐待等に繋がる行為を起こさないためにも、保育の経験年数や役職・年齢に関係なく保育士側の情報アップデートや互いの保育に関するフィードバックの機会が重要なアクションとなりますが、周囲がその支援を強化することも求められているのではないでしょうか」と分析しています。

(LASISA編集部)

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