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傑作『デデデデ』をまずは見てほしい! 2024年の日本のアニメ映画の傑作&期待作10選を全力紹介

  • 2024.3.18
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2024年のアニメ映画の傑作&期待作10選を一挙に紹介しましょう。まず、3月22日公開の『デデデデ 前章』を、最優先に見てほしいのです。(画像出展:(C) 浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee)
2024年のアニメ映画の傑作&期待作10選を一挙に紹介しましょう。まず、3月22日公開の『デデデデ 前章』を、最優先に見てほしいのです。(画像出展:(C) 浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee)

第96回アカデミー賞にて『君たちはどう生きるか』が長編アニメーション賞を受賞。宮崎駿監督作では『千と千尋の神隠し』以来21年ぶりでした。さらに『ゴジラ-1.0』が日本初の視覚効果賞を受賞する快挙を達成。その『君たちはどう生きるか』は3月20日より英語吹替版(日本語字幕付き)の上映が決定しました。

日本のアニメ映画の空前の盛り上がり

さらに、3月中旬現在は『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』と『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』という、熱心なファンを待たせ続けた劇場版アニメが大ヒット記録を更新中。2024年は日本のコンテンツ、特にアニメ映画が空前の盛り上がりを迎えているといっていいでしょう。

今後も『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』(4月12日公開)、『劇場版 ブルーロック -EPIOSODE 凪-』(4月19日公開)、『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』(8月2日公開)、『映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』(8月9日公開)なども待ち受けています。

そして、それら以外でも、2024年は日本のアニメ映画の傑作&大期待作が続々と待ち受けています。ここでは、事前にテレビアニメが展開していない(だからこそ映画単体で楽しめる)10作品を、一挙に紹介しましょう。何より、長めに紹介した1つ目を、最優先で見てほしいです。

1:『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章』3月22日公開

浅野いにおによる同名漫画のアニメ映画化で、巨大な宇宙船が突如として現れた東京の街での女子高生たちの日常をつづる、ほのぼのとした作品かと思っていると……詳細は伏せておきますが、中盤からの展開と演出に鳥肌が立ち、目を見開き涙する、とんでもない衝撃が待ち受けていました。美麗な風景の数々はそれだけで見とれますし、かわいらしいデザインのキャラクターそれぞれの細かやかな心理描写に心をわしづかみにされるでしょう。

(C) 浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee 配給:ギャガ
(C) 浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee 配給:ギャガ



浅野いにおは会議やアフレコに携わるだけでなく、前章だけでも100から200カットのリテイクを制作チームに頼み、自身が直接レタッチや絵を全部描いているところもあって、完成披露試写後もリテイク作業を続けてといると語っています。このアニメとしてのとんでもないクオリティは、原作者が制作にがっつり関わっていてこそのものでもあるのでしょう。

さらに、2人の主人公の声およびコラボソングとなる主題歌を担当したのは、どちらも紅白歌合戦に出場した幾田りらとあの。今回の役へのハマりぶり、そして演技は神がかりです。前者は真面目でちょっとダウナー、後者はいわゆる不思議ちゃんだけど根は素直なキャラクターで、対照的な2人それぞれに訪れる「変化」の表現に、震えるほどの感動があったのです。

(C) 浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee
(C) 浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee



さらには、この映画の公開前に訃報が届いた、『ちびまる子ちゃん』のまる子の声でおなじみのTARAKOの遺作(の1つ)であり、劇中では『ドラえもん』のパロディ的な漫画における、のび太のようなキャラクターを演じ切っていました。この漫画は単にネタとして入れているわけではなく、「藤子・F・不二雄によるダークなSF短編」のような本編の印象に絶妙に絡んだ、大いにリスペクトを感じるものでした。

なお、レーティングはG(全年齢)指定ですが、原作は青年誌掲載であり、わずかに性的な話題や、やや間接的ながらショッキングかつ残酷な表現もあるため、小さいお子さん向けの内容ではなく、中学生(少なくとも小学校高学年)以上推奨の作品だと申し上げておきます。この前章だけだと、先が気になるという純粋な興味はともかく、大きな疑問が残りよくも悪くもモヤモヤを抱えることも事実でしょう。

(C) 浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee
(C) 浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee



そのうえで、この『デデデデ』はまだ「前章」の段階で、完成披露試写会と先行上映回で万雷の拍手が起こっていたことに大納得できる、『ゴールド・ボーイ』に並ぶ筆者個人の現時点での2024年のベスト映画候補の傑作です。楽しく明るいだけではない、終末映画にして「暗黒」青春映画を求める人はひとまず見てみて、4月19日公開の『後章』を心待ちにしてほしいです。

2&3:『クラユカバ』&『クラメルカガリ』4月12日公開

長年にわたり個人映像作家として活動してきた塚原重義監督による、同日公開の2本の長編(それぞれ上映時間は約1時間)アニメ映画です。2作に共通した大きな魅力は、大正時代と「スチームパンク」が組み合わさったレトロな世界観と、落語や歌舞伎の「口上」を思わせる勢いのあるナレーション。唯一無二といってもいいほど、オリジナリティと強い作家性を感じる内容になっていました。

『クラユカバ』は地下世界に足を踏み入れる私立探偵の活躍を描く作品で、謎めいた場所での冒険が面白い内容。『クラメルカガリ』は閉鎖的な場所での少年少女の心の揺れ動きを描くことから、日本の漫画『銃夢』(集英社)も連想しました。

『クラユカバ』での講談師である六代目・神田伯山のやさぐれた青年、『クラメルカガリ』での佐倉綾音の控えめのようで芯のある少女など、豪華なボイスキャストのハマりぶりと、クセの強いキャラクターどうしの掛け合いも大きな見どころ。『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』と同日公開かつやや限られた上映館数ではありますが、世界観やキャラクターを直感的に好きになった人には大推薦します。

なお、2本のどちらを先に見ても楽しめますが、個人的にはより親しみやすい『クラメルカガリ』から、よりディープな『クラユカバ』、という順に見るのがおすすめです。

さて、ここからは筆者が本編未見の作品ではありますが、テンポを上げて次々に紹介していきましょう。

4:『トラペジウム』5月10日公開

乃木坂46一期生・高山一実の長編小説デビュー作が原作。「SNSはやらない」「彼氏は作らない」「学校では目立たない」「東西南北の美少女を仲間にする」を自分に課して、絶対にアイドルになると決意をした高校1年生の少女が、別々の学校に通う仲間と夢を追いかける様を描くとのこと。

『推しの子』が大ブームの今だからこそのアイドルへの向き合い方、映画『ちはやふる』や『アリスとテレスのまぼろし工場』などの横山克の楽曲も大いに期待できます。

5:『ルックバック』6月28日公開

劇場用アニメ『チェンソーマン レゼ篇』(公開日未定)も発表されている、藤本タツキによる漫画作品が原作で、田舎町に住む性格が正反対の2人の少女の漫画へのひたむきな思いと、月日は流れてからの出来事が描かれます。

監督・脚本・キャラクターデザインを引き受けるのは『借りぐらしのアリエッティ』『風立ちぬ』などに主要スタッフとして携わった押山清高であり、アニメとしてのクオリティはほぼ保証済みでしょう。主要ボイスキャストが河合優実と吉田美月喜になることも発表されました。

6:『化け猫あんずちゃん』7月公開

いましろたかしの同名漫画が原作で、30年以上生きて人の言葉も話すようになった化け猫を主人公にした物語です。特徴的なのは「実写で撮影した映像から動きや表情を抽出してアニメにする」という「ロトスコープ」の手法を採用していること。

『カラオケ行こ!』の山下敦弘監督が実写として撮影し、その映像をもとに『花とアリス殺人事件』に参加した久野遥子監督が中心となりアニメを制作するという、ダブル監督体制もユニーク。化け猫の声と動きを担当した、化け猫役の森山未來の表現力にも注目です。

7:『数分間のエールを』初夏公開

ミュージックビデオの制作に没頭する男子高校生と、ミュージシャンの道を断念した女性英語教師の姿を描く、原作のないオリジナル作品です。ヨルシカのMVなども制作してきた映像制作チームHurray!の3人が、映像統括として監督・演出・キャラクターデザインなど映像のほぼ全てを担当しています。

石川県が舞台であり、発表時には能登半島地震で被害にあった人たちへのメッセージも寄せられました。テレビアニメ『宇宙よりも遠い場所』(AT-X、TOKYO MXほか)などが絶賛された花田十輝による脚本だからこその、青春物語の輝きやみずみずしさにも期待できます。

8:『きみの色』夏公開

人の感情の「色」が見えてしまう女子高校生が、美しい色を放つ少女と、音楽好きの少年とバンドを組むことになるというあらすじで、思春期の少年少女たちの自立や葛藤、はたまた恋模様を描く青春物語になるとのことです。

『映画 聲の形』やテレビアニメ『平家物語』(フジテレビ系ほか)などの山田尚子監督×吉田玲子の脚本×牛尾憲輔の音楽という布陣はもう「間違いない」ですし、青春音楽映画×原作のないオリジナル作品の新たな傑作となることも期待できます。

9:『ふれる。』秋公開

『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』『心が叫びたがってるんだ。』『空の青さを知る人よ』に続く、長井龍雪監督×岡田麿里の脚本×田中将賀のキャラクターデザインによる、こちらも原作のないオリジナル作品です。

これまでは岡田麿里の故郷である埼玉県秩父での物語が展開していましたが、今回の舞台は東京。言葉でうまくコミュニケーションできない少年が不思議な力を持つ生き物と出会い、それによりつながった3人の物語であることが明かされています。

10:『メイクアガール』(公開日未定)

SNS総フォロワー400万人超を誇る3DCGアニメクリエイター・安田現象による初の長編アニメ映画にして、こちらも完全なオリジナル作品。近未来が舞台で、人々の生活をサポートするロボット開発するほど天才的な頭脳を持つ少年が新たな発明にことごとく失敗した後に、人造人間の“カノジョ”を作り出す……という物語のようです。

2021年にスタジオを立ち上げ、7名という少数のチームメンバーとともに新しい表現の開拓、制作ワークフローの最適化などの工夫をして作り上げた労作のようで、ほかにはないアニメの魅力にも期待ができます。なお、現時点で公開日は未定でありますが、2022年夏には「2024年夏の劇場公開を目指して制作中」と、2024年2月には「映像部分はなんとかほぼ完成というところまで持って来られました」との情報もあるため、年内の上映も十分あり得そうです。

人気コンテンツのアニメ映画も続々

さらに、人気コンテンツ&テレビアニメの映画化作品としては、『劇場版ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』(5月24日公開)、『コードギアス 奪還のロゼ』(5月より全4幕にて上映)、『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:』(タイトルは前編「Re:」、後編「Re:Re:」/前編は春、後編は夏公開)、『劇場版 モノノ怪』(夏公開)、『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉』(冬公開)、『劇場版 僕とロボコ』(冬公開)、『PUI PUI モルカー CGアニメーション映画(タイトル未定)』(2024年公開)などもあります。中でも注目は『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』(12月公開)。口コミで大ヒットとなった『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』と同じく、女性人気の高い誰もが知る作品の劇場版アニメであり、ビジュアルなどから大人の観客も意識していることが伺えるため、熱心なファンの支持を集めての大ヒットにつながりそうです。さらに、現時点では公開日が未定の作品では、『つるばみ色のなぎ子たち』『楽園追放 心のレゾナンス(2014年公開作の続編)』『カラビ・ヤゥの隙間』といったオリジナル作品も大いに盛り上がってほしいと、心から願います。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。

文:ヒナタカ

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