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植え替えはなぜ必要? 【後編】超初心者向け講座3

  • 2024.3.15
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観葉植物や草花など、植物を鉢に植えて育てる際に必須の作業「植え替え」は、なぜしなくてはいけないのでしょうか。その理由は、根の環境を改善するための手段だから。ここでは、植物をちゃんと育てたい! 枯れた原因は何? など、ガーデニングを楽しむために知っておきたい基礎知識「植え替え」の具体的な作業や用語について解説します。

根の環境を改善する解決方法「植え替え」とは

植え替え
ddisq/Shutterstock.com

前回もお話しした通り、植え替えは鉢栽培では必要不可欠な作業。その主な目的は、植え替えによって土を新しく入れ替え、あるいは鉢を大きくすることです。これによってミネラルを補給し、根が成長する場所を確保し、老廃物や有害な微生物を捨て去ります。また同時に根の健康チェックをお行い、絡み合っている根をほぐしたり、悪いところは切り捨てます。

このようにすることで、土の劣化や根の障害を取り除きます。この一連の手入れが「植え替え」なのです。植物の地上部に手入れが必要なように、普段は見えない地下の部分も手入れが必要なのです。

知っておきたい! 植え替え10の用語

ガーデニング用語

園芸の本を読むと、広い意味での植え替えを示すいくつかの用語・関係する用語が説明も無いまま使われていて、戸惑う方も多いのではないでしょうか。

ここでは代表的ないくつかの用語を示して説明しておきます。

  • 【移植】いしょく
    植物を現在植えてある場所・鉢などから掘り上げて移すことです。健全に成長するよう適切に扱うことを意味に含むので、雑に引っこ抜いて雑に根を埋めただけの場合は、移植とは呼びません。
  • 【鉢上げ】はちあげ
    タネ播き・挿し木をした苗床から、個別の植木鉢に移植することです。
  • 【鉢増し】はちまし
    植えてある現在の鉢より大きい鉢に移植することです。
  • 【定植】ていしょく
    苗床や養成用の鉢から、ずっと植えておく場所、あるいは最終的な仕上がりサイズの鉢に植えることです。
  • 【根鉢】ねばち
    根と一体化した土の塊です。鉢植えなら鉢の形のまま抜けます。
  • 【植え傷み】うえいたみ
    移植や植え替え作業時のの傷、または養生の不足でダメージを受けることです。
  • 【ルーピング】
    鉢植えの植物の根が鉢の底で円を描くように伸びていること。ほぐすと根はスプリング状になっていて機能を十分に発揮できません。
  • 【剪根】せんこん
    根の剪定です。不要な根を除去し、新しい根を発生させて活力ある状態にすること。植物の生育向上を狙い、鉢植えの場合には鉢の大きさのコントロールのために行います。
  • 【鉢底石】はちぞこいし
    水が底に溜まるのを防ぎ、水はけがよくなる…とされていますが、効果のほどは不明。小さい鉢の場合は逆効果という説もあります。筆者は効果を感じないので入れない派です。
  • 【鉢底網】はちぞこあみ
    日本製の植木鉢は水はけをよくするために底の穴が大きく、土がこぼれてしまうので、それを防ぎつつ水はけを確保するために鉢底網が使われます。腐らない素材の網であればなんでもよく、網戸用のものでも構いません。

植え替えに必要な道具

植え替えに必要な道具
alexkich/Shutterstock.com

★印は絶対に必要なもの、☆は、あれば便利だけれど必須ではないものです。

  • 【植木鉢】★
    地面に植えるなら要りませんが、鉢植えにするなら必要です。
  • 【用土】★
    地面に植える場合でも鉢植えでも、適切な用土が必要です。植物の性質や目的に応じて使い分けます。
  • 【鉢底網】☆
    鉢植えにする場合、大きめの鉢なら必要です。
  • 【鉢底石】☆
    あってもなくてもいいので、入れたい方は用意してください。
  • 【移植ゴテ】★
    作業効率がよくなります。一体成形のステンレス製が、丈夫で錆びず洗いやすいので最もよろしい。
  • 【土入れ】☆
    あってもなくても構いませんが、あまり手を汚したくない方は買ってください。移植ゴテがあれば、それで足りるので必要ありません。
  • 【棒】★
    根鉢をほぐしたり、用土を押して詰めたりと意外に重要。使わなくなった竹製の割り箸や菜箸などがよいでしょう。
  • 【ピンセット】☆
    役目は棒と同様ですから、どちらか片方あればよいです。
  • 【支柱/紐】☆
    植えた後の植物を固定するためのもの。植物に添えたり、鉢に縛り付けて根付くまで固定します。
  • 【シート】☆
    地面や机に敷いて作業するためのものです。室内で作業するなら必須。外であっても後片付けが格段に楽になります。
  • 【軍手】☆
    どうしてもひどく手が汚れますから、あると便利です。肌の弱い方は必ずお使いください。

植え替えの適期はいつ?

『植えてある植物が成長を始める直前』が植え替えの最適期です。植え替えはどうしても根が傷むので、その間にダメージを受けて植え傷みしてしまいます。しかし、植え替えをして、その後に成長が始まればすぐに回復を始めますから、植え傷みを最小限、あるいはほぼ無しにできます。

植物の成長に合わせる

植え替え
Irantzu Arbaizagoitia/Shutterstock.com

多くの植物の成長は春か秋に始まりますから、植え替えの適期は春の少し前である冬の終わり頃か早春、あるいは夏の終わり頃から秋の初めになります。

熱帯植物のように根の成長にある程度の高い温度が必要な植物は、気温が十分に上がった5月下旬〜7月に行います。もちろん温室などがあって一年中温度を高く保てるならばいつでもよく、植物の状態に合わせて行います。

季節とは関係なく植え替える場合

植え替え
Stanislav71/Shutterstock.com

季節とは関係なしに植え替える場合もあります。水を与えても萎れている、肥料を与えて2週間以上過ぎても葉の色に改善が見られない、または、新しい葉が小さくなっていく、などの症状がある場合は、根に重大な障害がある可能性が高いです。このような場合は直ちに抜いて根のチェックをおこない、障害が認められたら植え替えます。

根が枯れたり腐っている部分を切り捨て、必要であれば水洗いや消毒をして新しい清潔な用土を使って植えます。もちろん適期に行うより好結果とはなりづらいのですが、すでに悪い状態になっているのだし、根の障害を放置すればより悪い結果を招く(枯れる)ので、あえて行うわけです。

根のリフレッシュ

植え替え
Stanislav71/Shutterstock.com

根は先端のほうに水やミネラルを吸収する組織があり、その後ろは体を支える建物の基礎のような役割(支持組織)となっています。支持組織とはいっても生きていますから、年月が経てば支持組織ばかりになって、生かしておくコストが多大な負荷になります。

また鉢植えでは空間が限られているので、根がぶつかり合い、水やミネラルを奪い合う形となってしまいます。これは非常に非効率的です。植え替えでは、長すぎる根や込み合った根を切り捨てたり整理して、吸収組織の多い活力ある根をつくるのを目的とします。

長い根を切り詰める

植え替え
Robert Przybysz/Shutterstock.com

植え替えで根鉢を崩したりすると、長い根がビローンと垂れ下がるのが観察できます。あるいは底の方でルーピングした根があったりもします。このような場合は、根を元の長さの半分か1/3ほど残して切り詰め、ルーピングしている根があれば、その部分を切り捨てます。

特にそのようなことはなくても、根鉢全体に根が張って硬くなっている場合は、根鉢の底から1/4〜1/3を鋏やナイフ、包丁などで切り捨てます。同様に側面も崩してほぐしておきます。

このようにすることで古い根は整理され、再生した根が支障なく新しい土に馴染み、成長できるようになるのです。

根の扱いで気をつける点

植え替え
Evgeniy Zhukov/Shutterstock.com

注意しなければならないのは、根に触られるのを嫌がる植物があることです。そのような植物は、根詰まりになる前に鉢増し・定植して、根を切ったり傷めたりしないように注意が必要です。具体的には、鉢から抜いたらいじらず触らず、右から左に鉢増しするか移植します。それすら嫌がる植物は、最初から植えたい場所にタネを播く(直播き/じかまき)か、そこに挿し木をします。

根に触られるのを嫌がる植物の例

直根性の植物
Riccardo Arata/Shutterstock.com

なかなかその見極めは難しいのですが、ゴボウやニンジンのような真っ直ぐに伸びる根(直根/ちょっこん)がある植物、あるいはカキの木のように、もろい少数の根があるだけの植物、それとムラサキ科とマメ科の植物は、一般的に移植を嫌います。

また、老木は再生能力が衰えていることと、その大きさに見合った根が出るのに時間がかかるため、経験を積んだ専門家でも十分な準備期間(数年間)がなければ失敗してしまいます。

他にも、春咲きの植物には早春に根をいじると成長が悪くなったり、芽が出てこないことが稀にあります。春咲きの植物は、できれば秋のうちに植え付けておくのが安全だといえます。

植え替え作業が終わったら

植え替え後の水やり
Gyuszko-Photo/Shutterstock.com

最後にジョウロで静かに水を与えて土を落ち着かせたら、一連の作業は終了です。多肉植物やサボテンのような腐りやすい植物は、根が出てくる7〜10日後に水を与えます。

慣れるまでは手間取ったり、しくじったりしますが、それはどんな名人でも辿っている道ですから気にしないでください。やっているうちに数をこなして慣れていくものです。

Credit
文 / 辻 幸治 - 園芸家 -

つじ・こうじ/1976年、大阪生まれ。江戸の園芸文化から海外のワイルドフラワーまで幅広く精通する。NHK「趣味の園芸」にも講師として出演。書籍や雑誌の執筆・監修でも活躍。著書に『色別 身近な野の花山の花 ポケット図鑑―花色別777種』(栃の葉書房)など。

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