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お金のプロは新NISAで何に投資しているのか…長期保有で「値上がり益」と「高配当」を狙える2銘柄

  • 2024.3.13

新NISA口座で何に投資するか。プロが何に投資しているかを知るのも参考になる。ファイナンシャルプランナーの藤原久敏さんは「つみたて投資枠では3つのファンドを利用して積立投資を実践、成長投資枠では最近2つの銘柄を購入した」という――。

カンファレンスでスピーチを行うスピーカーと聴衆
※写真はイメージです
“タイパ”を重視する若者がセミナーで質問する内容とは

「先生は、どんな銘柄を買っているのですか?」

ここ最近、相談や講演後の質問で、私のプライベートでの運用について、ズバリと聞かれることが増えてきました。

そして、そんな質問は、圧倒的に若い人からです。

とくに今年に入ってからは、新NISAでの運用について聞かれることがほとんどです。

自分でアレコレ考えるよりも、プロが実際に投資している銘柄を聞いた方が早いという、まさにこれは、若者にはやりの「タイパ(タイムパフォーマンス)」ですね。

そんなタイパの考えには賛否両論あるところですが、他人の運用法(購入銘柄)を参考にするのは一理あるところでしょう。

そこで今回は、私が新NISAで購入・保有している銘柄について書いてみたいと思います。

新NISAでの運用の王道は、一般には、「つみたて投資枠の対象商品を、積み立てる」ことです。

実際、私自身も、その王道をベースに運用をしています。

もっとも、つみたて投資枠の対象商品といっても約280本ものファンドがあるわけですが、現在、私が積み立てているのは、以下の3本です。

新NISAのつみたて投資枠から選んだ3本のファンド

1本目は、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」。

このファンド1本で、世界の先進国23カ国、新興国24カ国の株式市場に、超低コストで分散投資ができます。いわば、全世界の株式市場にまるごと投資できるファンドでして、「オルカン」との愛称で、とにかく超人気のファンドです。

現在、堅調な株式市場の下、過去5年間の年率平均リターンは17%超と、抜群の運用成績を誇っています。

とはいえ、将来の世界株式市場の動向は誰にも分からず、今後、かつてのコロナショックやリーマンショックのような大暴落もあるでしょう。

ただ、長期的視点で見れば、上昇・下落を繰り返しながらも、株式のリターンは(他の資産カテゴリーよりも)高いことから、長期投資において株式カテゴリーは必須だと考え、選択しました。

なお、全世界株式に超低コストで投資するタイプのファンドは他にもありますが、中でも、この「オルカン」の純資産総額(2兆5000億円超)は群を抜いて大きく、安定感は抜群です。それゆえ、新NISAでの候補商品として、まず名前が挙げられるファンドですし、「新NISAではこれ1本でOK」と勧める専門家もいるくらいなのです。

ちなみに、「オルカン」は全世界株式と言いながら、各国への投資比率にはかなり偏りがあって、その投資対象の約60%はアメリカ株式です。

実は、アメリカ株式全体に投資する「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」(※)も積み立てるべきかと迷っていましたが、「オルカン」でアメリカ株式には十分投資できることから、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は選択しておりません。

※純資産総額3兆7000億円を誇る超人気ファンド

新興国に投資もできるバランスファンド

2本目は、「eMAXIS Slimバランス型(8資産均等型)」。

国内株式・国内債券・国内不動産・外国株式(先進国・新興国)・外国債券(先進国・新興国)・外国不動産(先進国)の8つもの資産カテゴリーに分散投資することで、リスクを抑えて、手堅い運用ができるファンドです。

数あるバランスファンドの中でも、その資産カテゴリーの多さと、各資産に均等投資する(8分の1ずつ)という分かりやすさから、このファンドを選択しました。また、コストの低さ、純資産総額の大きさも決め手となりました。

ちなみに、1本目の「オルカン」の新興国投資比率は10%程度ですが、このファンドでは25%。

新興国にも、もう少し投資したいなとの思いからも、このファンドを選択しました。

木製ブロックで「新NISA」の文字
※写真はイメージです
GPIFの資産配分に近いバランスファンド

3本目は、「〈購入・換金手数料なし〉ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)」。

国内株式・国内債券・外国株式(先進国)・外国債券(先進国)といった4つの主要資産カテゴリーに、均等に投資するファンドです。

これも、2本目と同じく、複数の資産カテゴリーに分散投資をするバランスファンドですが、とにかくシンプルで分かりやすいのです。

そして、私が引かれたのが、GPIF(※)の運用資産バランスに近いこと。

長期投資においては、われらが公的年金の運用に乗っかるのも悪くはないなとの思いがあり、このファンドを選択しました。

※年金積立金管理運用独立行政法人。長期分散投資を基本として、公的年金制度における年金積立金の運用を行っている。

なお、これら3本のファンドへの積立額は、それぞれ毎月1万円(合計3万円)です。

つみたて投資枠の上限は年間120万円ですから、非課税枠をフルに活用すべく、無理をしてでも毎月10万円の積み立ても考えましたが、さすがにそれはキツイと判断し、無理なく投資できる金額で設定しました。

また、今は堅調な相場環境もあって、いずれのファンドも高値圏で推移しています。

そのような視点からも(高値つかみの危険性からも)、まずは様子を見ていくという意味でも、この積立額に設定しました。

「メイン」はつみたて投資枠、成長投資枠は「楽しむ投資」

新NISAでは、この「つみたて投資枠でのファンド積み立て」をメインとしたうえで、資金的に余裕があれば(さらに言えば、知識・精神的にも余裕があれば)、サブとして、「成長投資枠での個別銘柄のスポット買い」が推奨されることが多いです。

実際、私自身も、そのようなスタンスで投資をしております。

ただ、投資好きの私としては、「成長投資枠での個別銘柄のスポット買い」はサブではなく、「つみたて投資枠でのファンド積み立て」と同等、いや、むしろこちらをメインとも考えています。

なぜなら、ファンド積み立ては、圧倒的につまらないから。

ファンド積み立ては手堅い投資法で、安心感・安定感はあるのですが、ファンドは分散投資であるがゆえに、その投資対象が見えにくいのです。

その点、個別銘柄への投資は、投資している対象(企業)がハッキリしているので、一点集中というリスクはありますが、その満足感・充実感はファンドとは比較になりません。

もっとも、投資にそんな満足感・充実感を求めないのであれば、あえてリスクの大きい、また、知識や経験が必要とされる個別銘柄ではなく、ファンド積み立てで十分でしょう。

しかし、私は「楽しんでこそ投資」と思っております。

成長投資枠で買った「マンダム」と「カシオ計算機」

さて、そんな個別銘柄の選択において、私が一番に重視しているのが、「身近で、よく知っている企業」、そして「応援したい企業であること」です。

これこそが、投資の原点と思っています。

投資の世界の格言に、「銘柄にほれるな」がありますが、ほれることこそ、投資の醍醐味だいごみだと、私は思っています。

そんな思いで、先日購入したのが、「マンダム」と「カシオ計算機」です。

マンダムは、「ギャツビー」「ルシード」などでおなじみの男性化粧品首位級の企業。

汗っかきの私は、昔からマンダムの汗拭きシートを愛用しており、また、50歳手前となり、最近は美容も意識するようになったこともあり、大いに関心を持っている企業です。

カシオ計算機は、腕時計、電子辞書で高いシェアを誇る企業。

私は腕時計好きでして、カシオのG-SHOCKは、日本が誇る商品だと思っていますし、また、オシアナスの美しさやプロトレックの機能性など、その商品力にほれこんでおります。

企業の将来性を見極めるなら「海外展開」

配当金は、必ず確認します。

値上がり益にも期待はするものの、新NISAでは長期保有スタンス(基本的には売却はしない)なので、インカムゲインである配当金を、とくに重視しています。

具体的には、配当利回りが3%以上を目安としています。

マンダムの配当金利回りは3%強と、合格点。2021年には大きく減配するも、その後は増配傾向にあり、これは大丈夫だと判断。

カシオの配当利回りは3%後半であり、ここ数年は1株あたり45円で安定推移しております。

いずれの業績も、胸を張れるほど「良好」とは言い難いですが、さほど悲観するほどではなく、将来の配当金の支払いには問題ないと思っています。

そして、企業の将来性も、長期保有スタンスとしては要チェックです。

何をもって将来性を判断するかは難しいところですが、私の場合は、その海外展開を見ています。やはり、人口減の国内マーケットのみだと不安ですから。

マンダムの海外売上比率は50%弱で、とくにインドネシアなど(経済成長著しい)東南アジアでの強みに大いに期待を持っています。

カシオの海外売上比率は80%弱と、こちらも期待十分。

個人的には、Gショックの世界的な人気・知名度は将来的にも不動のものだと思っていますし、円安・インバウンド需要も、息の長い、大きな追い風と思っています。

なお、いずれの株価も、ここ10年間の底値圏で推移しており、これは買い時だと判断して、購入しました。

機関投資家にはまねできない個人投資家の強み

ちなみに、これらの選択基準(「応援したい」「配当金」「将来性(海外展開)」)からも、セイコーグループ(腕時計で国内首位級)も狙ってはいるのですが、現在のところ、その配当利回りは3%に満たない状況です。

すぐにでも欲しいのが本音ではありますが、そこは十分に納得できる価格での購入を心がけています。

なので、株価がもう少し下がって、配当利回りが3%超になったところでの購入を考えています。

個人投資家の強みは、(投資をすることが義務付けられている機関投資家と違って)必ずしも、手持ちの資金を投資に回す必要がないことです。ですので、ほれた銘柄にはすぐにでも投資したいところをグッと我慢して、妥協せずに、その強みを存分に生かしております。

お金のプロが肝に銘じている投資の心得

さて、今回紹介した具体的なファンドや個別銘柄は、それが絶対的な正解、すなわち「万人にお勧め」というわけではなく、あくまでも「実際に、私が新NISAで購入している」というものです。

しかし、ファンド積み立てでも、個別銘柄のスポット買いでも、「無理をしてまで投資はしない(妥協して投資はしない)」というスタンスは、万人に意識いただきたいところでもあります。

新NISAでは、その非課税枠の大きさ(魅力)ゆえに、「使わないと損」とばかりに、無理をして、また、妥協して、投資をしてしまうという危険があります。そしてそれは、抗いがたい心理的な死角でもあり、私自身、新NISA投資において、一番気を付けている点でもあります。

藤原 久敏(ふじわら・ひさとし)
ファイナンシャルプランナー
1977年大阪府大阪狭山市生まれ。大阪市立大学文学部哲学科卒業後、尼崎信用金庫を経て、2001年に藤原ファイナンシャルプランナー事務所開設。現在は、主に資産運用に関する講演・執筆等を精力的にこなす。また、大阪経済法科大学経済学部非常勤講師としてファイナンシャルプランニング講座を担当する。著書に『株、投資信託、FX、仮想通貨… ファイナンシャルプランナーが20年投資を続けてみたらこうなった』(彩図社)など。

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