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セクハラ、マルハラ、不機嫌ハラだけじゃない…私は敬語が過剰な「メールの慇懃無礼ハラが嫌」

  • 2024.3.13
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なんでも「ハラスメント」時代に疲れを感じる人も多いだろう。周囲からのハラスメントハラスメント(ハラハラ)のような指摘に恐怖を感じる人もいる。
なんでも「ハラスメント」時代に疲れを感じる人も多いだろう。周囲からのハラスメントハラスメント(ハラハラ)のような指摘に恐怖を感じる人もいる。

世代間対立を煽りかねない「ハラスメント」が、妙な流行を見せている。たとえば「マルハラ」。LINEなどのメッセージの文章の最後についつい句点「。」をつけてしまう上の世代と、それを「圧」「責められている?」と感じてしまう若い世代。

日頃からコミュニケーションをとっていれば、それも防げるのかもしれないが、SNS等の文字コミュニケーションが増えた今、職場では雑談から相手の世代の気持ちを知る機会が減っているのかもしれない。

岐阜県岐南町の元町長による「99のセクハラ」に至っては、本人の認識の低さもさることながら、「よほどみんなに嫌われていたのでは」という疑念さえもってしまう。

「セクハラ」と指摘される恐怖

「うちもご多分にもれずセクハラにはうるさい。以前だったら『おはよう。あれ、髪切った?』なんて軽口も言えたけど、今は言えない。おはよう、だけで止まってしまう。それが本当にいいことなのかはわかりませんけどね」

ため息をつきながらそう言うショウイチロウさん(50歳)。男性から女性へのセクハラには特に気を遣うから、周りの同僚たちも女性たちに話しかけることがほとんどない。

「それでも雑談をすることはあります。ただ、先日も雑談で悪ノリした僕と同世代の同僚が、きれいにネイルした指を自慢していた若い女性社員に『きれいだね。いや、ネイルだけじゃなくて指そのものがきれいだよ』と言ったんです。彼女、本当に手がきれいだし、それが自慢のはず。

なのに周りの女性が『それ、セクハラ』と決めつけた。きれいなものをきれいだと言ったらセクハラなのか、とその同僚が思わずつぶやいてしまって場がシラーッとなりました。言われたネイルの女性はうれしそうだったんですけどね」

「セクハラ」の決めつけこそハラスメントでは

もう、プライベートなことはいっさい言わないほうがいいと、同僚と話したという。その同僚は「セクハラ、と決めつけられたこと、そのビシッとした言い方が怖かった。あれこそハラスメントじゃないのか」と落ち込んでいたそうだ。

こうなるとハラスメント合戦にしかならず、その場の空気は冷えていくだけ。ああ、昭和の緩さが懐かしいと中年世代が思うのも無理はないのかもしれない。

お互いに「これって責められてる?」「これってハラスメント?」と疑心暗鬼になると、ますます関係はおかしくなる。その場で説明しあえればいいのだが、そこまでの信頼関係はできていないのかもしれない。

「不機嫌ハラ」がもっともイヤ!

「セクハラもムカつくけど、本気で嫌な人でない限り、私は冗談で混ぜ返すことで場を和ませるようにしています。

以前から職場には嫌味を言う人もいれば意地悪な人もいる。その延長線上だと思っているから。でも私がもっと嫌なのは不機嫌ハラと慇懃無礼ハラですね」

マリコさん(38歳)は、セクハラなら「セクハラですよ、それ」と言えてしまう今の時代はいいと話す。それより怖いのは、何も言えない状況を作る人。

その代表が、なぜか日によって機嫌が変わる「不機嫌ハラスメント」と、やたら慇懃無礼なメールを送ってくるタイプ。

「部下が上司の機嫌をうかがったり、逆に上司が部下の機嫌がいいかどうか考えなくてはいけないなんて、仕事をする上では言語道断。人に接するときは、いつでも自分なりの上機嫌を作っておけよと思います。

先輩女性にもいるんですよ。機嫌がいいときは後輩の仕事まで手伝おうとするくせに、機嫌が悪いと誰に何を言われても返事もしない。

1度、私が『機嫌が悪いときは、今日は機嫌が悪いですと言ってくださいよ』と冗談ぽく言ったら激怒されました。私は機嫌の善し悪しで動く人間じゃないとキレられて。いや、いつも周りが機嫌をうかがっているの知らないんですかと言いたくなりました」

メールでの「慇懃無礼ハラ」も腹が立つ

取引先のある女性は、メールでの慇懃無礼さが目立つ。丁寧なのはいいことなのだが、あまりにも敬語が過剰なので、ときどきマリコさんは「バカにされているのかもしれない」と思うことさえあるという。

「メールであっても文章が長すぎる。敬語を省いて整理すれば、課題はひとつかふたつなのに。仕事のメールに必要以上の尊敬語や謙譲語はいりませんよね。

『○○さまにおかれましては、いつも迅速なご対応をいただき』と書いておきながら、結局は、『納期が迫っているから早くやれよ』と言いたいらしい(笑)。彼女のメールは、必ず同僚に見せて、これは何を言いたいのだろうと協議することにしています」

会うとそれほど粘着タイプではないのだが、メールだと「嫌な思いをさせないため」に過剰な敬語を使った上で、自分の要求や頼みごとをふわりと入れてくるのだろう。仕事においては混乱をきたしかねない。

「昔、先輩に『自分の常識は他人の非常識だと思え』と教わりました。みんながそう思っていれば、多少の価値観の違いや感じ方の相違は許せるんじゃないかとも思うんですけどね。ただ、そのためにはやはり日頃から、どういう人かをわかっている必要もある」

「雑談時間」減少の弊害か?

さらにこう続けた。

「圧倒的に『なんてことのない雑談時間』が職場から減っているのではないかと思います。話し合いが大事というけれど、小さなハラスメントでいちいち会議みたいに話し合っていたら仕事時間がなくなってしまう。ふだんからどういう人かがわかっていれば、たとえハラスメントがあってもちょっとした指摘でお互いにわかりあえるような気がするんです」

「昭和のゆるさ」は当然行きすぎだが、「令和のコンプラ」もまた息苦しいと誰もが感じているのかもしれない。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。

文:亀山 早苗(フリーライター)

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