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【会食恐怖症とは】給食・しつけが“絶対悪”ではない!原因や発症メカニズムを心理カウンセラーが解説

  • 2024.3.9
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「会食恐怖症」の正しい理解を

「会食恐怖症」の正しい理解を
「会食恐怖症」の正しい理解を

2024年3月6日放送のフジテレビの情報番組「めざまし8」内で取り上げられた「会食恐怖症」。X(旧ツイッター)でトレンド入りするなど、SNSでも注目を集めています。

心理カウンセラーで一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会の代表を務める佐藤城人さんは、「このような場合、極端なコメントが出がちです」と警鐘を鳴らします。

「例えば、『学校給食が悪い』『完食を求める指導の仕方が悪い』『親の行き過ぎたしつけのせいだ』などです。確かに要因の1つです。しかし、これでは何もできなくなってしまいます。

『残さず食べなさい』と指導することが悪いのでしょうか?『お箸を正しく持ちなさい』と指導することが悪いことなのでしょうか?もちろん行き過ぎた指導は問題です。ただ、これらの指導を受けても発症しない人も存在します。ここを見落としてはいけないと思います」(佐藤さん)

会食恐怖症の克服には、“当事者本人と周囲の正しい理解”のどちらもが必要だと話す佐藤さん。実は本人も、「アルコール依存症」を克服した経験があるといいます。今回は、会食恐怖症を発症してしまう背景、メカニズム、を解説していただきました。

会食恐怖症の対処は「理解すること」がスタート

食事の際、周囲の視線が気になって仕方がない人はいませんか? そして、その悩みや不安を一人で抱えている人はいませんか? もしかすると、「会食恐怖症」というメンタルの症状かもしれません。

うつや統合失調症と比べると、本人の偏食や気持ちの問題、または幼少期の家庭の躾の問題と捉えられがちです。この結果、「自分は理解されない」と自分を責めたり、「病気と認識しにくい」ため、治療につながりにくくなったりします。周囲の友人や家族も、どのように接したらいいのか分からないという声も多いです。

しかし、ご安心ください。 これは、対処できる精神の病いであり、あなたの人格や性格に問題があるわけではありません。また、親の躾が悪かったと親御さんが自分を責める必要もありません。 まず、理解すること、ここからスタートしてみませんか?

会食恐怖症とは

会食恐怖症の人は、誰かとご飯を食べること(=会食行為)に対して、健全ではない強い不安を感じます。次第にその不安を避けようするとすることで、交友関係・恋愛・仕事などで何らかの支障が出てしまいます。会食恐怖症は「社交不安症」という精神障害のうちの一つです(一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会 HP より)なお、社交不安症の患者数は、全国に約200万人。また、日本人の2パーセントが社交不安症と言われます(NHK 福祉情報サイト「ハートネット」より) ※社交不安症は以前は「対人恐怖症」と呼ばれていました。

会食恐怖症の症状について説明します。具体的には、誰かと一緒に食事をする際、またはその場面を想像する際に、顔面蒼白・めまい・冷や汗・震え・動悸・発汗・体の緊張・強い吐き気や不快感などを伴います。また、上手く飲み込めずに嚥下障害を起こすこともあります。

さらに、飲み会での嘔吐がキッカケで嘔吐恐怖症になり、人との食事を回避するようになるなど、嘔吐恐怖症を併発するケースも珍しくありません。また、人との接触を回避する結果、うつ病やアルコール依存症などの各種依存症を併発することもあります。このように放置してしまうと、他の病いを併発するなど悪化します。当然QOL(人生全体の質)も低下します。※嘔吐の場面とは、自分が吐くだけではなく、他者の嘔吐を見たことが原因で発症することもあります。

メンタルの病は何事も「早期発見、早期治療」が原則ですので、自身の状態に何か違うと感じた場合はすぐに周囲や専門家に相談することが大事です。

会食恐怖症のセルフチェック

次の11項目は、会食恐怖症の症状の具体的な例です。そのため、幾つ当てはまるから会食恐怖症と特定、診断できるものではありません。そうではなく該当する項目が「日常生活に支障をきたすレベルかどうか」この観点から捉えてください。

《会食恐怖症セルフチェック》1.誰かと一緒に食事をするのが怖い。吐き気やめまいがして具合が悪くなる2.たとえ一人の外食であっても、周囲の視線が怖い3.食事に関し、誰かから指摘されるのではという思いが強い4.誰かと一緒に食事をすることを考えると、不安で喉がつかえたり動悸がする5.残してはいけないという思いが強い6.少しでも食べ残すと、同席している人に申し訳ないと思う7.自分の咀嚼音や嚥下音が、周囲を不快にさせていると思う8.食事の際、何か間違えてはいけないという思いが強い9.食事を美味しく食べられるかどうか不安だ10.食事に関する悩みを抱えるのは、恥ずかしいことだ11.たとえリモートであっても、視線を感じるのは苦手

この11番目の項目はコロナ以降、追加したものです。画面越しの飲み会(zoom飲み会)を開くことが増えてきましたが、遠隔の飲食であっても苦手に感じる人はいます。

病名の診断はあくまでも医師の範ちゅうです。軽々に自己診断をするのではなく、気になる項目がある場合、専門家に相談することをおすすめいたします。

恐怖と不安の違いについて

恐怖と不安の違いについて
恐怖と不安の違いについて

「恐怖」とは、特定の場所、物、行為に対する感情のことです。「不安」とは、漠然とした感情のことです。

例えば、いじめの場面での「(いじめる)あの子が怖いんだよ。だって、何をするかわからないんだもん」という発言。恐怖と不安の違いが明確に分かります。

さらに不安を分けてみると、大きく次の4つに分類できます。(1)正体が不明のものに対する漠然とした不安(2)出口が見えず、不明瞭な将来に対する不安(3)転勤・引越しなどの身の回りの変化への不安(4)自分にも同じことが起きるのではという不安※この分類はあくまでも、心理カウンセラーである私が、日々接するクライエントさんとのやり取りの中で分けたものです。分類の仕方については他にもあります。

また近年、不安を感じる人は増えたと言われます。これは先の見えない社会として、(2)のケースではないでしょうか。不安も恐怖も、一般的にはネガティブな感情とされ、敬遠されがちです。しかし、本来どちらも「命を守るための感情」です。防衛のための必要なものです。恥ずかしいことではありません。

不安や恐怖に対する基本的な考え方です。・どちらも必要な感情で誰もが持つものです。従って、フタをするものではありません。・無理に抑えつけると、体にも反応が出ます。従って、体に異変(過度なめまい、吐き気、動悸など)が生じた際は、心が訴えている何かしらのサインと受け止めてください。・日常生活で何らかの支障が生じる際、その原因追及をしがちです。しかし、本来足を引っ張っているのは、不安や恐怖などのマイナスの感情です。・不安や恐怖は一般的にマイナスの感情とされます。しかし、その感情があるからこそ、身を守ることができます。本来は必要な感情です。・必要な感情である以上、ゼロにはなりません。また、敵視したり排除したりするものではありません。

これらから見出せることは、不安や恐怖は、戦う相手ではないということです。自分が生み出した感情と戦った結果、ますます傷つくのは誰でしょう?症状を悪化させてしまうのではないでしょうか。本来は、「受け入れるもの」です。そして、受け入れることができたら、何から守ろうとしているのか、落ち着いて考えることです。

脳内?心的?周囲?発症した原因を紐解く

主な発症のメカニズム
主な発症のメカニズム

【発症の脳内のメカニズム】

会食恐怖症の他、社交不安症には次のものもあります。・視線恐怖症 : 人からの視線が怖い・書痙 : 人前で文字を書くとき、手の震えが収まらない・赤面恐怖症 : 人前で顔が赤くなるのが怖い・スピーチ恐怖症 : 人前で喋るのが怖いなどです。

これらに共通するのは、・周囲の視線を過度に感じ、その視線を回避しようとすること・結果的に心や体に異変が生じることです。

そして、内面では・不安や恐怖心を必要以上に強く感じること・周囲に対して、申し訳ないという強い思い・迷惑をかけてはいけないという強い思い

これらが心的負担となっています。不安や恐怖を感じるのは、自然なことです。ただ、必要以上に感じてしまうことに問題があります。感情を生み出すのは脳の働きです。ということは、脳の誤作動とも考えることができます。

では、脳の内部で何が起きているのでしょう?不安や恐怖を察知するのは、脳の扁桃体の部分です。社交不安症を抱える場合、人の顔を見たときに、扁桃体が通常よりも過剰に反応します。表情に敏感に反応して、強い不安が起こるのです。扁桃体のこのような過剰な反応を、本来は前頭葉が抑える働きをします。前頭葉は論理的な思考を司るからです。

この前頭葉の機能がうまく働かず、扁桃体の反応を抑えられなくなってしまうこと。これが原因と考えられています。脳科学的な見地から捉えるのならば、この扁桃体の暴走を抑えること。前頭葉の働きを鍛えること、これが対策となります。

【発症の心的メカニズム】

心の観点から考えてみようと思います。会食恐怖症に悩む方の中には、「あれがトラウマ」と仰る方も多いです。あれとは、次の発言です。

・たくさん食べなきゃダメだ・残してはダメだ・ちゃんと食べなきゃダメだ・食わず嫌いはダメだ・正しく食べない子はダメな子

どの言葉も、幼少期に親や学校の先生から言われたものです。家庭であれば他の兄弟と比較されたり、学校であれば友だちから笑われたりします。恥ずかしい思いや緊張も強いられることでしょう。ストレスフルな状況です。そして、どれも食事の場面です。これがトラウマとなり、思春期や成人になった際、発症します。

会食の際に文末をあえてわかりやすく「ダメ」と書きました。ここは「してはいけない」と言い換えることができます。先に挙げた幼少期に言われた発言には幾つか共通点を見ることができます。

・ダメとダメ出しされている点・食べ方のルールを指摘されている点この他、「たくさん」や「ちゃんと」などのざっくりとした言い方をすると、小さい子どもの場合、抽象概念が理解できず、かえって混乱を招いてしまいます。※一般的には10歳を過ぎるころから抽象概念の理解が進みます。

ダメ出しばかりされた子どもが、自己肯定感が高まるでしょうか?ルールという正しさばかり教わった子どもが、おいしさを実感できるでしょうか?心の観点から捉える場合、幼少期の親や先生との関わりから、自己肯定感が低くなってしまったこと。正しさばかりで、おいしさという「心地よい感覚」が後回しになってしまったこと。この2点が要因と言えます。このように考えると、自己肯定感を高めること、心地よい感覚を取り戻すこと、これが対策となります。

【親や先生における発症のメカニズム】

子どもの躾の一環として食べ方の指導をすることは、親や学校であれば、自然なことです。会食恐怖症を克服するために、「残してもいい」という指導も始まっています。ただ、この対策を取ったとしても、不安が払拭できない子どももいます。

この差はどこにあるのでしょう?

やはり一番大きな要因は、「周囲の視線を過度に気にすること」です。これが解消しないことには、残してもいいと言われても今度は「何で残したのか、聞かれたら嫌だな」となってしまいます。周囲の視線を気にする人の多くは「相手の顔色を伺う」と言います。しかし、ここまで見てきたように、厳密に考えるのならば、「自分がどう思われるのか、どう見られているのか?」です。この現象が起きる要因として、「親も同じタイプだから」これは指摘できます。そして、周囲の視線を過度に気にする場合、結果的に「基本的な愛情不足」に陥ります。

次の言葉で考えてみましょう。「あなたのためを思って言っているの」と親が子どもに言いました。この発言、実際にはどちらなのでしょう?

(1)子どものことを、ちゃんと見た上での発言(2)自分がダメな親と思われたくないゆえの発言

(2)の場合、周囲に気を使う八方美人タイプになります。しかし、子どもを見ているわけではありません。もちろん、親である本人は自覚していない場合がほとんどです。そして、周囲の視線を過度に気にする親から育った子どもも、同じように周囲の視線を気にするようになります。大事な点は、「自分のことを親は見てはいないんだ」となることです。愛情いっぱいに育ったと言えるでしょうか?

会食恐怖症を含め、社交不安症に共通することは、親からの得られなかった愛情不足と周囲の視線を過度に感じること(=親から認めて欲しい心理の裏返し)、この2点です。

次の記事では「回復へのヒント」を解説してきます。

(佐藤城人(さとう・しろと))

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