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【漢字】「後朝=ごちょう」じゃない!?実は読めそうで読めない漢字3選

  • 2024.3.8

先週末に卒業式が挙行された学校の多かったと思います。これから、高校に続いて中学校・小学校、大学・短大など……と3月は多くの学校で卒業式が続きますが、学校だけでなく社会全般においても、人事異動や転勤退職などによる「別れ」が続きます。
そこで今回のCLASSY.ONLINEの漢字連載では、そんな「別れ」に関係する難読漢字を集めてみました。

1.「餞の言葉」

最初は「餞の言葉」です。「餞」は常用漢字外ですが、何と読むでしょうか? 「ぜにのことば」ではありませんよ。

正解は「はなむけのことば」でした。「餞(はなむけ)」とは、「旅立ちや門出を祝って金品や挨拶の言葉などを贈ること」、「卒業生に餞(はなむけ)の言葉を贈る」などと使います。
高校時代の古典の授業で、紀貫之(きのつらゆき)の『土佐日記』の冒頭文を学習した記憶はありませんか? 「男もすなる日記というものを……」で始まるあれです。この段落の一節に、「馬のはなむけす」が出てきます。旅立つ人の乗る「馬の鼻」を目的地に向けて、道中の安全を祈った風習ですが、これが「はなむけ」の由来です。漢字「餞」は、熟語なら「餞別」で使いますね。現在は「金品」のイメージが強い言葉ですが、決してそれだけではなかったのです。
思い出したように、「古典の授業不要論」が巷(ちまた)では話題となりますが、「言葉の意味や歴史を知る面白さ」はたしかに存在するのだと思います。「授業」や「受験」の枠組みに入れることで、それを学ぶ「きっかけ」を平等に提供することになるのではないでしょうか。

2.「袂を分かつ」

次は「袂を分かつ」です。「袂」も常用漢字外ですが、単独で使われるほか、この慣用句で使うのが一般的です。何て読むでしょうか。「けつをわかつ」ではありません。

正解は「たもとをわかつ」でした。「袂(たもと)」は「和服の袖付けから下の、袋状になった部分」のことですが、「分ける」とほぼ同じ意味を持つ「分かつ」と結合して「袂を分かつ」の慣用句となり、「仲間と関係を絶つ」の意味で使います。「袂」が付くほど親しく付き合っていた人が一度離れてしまうと、元に戻るのは難しいものですよね。

3.「後朝の別れ」

最後は「後朝の別れ」です。今度は、「男女間」の別れです。「後朝」は「ごちょう」と音読みもできますが、ここは訓読みで読んでください。さて、何と読むでしょうか?

正解は「きぬぎぬのわかれ」でした。「後朝」とは、本来「翌朝」のことですが、特に、「衣を重ねて共寝した男女が、翌朝、それぞれの着物を着て別れること」を意味します。ですから、「後朝(きぬぎぬ)」を「衣衣」と書くこともあります。平安時代の恋愛の多くは、男性が女性の家を訪問して一夜をともに過ごし、朝になって男性は自分の家に帰る形態で成立していたということは、皆さんおわかりでしょう。今年の大河ドラマ『光る君へ』の世界です。
なお、男性は自分の家の帰っても、すぐにやらなければならないことがあります。それは、女性に手紙を贈るということです。これを「後朝の文(きぬぎぬのふみ)」と言います。平安時代の恋愛もなかなか大変であったようです。

では、今回はこのへんで。

《参考文献》「広辞苑 第六版」(岩波書店)/「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)/「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)/「新字源」(角川書店)/「難読漢字辞典」(三省堂)/「古語林」(大修館書店)

文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)

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