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アカデミー賞最有力との呼び声も!映画『落下の解剖学』監督ジュスティーヌ・トリエ インタビュー

  • 2024.3.5

きたる3月10日(現地時間)、 オスカーはいくつ穫れる!?

現在公開中の『落下の解剖学』は、フランスで制作された法廷サスペンス。だけど、ゴールデングローブ賞をはじめ、米国アカデミー賞では主要賞にも候補入りした話題作です。そもそもの始まりは、昨年のカンヌ国際映画祭でのパルムドール受賞。そこから各国の映画祭で大絶賛されて、本丸であるアカデミー賞でも作品賞を含む5部門ノミネートという快挙に。その行方はまもなく……ですが、話題の中心にいるジュスティーヌ・トリエ監督に話を聞きました。
 
「この物語は、ある夫婦の関係が崩壊していく様を表現したいと思ったのが始まり。夫婦の身体的、精神的転落を緻密に描くことによって、2人の愛の衰えが浮き彫りになっていくという発想から出発しました。彼らのひとり息子は、裁判で家族の過去が徹底的に探られる中で、両親の関係が波乱に満ちていたことを知ります。最初は母親を全面的に信じていた彼も、裁判が進むにつれて疑念を抱くようになり、それをきっかけに彼の人生は一転。物語は、この変化を追っていきます」
 
その秘められた夫婦の関係は、法廷で明らかになっていきますが、それがとてつもなくスリリング。ただの落下事故か、殺人か。それをめぐり、検察と弁護側の激しいぶつかり合いが、フランス語と英語のごっちゃで描かれます。
 
「私とアルチュール・アラリで共同脚本を務めましたが、フランスでの法廷の現状については専門家に相談しました。意外にも、フランスの裁判はあまり秩序立っておらず、米国で見られるような組織的なアプローチとはかなり異なっています。でもだからこそ、見せ場重視のアメリカの法廷ドラマとは違うアプローチで、フランス特有の映画にすることができたんです。主人公のサンドラは、フランス語、英語、それに母国語のドイツ語と複数の言語を使う、フランスにおいては“外国人”。夫と息子が話すフランス語と英語を操らなければならないし、裁判もフランス語です。それだけでなくいくつもの顔がある複雑なキャラクターで、それが裁判を通して浮き彫りになっていきます。話す言語が違う夫婦は、第3の言語が中間地点になるという構成が、この物語において非常に重要なポイントになるんですよ」
 
多言語、オリジナル脚本、それに女性監督(今や死語ですが)。アカデミー賞受賞のトレンドとなる要素は多分に含まれた本作。このスリルは唯一無二なので、ぜひ授賞結果が出る前にスクリーンで!

『落下の解剖学』
story ベストセラー作家のサンドラ(S・ヒュラー)は夫とちょっとした不和を抱えていた。ある日、彼女が昼寝をしている間に夫が転落死。現場に居合わせたのは、視覚障がいを持つ息子だけ。自殺か事故と思われたが、遺体の傷から他殺の可能性が急浮上し、サンドラが第一容疑者となる。
監督:ジュスティーヌ・トリエ/出演:ザンドラ・ヒュラー、スワン・アルロー、ミロ・マシャド・グラネール ほか/配給:ギャガ/公開:現在、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー中
© 2023 L.F.P. – Les Films Pelléas / Les Films de Pierre / France 2 Cinéma / Auvergne‐Rhône‐Alpes Cinéma

Justine Triet 1978年7月17日、フランス・フェカン生まれ。パリの国立高等美術学校を卒業。『ソルフェリーノの戦い』(2013年)で長編監督デビュー。長編3作目の『愛欲のセラピー』(2019年)でカンヌ国際映画祭コンペティション部門出品となり、本作品で見事カンヌ国際映画祭最高賞のパルムドールを受賞した。

text:MASAMICHI YOSHIHIRO / photo:YANN RABANIER
otona MUSE 2024年3月号より

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