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「俺が出るまで待っておけよ」…法廷での“脅迫まがい”発言は罪に問われる?弁護士が解説

  • 2024.3.2
裁判官への「脅迫」に該当する?(画像はイメージ)
裁判官への「脅迫」に該当する?(画像はイメージ)

神奈川県大井町の東名高速道路で「あおり運転」を繰り返して事故を起こし、家族4人を死傷させたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などの罪に問われていた男の差し戻し控訴審判決で、東京高裁が2月26日、懲役18年とした一審判決を支持し、弁護側の控訴を棄却したことが報道されました。

この法廷においては退廷時、被告が裁判官に対して「俺が出るまで待っておけよ」と発言したことも報道され、SNS上では「反省がない」「裁判官まであおるなんて」「ひどすぎる」といった非難の声が多数上がっていますが、中には「これ脅迫じゃないの?」「この発言も罪に問えるのでは」といった疑問の声もあります。なお、報道によると同被告は判決を不服とし、最高裁に即日上告したということです。

法廷での、被告から裁判官への“脅迫まがいの発言”が罪に問われる可能性はあるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

「恐怖を覚える程度の害悪」を伝える必要あり

Q.法廷において、被告が裁判官に対し、脅迫まがいの発言をした場合、その発言が罪に問われる可能性はあるのでしょうか。

佐藤さん「法廷における発言であったとしても、要件を満たせば脅迫罪に問われる可能性はあります。

脅迫罪は、本人やその親族の『生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した』場合に成立します(刑法222条)。一般の人が恐怖を覚える程度の害悪を伝えることが必要です。

例えば、有罪判決を受けた粗暴な性格の被告が、納得のいかない判決を言い渡された後、裁判官に対し、『俺が刑務所から出てくるのを待っていろよ。殺してやるからな』や『おまえの家族まで皆殺しにしてやる』といった発言をしたとすると、通常、恐怖を覚える程度の生命への害悪の告知があるとして、脅迫罪に問われる可能性が高いでしょう」

Q.こうした脅迫まがいの発言による、刑期の見直し(長くなるなど)の可能性はあるのですか。

佐藤さん「判決が出た後、裁判官に対し脅迫まがいの発言があったとしても、それを理由に改めて審理を行い、刑期を見直すことはありません。ただし、審理されてきた事件と別に脅迫罪が成立するとして、罪に問われる可能性はあります」

Q.今回の「俺が出るまで待っておけよ」という発言は、脅迫に該当すると考えられますか。

佐藤さん「『俺が出るまで待っておけよ』という発言は、脅迫には当たらない可能性が高いと思います。裁判官やその家族に害を加えることを明言していないため、どうとでも受け取れる表現だからです。声の大きさやトーンなどによっても変わってきますが、この発言をもって脅迫罪に問うのは難しいでしょう。

以前、特定危険指定暴力団総裁の被告が、一審で死刑判決を言い渡された際、裁判長に対し『公正な判断をお願いしたのに、全然公正じゃない。生涯後悔するぞ』などと発言したケースがあります。この件でも、発言が罪に問われることはありませんでした。

こうしたケースでは、先述のように、そもそも脅迫罪が成立するか否か微妙なことが多いです。また、被害者である裁判官から被害届が出されない限り、事実上、刑事事件として扱われず、このようなケースで裁判官が被害届を出すことはめったにないため、現実に罪に問われることが少ないのではないかと思います。

脅迫まがいの発言自体が罪に問われないとしても、判決への逆恨みから報復がなされる危険性はあるため、事案によっては警備を強化し、裁判官や証人など、裁判に関わった人の保護を徹底する必要があるでしょう」

オトナンサー編集部

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