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『ゴールデンカムイ』にも登場!“陸軍最強”の「第七師団」、明治期の貴重な軍服も!ファンに人気の展示を館長さんに聞いてみた|「北鎮記念館」(旭川)【前編】

  • 2024.3.1

明治末期の北海道を舞台に、一癖も二癖もある魅力的なキャラクター達が、莫大なアイヌの埋蔵金を巡り、繰り広げる壮大なストーリー。

北海道出身の漫画家・野田サトル先生による大人気コミックを原作にした、実写映画『ゴールデンカムイ』が、1月19日より全国東宝系で大ヒット公開中です。

作品のメイン舞台が”北海道”ということで、地元の放送局である、私たち HBCも制作に協力!HBCの「Sitakke」では、原作を含めた 『ゴールデンカムイ』に関連するモノや場所”を巡る旅をレポートします。

今回は…旭川の「北鎮記念館」へ!

こんにちは、『ゴールデンカムイ』のことが大好きな編集部ナベ子です。
今回は、旭川にある 「北鎮記念館」 にやってきました!

映画『ゴールデンカムイ』のエンドロールにも“取材協力”として施設名が掲載されていた「北鎮記念館」。一体どんな施設なのかッ!?
作品のファン目線からみた、施設のみどころをリポートしていきたいと思います。

※この記事は【前編】です。

「北鎮記念館」ってなに?

Sitakke
「北鎮記念館」外観 (旭川市春光町 国有無番地)

札幌駅から特急電車で約1時間半。旭川にある「北鎮記念館」は、陸上自衛隊第2師団が所在する旭川駐屯地に隣接しています。

「北鎮記念館」は、明治期に旭川に設置された“北鎮部隊”や屯田兵の歩みを中心に、北海道の「防衛」と「開拓」の歴史に関する2,500点もの資料を展示している施設です。入館無料で見学することができます。

『ゴールデンカムイ』にも登場!そもそも…「北鎮部隊」ってなに!

Sitakke
画像はイメージです(筆者作成)

明治時代、北海道の開拓と防衛のために、旭川に設置された大日本帝国陸軍「第七師団」

日露戦争では、激戦地・旅順に送り込まれ、激しい戦いを繰り広げました。
(映画『ゴールデンカムイ』の冒頭のシーンにもそのようすが描かれています)

原作の『ゴールデンカムイ』には、月島軍曹(私の“最推し”) をはじめ、鶴見中尉、鯉登少尉、尾形上等兵など、第七師団に所属する架空のキャラクターたちが多数登場し、物語の重要な鍵を握っています。

彼らは“陸軍最強の師団”とも呼ばれ、道民たちは畏敬の念を込め、「北鎮部隊」と呼んでいたそうです。## いざ、北鎮記念館へ!

私が「北鎮記念館」を訪れたのは、昨年12月上旬のこと。
出発地である札幌では、ほぼ積雪が無かったものの…

Sitakke

旭川方面へ行けば行くほど、ご覧のとおり、あたり一面、雪景色。

「この景色の中で、月島軍曹や鶴見中尉は暮らしていたんだなあ。へへへ」
「明治の頃は、今みたいな暖房器具もなかっただろうし、さぞ寒かっただろうに...」

“推し”たちに思いを馳せつつ、車窓を眺めていると…アッという間に旭川駅に到着しました。

Sitakke
旭川駅前

Googleマップによると、旭川駅前から、北鎮記念館までは、徒歩で約45分。
駅前から旧陸軍第七師団の駐屯地(=現在の北鎮記念館)へ向かう道は、戦前まで「師団通り」と呼ばれていたのだとか。

ちょっと距離はあるけれど、屈強な軍人たちに思いを馳せながら、歩いて向かおう。
“ゆかりの地”を巡るなら、つまりこういう心構えが大事だろう!

…心からそう思っていたんですよ、駅から外に出るまでは

「これはアカンですって!寒すぎ!」「はよタクシー乗らんと!」
私の目の前で、関西方面からの出張と思われる2人組のサラリーマンが、寒さに震えながらタクシーに飛び乗って行きました。

この日の気温は、氷点下。札幌よりもずっと冷え込みが厳しい。

……」。

気が付けば、通りがかったタクシーに飛び乗っている自分がいました。
(現代っ子の「ひ弱」な自分がなんとも情けない、トホホ…)

Sitakke
画像はイメージです

私:北鎮記念館までお願いします!

運転手さん:はいよ!お客さん、『北鎮』に向かうってことはあれかい?あの漫画のファンだろ?第七師団が出てくる、北海道が舞台のやつ。オレ、知ってるよ。

私:そうなんです。大好きな漫画をきっかけに来ました!

運転手さん:うーん、タイトルなんだっけ?うーん。思い出した!「もののけ」なんたらかい?

私:あっ、えっと、たぶん、『ゴールデンカムイ』ですかね?

運転手さん:あ~!『ゴールデンカムイ』!それよそれ!(笑)

Sitakke
旭川市内(駅近辺)のようす

タクシー運転手さん
「その、 “なんたらカムイ”っちゅうのが人気になってから、『北鎮』に向かう、20~30代の若い人たちのお客さんが増えたね。たぶん3~4年前くらいからかな」

「それまでは、駅前から『北鎮』に向かう人って、70~80代の、道外からのお客さんが多かったかな。きっと、当時のようすを懐かしんで来ていたんだと思うね。歴史に興味を持った若い人が増えてくれたのは、いいことよね」

気さくなタクシー運転手さんとの会話を楽しんでいると、数分で「北鎮記念館」に到着しましたッ!!

今回の案内人は 「北鎮記念館」森山館長!

Sitakke

「ようこそ!」

笑顔で迎えてくれたのは、北鎮記念館 館長の森山英介さん。2018年まで、道内各地の部隊に所属していたんだそうです。ビシッとした制服姿がかっこいい!

森山館長
「北鎮記念館は、旧陸軍『第七師団』や屯田兵の歴史を、多くの人に知ってもらうこと、そして私たち陸上自衛隊に対する理解を深めていただくことを願って建てられた施設です。中にどうぞ!」

Sitakke
館内のようす

館内のいたるところに「第七師団」に関連する展示物があります!

森山館長、実は『ゴールデンカムイ』の“古参”ファン!

私:あの、早速なんですが、今日は『ゴールデンカムイ』に出てくる“ゆかりの地”を巡る記事の取材で来ました。

森山館長:『ゴールデンカムイ』をきっかけに、当館を訪れてくれる若い方々もずいぶん増えました。作品をきっかけに、興味を持ってもらえることは、とても嬉しいことですよ!

Sitakke
森山館長

私:森山館長は、『ゴールデンカムイ』のことをいつから知っていたんですか?

森山館長:実は「週刊ヤングジャンプ」で掲載中の頃から、好きで読んでいたんです。コミックスの3~4巻が出たころですかね。

私:かなりの“古参ファン”じゃないですか!

森山館長:そうですね(笑)

Sitakke
館内のフリースペースには、第七師団に関する資料がいっぱい。『ゴールデンカムイ』の漫画も全巻置いてありました!

森山館長が“推す”展示物は?

Sitakke

館内には、北鎮部隊や屯田兵の歩みを中心に、明治期頃からの北海道の「防衛」と「開拓」の歴史に関する資料がズラリ。

森山館長
「現役の自衛官による展示説明も行っています。ご希望の方には『ゴールデンカムイ』に出てくるキャラクターやシーンに関連付けての説明も可能ですよ」

今回は、作品のファンに向けたおすすめの展示物の“みどころ”を3つ厳選していただきました!

その①『旧陸軍第七師団』のジオラマ~第七師団と軍都・旭川の歴史に触れる!

Sitakke

森山館長
「こちらは大正時代当時の『旧陸軍第七師団』の敷地を模型にしたものです」

「明治23年、旭川村が設置され、屯田兵や開拓民の入植により、北海道の防衛と開拓と拠点として、多くの人が旭川に集まりました。明治34年に、札幌から旭川への第七師団の移駐があり、さらに多くの賑わいをみせていました」。

「第七師団が保有していた敷地は、東京ドーム約130個分の広大なものでした!札幌月寒の歩兵1個聯隊と、函館の重砲兵大隊を除いた、全ての舞台が旭川に駐屯していたんです。ここまで大規模な駐屯隊形をもっていたのは、ここ旭川だけだったということもあり、『軍都』と呼ばれていました。そういった意味でも、北海道の歴史を語る上で、軍都・旭川の歩みは欠かせないと思います」。

Sitakke

「ちなみに『ゴールデンカムイ』の原作10巻で、“脱獄王”白石由竹が捕らえられていた、歩兵第27聯隊の兵舎はこのあたり(上記画像)ですよ。尾形上等兵のセリフに『南へ逃げろ!』とありますが、その南には『石狩川』があり、たしかに外へと逃げやすいルートとなっています。地形を熟知していた尾形上等兵らしい指示ですよね!」。

その②“推し”軍衣の見分け方~肩と袖に注目すると所属と階級がわかる!

Sitakke

森山館長:作品のファンの方に人気なのは、こちらの軍服や軍刀の展示です。一般の方から寄贈頂いたものを中心に展示しています。こちらは、明治19年3月1日に制定されたもので、第七師団の下士官や兵士たちが着用している紺色の軍衣です。

Sitakke

私:このマネキンの服装、とても既視感あります!もしかして、私の推し(月島軍曹)と同じ軍服ですか…?

森山館長:惜しいですねえ。袖のところをよく見てみてください。袖章の本数は、階級を示しています。月島などの『軍曹』は、二本の細線に一本の太線と、金線一条です。
こちらは三本線ですので、『上等兵』が着用する軍服ですね。つまり、尾形や宇佐美の軍服です。

私:なるほど!そういった見分け方があるんですね。

森山館長:ちなみに、肩章の数字が部隊番号で、色が兵科を表しています。こちらのマネキンが着用しているものは、赤色なので、歩兵・近衛兵・憲兵・屯田兵のいずれかで、27番の数字から歩兵第27聯隊所属ということになります。

その③鶴見中尉の「軍衣」のヒミツ!?

Sitakke

私:『ゴールデンカムイ』のファンとしては、この3人の構図を見ただけでニヤッとしちゃいます(笑)
鶴見中尉、鯉登少尉…そして、左側に立っているのは、ポジション的に月島軍曹ですよね?
あっ!でも袖章に線がないってことは、「軍曹」ではないのか…。

森山館長:月島軍曹ファンの方にとっては残念ですが、実は、軍曹階級の軍服はいまのところこの施設には寄贈されていないんです。

私:あ…そうなんですね!

Sitakke
『ゴールデンカムイ』作中で、鶴見中尉が着用しているものとそっくりな軍衣

森山館長:「寄贈」に関連したもので、ちょっと興味深いエピソードがありますよ。
こちらの中央に展示されている、作中で鶴見中尉が着用しているものとそっくりな軍衣に注目してみてください。

私:興味深いエピソード?エッ、なんですか!?

⇒後編の記事へと続きます。

【後編】『ゴールデンカムイ』にも登場!“陸軍最強”の「第七師団」、明治期の展示が充実!館長さんの“推しキャラ”は誰?|「北鎮記念館」(旭川)

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※2023年12月取材時の情報に基づきます。
文・取材:ゴールデンカムイ沼 ・Sitakke編集部 ナベ子

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