明治末期の北海道を舞台に、一癖も二癖もある魅力的なキャラクター達が、莫大なアイヌの埋蔵金を巡り、繰り広げる壮大なストーリー。北海道出身の漫画家・野田サトル先生による大人気コミックを原作にした、実写映画『ゴールデンカムイ』が全国で大ヒット公開中です。
『ゴールデンカムイ』原作ファンで、映画にもどっぷり“沼った”編集部員・ナベ子が、作品のゆかりの地をめぐる連載をお届けしています。
旭川にある「北鎮記念館」にやってきました!
原作の『ゴールデンカムイ』には、月島軍曹(私の“最推し”)をはじめ、鶴見中尉、鯉登少尉、尾形上等兵など、北鎮部隊(第七師団)に所属する架空のキャラクターたちが多数登場し、物語の重要な鍵を握っています。
⇒前編:『ゴールデンカムイ』にも登場!“陸軍最強”の「第七師団」、明治期の貴重な軍服も!ファンに人気の展示は?館長さんに聞いてみた
今回の案内人は 「北鎮記念館」森山館長!
北鎮記念館 館長 森山英介さん
前編では、森山館長に、「軍都」と呼ばれた旭川の歴史と、“陸軍最強”と呼ばれた北鎮部隊の歩みについて解説いただきました。
前編のおさらい① 「北鎮部隊」って?
明治時代、北海道の開拓と防衛のために、旭川に設置された大日本帝国陸軍「第七師団」。
道民たちは畏敬の念を込め、「北鎮部隊」と呼んでいたそうです。
日露戦争では、激戦地・旅順に送り込まれ、激しい戦いを繰り広げました。
(映画『ゴールデンカムイ』の冒頭のシーンにもそのようすが描かれています)
前編のおさらい②「北鎮記念館」って?
札幌駅から特急電車で約1時間半。旭川にある「北鎮記念館」は、旧陸軍第七師団の拠点があった場所に設置された施設です。陸上自衛隊第2師団が所在する旭川駐屯地に隣接しています。
森山館長
「北鎮記念館は、旧陸軍『第七師団』や屯田兵の歴史を、多くの人に知ってもらうこと、そして私たち陸上自衛隊に対する理解を深めていただくことを願って建てられた施設です」
軍服や軍刀など、館内のいたるところに「第七師団」に関連する展示物があり、無料で見学することができます。
前編の記事では、ご自身も“ゴールデンカムイファン”だという森山館長に、作品のファンにおすすめの展示のみどころを3つご紹介いただきました。
3つめのおすすめの展示は、一般の方から寄贈されたという、当時の「軍服」。
ご紹介いただく中で、森山館長からこんな一言が。
森山館長:こちらの中央に展示されている、作中で鶴見中尉が着用しているものとそっくりな軍衣について、興味深いエピソードがあるんですよ。
エッ!気になる!なになに!?
***
長くなりましたが、ここまでが前編のおさらいでした。
それでは、続きをリポートします!
鶴見中尉の「軍衣」のヒミツ!?
森山館長:こちらの軍医は『肋骨服』とも呼ばれるもので、明治19年に制定されました。当時の陸軍は、フランス式を導入していたということもあり、胸飾りはフランスに倣って付けられています。
私:『ゴールデンカムイ』では、鶴見中尉が着用していますよね!
森山館長:鶴見中尉のおかげで一躍有名になりましたね(笑)。
興味深いことに、実はこちらで展示している『肋骨服』は、日露戦争当時、野戦砲兵第27 聯隊長の鶴見数馬 陸軍大佐という方が着用していたものなんです。
私:なんと…!「鶴見」さん…ですか。偶然なのか、それとも…?
森山館長:…想像が膨らみますよね!
森山館長:よく見てみてください。実は、胸飾りの3箇所は、ポケットになっているんですよ。
私:ほんとだ!ポケットになってる!」
森山館長:ちょうど 「小指の骨」を隠し持っておくのにちょうどいいいサイズ感ですよね。
私:313話の、鶴見中尉の“あのシーン”ですね?ふふふ…
「北鎮記念館」は、他にも見どころが盛りだくさんでした!
以上、前後編を通して、森山館長おすすめの「館内の見どころ」を3つに厳選してお話いただきました!
ほかにも、館内には、見どころがたくさんありましたので、いくつか写真でご紹介します。
たとえば…当時使用されていたスキーの展示や、
当時の暮らしを描いたイラストも展示されています。
軍で使用されていた刀などの展示に、
第七師団の“陸軍飯”のレシピを再現した本の紹介もありました。
さらには、旧陸軍第七師団の歴代師団長のお写真も。
第七師団の“最後の師団長”を務めた鯉登中将。(“金カム”ファンなら「ハッ!」となる展示ですね…!)
【最後に】森山館長が「北鎮記念館」に込める思いとは
最後に「北鎮記念館」の“今後”についての思いを、森山館長にお聞きしました。
私:今回は貴重なお時間をいただいて、ありがとうございました!実は内心、 私のように『漫画やアニメをきっかけに来た』って、あまり歓迎されないんじゃないかなって、ちょっとだけ心配だったんで、少しホッとしました…!
森山館長:駐屯地と隣接しているせいか、ちょっと入りにくい雰囲気はありますからね(笑)『ゴールデンカムイ』をきっかけに、多くの人に興味を持っていただけるのは嬉しいことですよ!映画のほうでも、軍服の参考資料などの提供を通し、制作に協力させていただきました。
軍服のレプリカを試着して撮影できるコーナーも。
「地域の中高生にも気軽に訪れてほしい場所」
道内外各地から寄贈された貴重な資料の数々。
森山館長
「北鎮記念館の展示品の多くは、道内外各地の皆様から寄贈いただいた、どれも貴重な資料です。『戦争』というテーマに対してはいろんな意見がありますが、展示を通して知っていただきたいのは、国土・北海道を守るため、命がけでたたかった人たちがいたということ。だから、いまの私たちの暮らしがあるんだと思います」
「入場料も無料ですし、歴史の勉強ができるフリースペースなどもあるので、中高生などの若い人たちにも、気軽にこの場所を訪れてもらいたいですね。歴史について深く知ってもらえるきっかけになるといいなと思います」
あとがき(余談)
原作者の野田サトル先生や、アニメの声優さん達からのサインもズラリ。
コミックスの2~3巻が発売された連載当時から、『ゴールデンカムイ』のファンだったという、森山館長。一番の“推し”は誰なんだろう? 個人的に気になったので最後に聞いてみました。
森山館長:わたしの“推し”ですか?うーん…これ言っちゃっていいのかな。
私:ぜひ、聞きたいです! (正義感強そうだし、杉元かなぁ?鶴見中尉も好きそう!)
森山館長:え~っと、私の推しはですね…。 「有坂閣下」 なんです。
(えっ?)
森山館長:銃器にとても興味があったり、日常生活の中で使う道具に工夫を加えたりするのが私も好きでしてね。あとなんとなく見た目も似ている気がして…。なぜか、有坂閣下に対して、親近感を抱いてしまうんですよ(笑)
「みんなから『“推し”が意外過ぎる!』っていつも言われるんですよ…」と、はにかんだ笑顔を見せてくれた森山館長。
予想以上にマニアックな回答をきっかけに、『ゴールデンカムイ愛』溢れるトークに花が咲きました!
森山館長、ありがとうございました!
記念撮影コーナーとおみやけ店も充実していましたよ!
軍服のレプリカを試着して記念撮影できるコーナー。
館内の売店では、『ゴールデンカムイ愛』溢れる名物スタッフさんによるおみやげやグッズ展示も充実してました。
【北鎮記念館】
所在地:旭川市春光町陸上自衛隊旭川駐屯地内
公式HP:https://www.mod.go.jp/gsdf/nae/2d/hokutin2/top.html
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※2023年12月取材時の情報に基づきます。
⇒【前編】『ゴールデンカムイ』にも登場!“陸軍最強”の「第七師団」、明治期の貴重な軍服も!ファンに人気の展示は?館長さんに聞いてみた
文・取材:ゴールデンカムイ沼 ・Sitakke編集部 ナベ子