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ド真面目で子どものように無垢で繊細で脆い。俳優・野波麻帆さんが服で紐解く「本当の長澤まさみ」の姿

  • 2024.2.28
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オトナミューズ4月号の表紙とカバーストーリーにご出演いただいた長澤まさみさんのスタイリングを手掛けた、俳優・野波麻帆さん。同じ事務所に所属する先輩、後輩という共通点だけでなく、プライベートでも仲がよく、しかも服好きという共通点があるふたり。
 
本誌では長澤さんのインタビューを掲載していますが、ウェブではスタイリングを手掛けた野波麻帆さんにインタビューを敢行し、撮影の裏側を追ったムービーも公開! 「誰よりもまーちゃん(長澤さん)のことを分かっている」、そう話してくれた野波さんは、どんな想いを抱きながら本企画を受けてくださったのか、1体1体に込めた想いも伺いました。

本音を話せる同業者であり、 可愛い後輩という存在。

―――後輩でありながらも、仕事の相談もでき、プライベートも共有できるなんて、なかなか稀有な存在だなと思います。
 
私にとっても、こんな関係を築ける存在はまーちゃん以外本当にいません。彼女が「東宝シンデレラ」に受かったのが小学6年生のときで、受賞してひとりで大きな舞台に登壇した際に、うわーって泣いていたんです。たくさんの大人たちに囲まれながら、一般の女の子から芸能の世界に飛び込む瞬間をひとりで背負っていたんだ、小学生だったらそれは泣くよな、なんて思いながら、なんて可愛いんだろう、って思ったのが彼女の第一印象でした。
 
そのころから付き合っているのですが、彼女は本当に真面目で責任感が強い。「麻帆ちゃん、こうした方がいいと思う」と、ふらふら不真面目な私を(笑)ちゃんと叱ってくれて、そう言われて気づかされることも多く、勉強になることがたくさんあって。だからこそ、年下なのにダメなところも見せられるし、甘えられる、私にとっても本当に大事な存在なんです。

スタイリスト・野波麻帆さんに密着した、撮影の裏側を大公開! videographer:MANA SHIRAISHI

―――そんな旧知の仲だったのですね! そんなおふたりが一緒にお仕事をするようになったきっかけはなんだったのでしょうか?
 
結婚する前はファッション関係のパーティーでDJをしていたので、ファッション業界の方と遊ぶ機会が多くて。そこでまーちゃんとも一緒に遊んでいたんです。当時私はAMBUSH(アンブッシュ)のデザイナーのYOON(ユーン)と〈the others〉というDJのユニットを組んでいたのですが、YOONと一緒にm-floのライブのスタイリングをしたことがきっかけで、そこからスタイリングのお仕事の話がくるようになりました。そんなふうに活動していたときに、ちょうどまーちゃんに雑誌Smartで連載をする話がきて、じゃあ一緒にやろうよって、第1回と第2回のスタイリングを〈the others〉でやらせていただいたんです。それが最初でした。
 
その後、彼女の映画の舞台挨拶をスタイリングさせていただいたのを最後に、私は結婚して子どもを産んだり、YOONは自分のブランドを大きくするためにやらなきゃいけないことが増えたりで、〈the others〉は一旦活動休止したんです。私たちothersじゃなくて、mothersになっちゃうねと、冗談を言いながら(笑)。それ以降はスタイリングの仕事は辞めてしまい、まーちゃんのスタイリングにも一切携わっていなかったのですが、おたがいの舞台を観に行ったり飲みに行ったり、ちょこちょこ会っては近況をキャッチアップしたり、いろんな話をする間柄でした。
 
―――今回野波さんにスタイリングの白羽の矢が立ったのは、長澤さんから直接オファーされたとか。
 
このスタイリングのお話をいただく前に、ちょうどなにか一緒に面白いことがしたいねと、ふたりで話をしていたんです。私はここ何年かの彼女のパブリックに出てきたときのスタイルが、あまりにも普段の彼女からかけ離れている気がしていて。俳優・長澤まさみなので、もちろん普段の彼女とは違うのは前提ではあったとしても、もっと彼女らしさを出せないかと提案して。彼女は彼女で、ここ最近の自分のイメージを打破するような、なにか新しく挑戦してみたい、と思っていたタイミングだったようで。「だったら私にやらせて!」 と彼女に伝えていました。そんなときにオトナミューズさんからまーちゃんに出演のオファーがあって、「麻帆ちゃんと一緒にできたら嬉しい」と言ってくれて。二つ返事で引き受けました。

屈託なく笑う無垢な一面を持ちながらも 本質は真面目で、とても繊細。

今回スタイリングを手掛けた、俳優・野波麻帆さん。 photography:DAISUKE ITOH[SIGNO]

―――今回のスタイリングは、野波さんのなかで描いている長澤さんのイメージが投影されているように思います。
 
先程も少しお話しましたが、まーちゃんにはずっと、本当の彼女の姿をもうちょっと見せていいんじゃないかと、とくにこの3~4年いつも話していました。俳優・長澤まさみは「東宝シンデレラ」という大きな看板を背負いつつ、たくさんの作品のなかで主演という想像を超える大きなプレッシャーを抱えて仕事をしています。パブリックではガハハと笑う、明るい正統派美人というイメージが強いと思うのですが、私のなかのまーちゃんは、“ド”がつくほどとっても真面目で、とてつもなく繊細で、明るい彼女からは想像できないくらい陰な部分もあるんです。
 
あの少年のように屈託なく笑う、小学生のような純真無垢な一面も持っているのですが、彼女の本質はそれを思うと心がぎゅっと切なくなってしまうくらい、繊細で脆い。でも、そこってなかなかパブリックには出ていなくて。私のなかでの長澤まさみは、もっと少年のような無垢さだとか、陰と陽の部分の両面を持ったアンバランスな人だと思っています。その部分をもっと見せていいんじゃないかとずっと思っていました。
 
―――今回の撮影では今まで見せたことがない、長澤さんの本質を表すような新しい一面を見せていただいたように思いますが、そのコンセプトはどのようにして決まったのですか?
 
まーちゃんと話していたとき、彼女が自分のパブリックイメージが分からないと言っていたんです。自分のことって、自分ではなかなか分からないんですよね。そのとき、「イメージを変えたいけど、どうしたらいいか分からない。でもここ最近、腑に落ちないというか、何か分からないけど、しっくりこないことがある」という話もしていて。じゃあ少しずつでも変えていった方がいいかもしれないね、という話をしていたのです。彼女の真面目な性格がゆえに、今までそういうことを言えるチームをあまり持っていなかったみたいで。自分のことを自分発信できる性格ではなかったんですよね。みんなが求める長澤まさみでいることが正解なんじゃないかと。チームでディスカッションしながら作るというよりも、みんなが作る長澤まさみを演じていたんじゃないかと思います。
 
でも、20代だったらそれでよかったかもしれないけれど、30代になり、これから先の人生を歩んでいくなかで、もっと自分の好きなことや自分のやりたいことをちゃんとまわりに伝えるべきだし、自分の気持ちを自分で声に出していかないと、今後の人生、ひとりの人間としても、俳優・長澤まさみとしても、あなたは楽しくないじゃない? ということを伝えたんです。そしたら彼女もどこか腑に落ちた部分があったみたいで。じゃあどうする? どうしたい? と聞いてみたら、彼女のビジョンを「こんなのはどうかな、こうしてみたらいいかも!」と、話してくれたんです。
 
―――野波さんの、長澤さんへの愛をとっても感じます。すごいいいチームだなって。野波さんじゃないと、今回の企画は実現しなかったんじゃないかと。
 
そう言っていただけて嬉しいです。本当に大好きなんです、彼女のこと。不器用なほど真面目なところも、弱いところも、全部ひっくるめて。ちょっとだけその荷を軽くしてあげたい。役柄ではなく長澤まさみで人前に出るときは、もう少し楽しく、肩の力を抜いて、自分らしくいることができればいいなあと。カッコよく、愛くるしく、凛々しく、優しく立っている長澤まさみであってほしいし、その姿が私にはもう見えているんです。

それぞれのスタイリングに 込められた想いとは?

―――スタイリングはもちろん、1点1点のアイテムにもこだわりが感じられました。
 
愛があるので♡。今回は裏テーマとして映画『マルコヴィッチの穴』(1999年)がありました。この撮影の話をふたりでしていたときに、彼女から「マルコヴィッチっぽいのはどうかな」という提案があって。あの映画のムードは彼女の雰囲気に合っていると思って、ぴったりじゃん!と、即決でした。まーちゃんは明るい快活なイメージだけど、見くびるなよと(笑)、つかめそうでつかみ切れない、こう、危うさも兼ね備えている、そんな分かりやすい人間じゃないんだぞって思いながら、今回のスタイリングのイメージソースを作っていました(笑)。
 
―――今回のスタイリングにしっかり投影されていたように思います。最後に、1ルックごとにポイントなどお伺いできますか?

オールドスクールなカルバン・クラインのデニムセットアップ

デニムジャケット¥27,500、デニムパンツ¥24,200、ベルト¥77,500(全てカルバン・クライン/カルバン・クライン カスタマーサービス)、コート¥66,000(バッカ/ビー エディション ニュウマン新宿店)、バッグ¥24,090(トゥティエ)、シューズ¥49,500(シンヤコヅカ/ザ ウォール ショールーム)、眼鏡¥36,300(ジェントルモンスター/エム)、ネックレス¥22,000(アフェクト)、ソックス¥3,960(MOON TREE PLANET)

まーちゃんはプライベートでは、デニムをはいていることも多くて。デニムをはじめとしたパンツスタイルが多いんですけど、これもパブリックイメージにはないですよね。だからこそ、デニムのスタイリングは1体組みたいなと思っていて。今回は90年代の映画や女優さんからインスピレーションを得てイメージを膨らませていったので、カルバン・クラインがいいんじゃないかって。オールドスクールに見せるなら、セットアップでと。今までの彼女のイメージにもない、シルバーフレームの眼鏡もポイントです。デニムのセットアップと同様、どこか昔懐かしいけれど、今っぽくて、新鮮に見える。

アン ドゥムルメステールの白シャツ×スカート

シャツ¥121,000、スカート¥243,100、ベルト¥85,800、靴¥176,000(全てアン ドゥムルメステール/エム)、ブラ¥12,100(ヨー ビオトープ)

裏テーマの映画『マルコヴィッチの穴』で、キャサリン・キーナー演じるマキシンが白いシャツにスカートで登場するシーンがあるのですが、そのシーンを彼女に絶対投影させたいなと思って。作中では白シャツ×タイトスカートだったのですが、それをそのまま真似るのは意味がないと思い、いろんなブランドのルックを見ていたなかで、白と黒で考えるとしたら、やっぱりアン(ドゥムルメステール)がいいなって。ショールームに伺った際に、前後にスリットが入っていて足が思いっきり見えるスカートがあって、これはもう絶対アンだと思ってこのルックに。

内面の複雑さを表現した白ニット×ミニスカート

ニット¥40,700(ヨー ビオトープ)、スカート¥37,400(MOON TREE PLANET)、バッグ¥38,500(トゥティエ)、イヤリング¥17,800(アフェクト)、ネックレス¥63,800(サラース/サラース カスタマーサポート)

スタイリングは洋服を重ねて、素材の違いやカラーの組み合わせの面白さを引き出していく、という方法というかスタイルがあると思うのですが、今回に関しては洋服を見せるのではなく、長澤まさみを見せたかったので、できるだけシンプルにしたかったんです。
 
この白ニットとシルクのミニスカートでは、彼女のスタイルのよさ、肌のきめ細やかさや、大人の女性の艶やかさ、ショートヘアのウィッグで少年のような快活さと少女性を引き出したくて。足元は見えていませんが、フラットシューズを合わせていて。このミニスカートにフィット感のあるニットにフラットシューズの着こなしができるのは、長澤まさみしかいないよ!? というのも見せたかったんです(笑)。

美しさを引き出すシンプルなブラックドレス

ドレス¥53,900(ロンハーマン)、別注サンダル¥135,300(ジャンヴィト ロッシ/共にロンハーマン)、バッグ¥275,000(MOON TREEPLANET)、ネックレス¥17,600、ラリエット¥59,400(共にボーニー/エドストローム オフィス)、バングル¥74,800(サラース/サラース カスタマーサポート)、ソックス¥4,180(ヨー ビオトープ)

まーちゃんは本当に素晴らしい骨格の持ち主なので、それを見せるならば絶対ゴテゴテさせたスタイリングは違うなと思っていました。彼女が持っている本来の素晴らしさを最大限に活かすには、絶対ストラップが華奢なブラックドレスが必要だと、企画が始動したときからこのアイテムだけ決め打ちでずっと探していました。

90年代を意識したライトブルーのセットアップ

ジャケット¥352,000(アワー レガシー/エドストローム オフィス)、ブラウス¥44,000、スカート¥52,800(共にトゥモローランド ビー/トゥモローランド 渋谷本店)、イヤーカフ¥33,000(ヘレディタス)、スネークチェーンネックレス[ 2本セット]¥16,500、チェーンネックレス¥16,500、リング各¥29,800(全てアフェクト)

まさに90年代のムードを意識したスタイリングです。当時のケイト・モスがジョニー・デップと交際していたころのスタイリングがすごく好きで。彼女もこの感じが好きだったみたいで、この雰囲気のものがないかなって探していました。当時のムードを出したかったので、デッドストックのタイツやヴィンテージのヒールを合わせました。一方で古臭いイメージにはしたくなかったので、あえてメンズのレザージャケットを合わせたり。実はまーちゃんもこのスタイリングが好きだったみたいで、ジャケットのサイズを聞かれています(笑)。

photography:SHUNYA ARAI[YARD] styling:MAHO NONAMI hair:RYOJI INAGAKI[maroonbrand] make-up:KOTOE SAITO styling cooperation:RANKO ISHIBASHI model:MASAMI NAGASAWA videographer:MANA SHIRAISHI

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