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「幸せ」を受け取る準備はできている? マリッジブルーの正体とは 『婚活1000本ノック』6話

  • 2024.2.27

ドラマ『婚活1000本ノック』(フジ系)は、お笑いトリオ「3時のヒロイン」の福田麻貴が主演し、ダンスボーカルグループ「FANTASTICS from EXILE TRIBE」の八木勇征がバディ役を務める、婚活ラブコメディー。33歳独身・南綾子(福田)の婚活を、幽霊になってしまった山田クソ男(八木)がサポートする。第6話では、ヤギオ(千賀健永)と結婚を前提にした交際を始めた綾子だが、彼のとある一言で及び腰に……。

結婚前に試される、自分を変える勇気

独身時代と、結婚後の生活は変わる。例えば、綾子のような一人暮らしであれば、スッピンに前髪ちょんまげ姿、ダルダルのスウェット部屋着にペヤング爆食いの生活でも、その場で誰も文句を言わないだろう。

結婚するということは、一人ではなく二人で生きていくということ。住まいが一つになれば、同じ空間に自分以外の人間が暮らす日常が当たり前になるということだ。

精魂をつぎ込んだ婚活がようやく実を結び、晴れてヤギオ(千賀)と結婚に向けて付き合う段階に入った綾子。ジムで仲むつまじいインストラクターと客を見ても、若い女性たちに変な目で見られても、菩薩(ぼさつ)のような広い心で受け止めている。まるで、シングル状態と恋人がいる状態とで、街でカップルを見かけるときの心の持ちようが変わってくるかのようだ。

ハートの絵文字だって難なく使いこなせるようになった綾子は、ヤギオとの結婚を視野に入れ、山田(八木)に「さすがに私も学んだんだよ。相手に求めるだけじゃなくて、自分のダメなところも直していかなきゃならんのだ、って」とまで発言。恋人ができると、ここまで人は変われるのか。

結婚生活を営むためには、相手に求める前に、まずは自分から変わる勇気を持つ。それも、二人の幸せな結婚生活のため。

綾子自身も、それを肝に銘じつつ、ヤギオの実家を訪れるのだが……。

良い人なのに、結婚したいと思えない

ヤギオの穏やかな性格と嫌味のないスマートさは、随所にあらわれている。第6話冒頭、綾子とヤギオが彼の実家のある山梨に向かうため、途中のドライブインで休憩していたときも、ヤギオは何も言わずに綾子の分までゴミを片付けていた。

さらには、先に車で待っていて、と鍵を綾子に手渡すヤギオ。さりげないシーンだが、きっと多くの女性が「これができる男性はレアだ……」とかみしめたことだろう。

ヤギオは、実家や親戚まわりとの関係も良好。綾子にとっての(将来の)義父母や親戚たちも善良な人ばかりで、このまま結婚しても不都合はなさそうだ。それどころか、まるで最初から幸せな未来しかないロードマップが用意されていたかのようにも思える。

しかし、後日、ヤギオと彼の友人夫婦とやってきたキャンプの場で、綾子は、心に降り積もっていたマリッジブルーが爆発してしまう。

ヤギオも友人たちも穏やかで良い人ばかりだ。綾子が誤って、洗っていた米を地面に落としてしまっても、優しく受け流してくれる。顔色が悪いから休んでいて、とテントで寝かせてもくれる。

綾子がテントで横になっていると、ヤギオが友人たちに話す声が聞こえてくる。「結婚したら実家に同居するのではなく、住む家を探す。綾子が気兼ねなく在宅ワークができるように、専用の仕事部屋を用意しようと思っている」と。

それを聞いた綾子はテントを飛び出し「家なんか買ってもらう価値はない」「結婚したいと思えない」と自らの本音を再認識した。あれだけヤギオと過ごす時間が楽しく、彼と結婚すれば幸せになれると思っていたのに、なぜ?

それは、ヤギオが見ているのは「幻の私」で、「私は彼が思っているような夢追い人じゃない」から。綾子は、本当の自分がどんな人間なのかを知られることで、ヤギオたちを失望させてしまう、と思い詰めたのだろう。その結果、恐怖心にあらがえなかったのか、自らヤギオに「結婚はできません!」と告げてしまう。

「ありのままの自分」は受け入れてもらえない?

なぜ、綾子はヤギオとの結婚をやめてしまったのか。

独身時代のように、自由な生活を謳歌(おうか)できなくなるから? 結婚するからには、これまでの自分とは違う、新しい自分にならなければいけないから?

まだ言葉にされていない綾子の心境もあるだろう。しかし、マッチングアプリや婚活イベントに何度も参加したことのあるような「婚活の猛者」たちには、覚えがある心の動きなのではないだろうか。

これは昨今よく聞く「自己肯定感」にも通じる問題だ。綾子には「幸せ」を受け取る準備が足りていなかった。つまり、幸せになってもいいんだ、と思えるだけの自己肯定感が欠如していた、と思えてならない。

仮にヤギオと結婚した後、ペヤングを3口で食べる女性だとバレたとして、何か問題があるだろうか。きっとヤギオなら、そんな綾子の一面も優しく受け止めてくれたはず。時間をともにするにつれ、まだ知らなかったヤギオの性格を知る瞬間もあったかもしれない。

綾子は、そんな自分の本性を知られるのが怖かったのか。ありのままの自分では、パートナーに受け入れてもらえない、好きになってもらえない、という自信の欠如が透けて見える。それはひとえにヤギオが穏やかで優しくて、非の付け所のないスマートな男性ゆえのことかもしれない。

もしも綾子が、こんな自分でも大丈夫、と思えていたら。自分はもちろん、ヤギオのことだって幸せにできる、と自信を持てていたら。自分の長所も短所もまとめて受け入れられていたなら、ヤギオと結婚して幸せになる道も拓けたかもしれない。

■北村有のプロフィール
ライター。映画、ドラマのレビュー記事を中心に、役者や監督インタビューなども手がける。休日は映画館かお笑いライブ鑑賞に費やす。

■モコのプロフィール
イラストレーター。ドラマ、俳優さんのファンアートを中心に描いています。 ふだんは商業イラストレーターとして雑誌、web媒体等の仕事をしています。

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