こんにちは。ドイツ在住トラベルライターのYuです。
先日スペインをロードトリップしてきたのですが、「ここも、ここも、ここも世界遺産なんだ!」と、どこに行っても世界遺産に遭遇してびっくり。それもそのはず、後日調べてみるとスペインには世界遺産が全50件もあり、世界でも第5位の保有数なんだとか。
これだけ世界遺産があると、限られた日程の中でどこに行けばいいのか悩む方も多いと思います。
そこで今回は、実際に旅した視点から「ここは本当に行ってよかった!必見だよ!」というスペインの世界遺産をご紹介していきます。スペイン旅行の参考に、また世界遺産好きの方に楽しんでもらえたら嬉しいです。
世界遺産大国・スペイン
2023年、ルワンダ共和国が新たに世界遺産保有国となり、現在では168カ国に世界遺産があります(2024年1月現在)。
その中でもイタリア(59件)・中国(57件)・ドイツ・フランス(ともに52件)に次いで、多くの世界遺産のあるスペイン(50件)。 ※日本は25件・11番目
50件ある世界遺産の中でも、文化遺産が44件とその割合が多く、市内観光ついでに気軽にアクセスができるのも魅力の一つです。
本土から離れたカナリア諸島やイビサ島へ行けば、のんびりとしたリゾート旅をしつつ、自然遺産にも触れることができます。世界遺産にからめていろいろなカタチの旅ができるのが、スペインという国なのです。
ガウディの作品群
スペイン第二の街バルセロナ。
ここにはサグラダ・ファミリアをはじめ、グエル公園やカサ・ミラなど、天才建築家ガウディの作品がいくつもあり、そのうちの7つが「アントニ・ガウディの作品群」として世界遺産に登録されています。
“森の大聖堂”サグラダ・ファミリア
スペイン観光といって、誰もが思い浮かべるであろう「サグラダ・ファミリア」。
天才建築家ガウディの代表作で、スペインが誇る観光スポットです。外観だけ見物する人も含めると、なんと年間2000万人もの訪問者がいるんだとか!
今まで多くの教会・大聖堂を見てきましたが、ここサグラダ・ファミリアは、今まで見てきた教会とは180度違いました。絶対に絶対に!見てほしいと心の底からおすすめします。
外部もすごいですが、内部もまたすごい。
教会の中へ一歩足を踏み入れると、そこはまるで「森」のよう。樹木をあらわした柱は、枝分かれをしているばかりか、なんと天井には葉っぱまでありました。
あたたかい色合いのステンドグラスから差し込む光は、太陽の動きに合わせて色合いが変わって、神秘的な美しさ。
イエス・キリスト像も、今まで見たことのないデザインでした。
ガウディ建築は奇抜なデザインですが、どこかぬくもりを感じるのは、直線ではなく曲線を使っているからだといいます。
「自然の中には直線はない。なぜ柱はまっすぐじゃなきゃダメなんだ」というのがガウディの建築に息づく精神で、なによりも自然に近いデザインがとられているんだそう。
ガウディの没後100年にあたる2026年に完成予定のサグラダ・ファミリア。
今しか見られない建築中の姿を見るもよし。完成後の姿を見て、ガウディの壮大な構想に感嘆するもよし。あなたはどちら派?
カサ・ミラ
バルセロナのメインストリート、グラシア通りにあるカサ・ミラ。ガウディが54歳のときに、実業家ペレ・ミラ夫妻の邸宅として建設されました。
モダンな建物が並ぶ中、唯一無二の存在感を示すカサ・ミラは、ベージュのような色合いがユニークで、まるで建物全体が波打つ砂丘のようです。
なんとここには今でも4世帯が住んでいて、3世代に渡り70年以上も暮らしている家族もいるんだそう。世界遺産に住むなんて、夢のようですね。
さて、このカサ・ミラ。チケット購入して内部の見物もできますが、チケットなしで建物内にあるカフェを利用できちゃうんです。
時間が限られている方や、建築にそこまで興味のない方は、ぜひここでカフェ休憩はいかがでしょうか。
正面入口すぐ横がカフェの入り口で、2階へあがると席へ案内してもらえますよ。
内部もガウディらしさ全開!天井の曲線美が美しいです。
スイーツもコーヒーもおいしく、個人的にとってもおすすめの訪問方法です♪
カサ・バトリョ
ガウディ建築のうち、サグラダ・ファミリアの次によかったのが、カサ・バトリョ。カサ・ミラから徒歩5分ほどなのでぜひ同日にセットで訪れるのがおすすめです。
ここは外観がとてもユニークなので「外観だけ写真を撮っておしまい」という方も多いのですが、実は内部にこそガウディらしさが詰まっています。
カサ・バトリョは、大富豪ジュゼップ・バトリョ一家のためにガウディが改築した建物で、ガイコツを思わせるバルコニーから「骨の家」とも呼ばれています。それに対して、内部は海底世界をイメージさせる美しさというギャップがおもしろいんです。
よく見ると柱には魚のうろこのようなデザインがされていて、細部を見れば見るほど感じるガウディらしいユニークさ。
建物中央の吹き抜け部分は、光が自然に取り入れられるデザインになっています。
ガラスやタイルのデザイン・色味が凝りに凝っていて、まるで海底世界にいるかのよう。
テラスだって見逃せませんよ。注目は、ガウディ建築によく使われるモザイクタイル。
カラフルな美しさに目を奪われますが、実はこの原材料、地元の企業から譲り受けた廃棄物なんだとか。ガウディ建築はなんとサステイナブル建築でもある、というのはあまり知られていないのではないでしょうか。
お土産屋さんにはかわいいものが勢ぞろい。最後まで目が離せないカサ・バトリョなのでした。
「魔法を使ってつくられた宮殿」グラナダのアルハンブラ
約800年間イスラム王朝が治めてきた、スペイン南部のアンダルシア地方。特にグラナダは、スペイン最後のイスラム王朝「ナスル朝」の首都として栄えたため、今でもイスラムの影響が色濃く残る街です。
1984年に「グラナダのアルハンブラ、ヘネラリーフェ、アルバイシン地区」として、世界遺産にも登録されました。
中でも「アルハンブラ宮殿」はイスラム建築の最高峰として知られ、イスラム建築好きの私のバケットリストにも長い間入っていた場所です。
とても広い敷地内ですが、なんといっても見どころは「ナスル朝宮殿」。
この柱廊が立ち並ぶ、息を呑むほど美しい光景は、見たことがある方も多いでしょう。
これが見られるのもここナスル朝宮殿です。「ここを見られただけでも来た甲斐があった!」と大感動したのを覚えています。
いたるところにこれでもか!と細かい細工、装飾が施されていて、「本当にすごい」のひと言。
「王様は魔法を使って宮殿を完成させたんだ!」と、当時の人々を感嘆させたという伝説も残っているというのも納得の美しさなのでした。
ちなみに、アルハンブラ宮殿内にあるホテル滞在できるのはご存じでしょうか?
15世紀に建てられた修道院跡を利用した「パラドール・デ・グラナダ」という名門ホテルが、なんと敷地内にあるのです。宿泊者しか入れないエリアもあるので、のんびりと散策しながら当時の王族気分を味わってみるものいいですね。
世界で3番目に大きい大聖堂「セビリア大聖堂」
バチカンのサンピエトロ大聖堂、ロンドンのセントポール大聖堂に次ぐ大きさの「セビリア大聖堂(セビーリャ、セヴィージャという表記もあり)」。1987年「セビリアの大聖堂、アルカサルとインディアス古文書館」として世界遺産に登録されました。
個人的にセビリアはスペインで一番好きな街なので、スペイン旅行をお考えの方にはとにもかくにもセビリアを心から推したいです。
そしてこの大聖堂は、まさにそんなセビリアの中心地にあります。もともとイスラム教のモスク跡だったため、いくつかイスラム建築の名残が見られるのもおもしろい。
街のシンボルでもある「ヒラルダの塔」もモスクのミナレットを再利用しています。よく見るとアラベスク模様が残っているんですよ。
イスラム建築の特徴である中庭には、オレンジの木がたくさん植えられていて、とってもいい香りがしていました。
ここから上に眺める大聖堂とヒラルダの塔が、個人的に大好きな風景です。
ちなみに内部には、クリストファー・コロンブスのお墓も。
また聖書の場面を1000体以上もの彫刻で表現したゴールドに輝く祭壇があるなど、内部にもみどころがたくさんあります。ぜひ時間をとってのんびり見物してみてくださいね。
ロマンティックな古都トレド
1986年世界遺産に登録された「古都トレド」。スペインの首都マドリードから電車で30分とアクセス抜群で、日帰り旅にもぴったりのロケーションです。
「もし、1日しかスペインにいられないのなら、迷わずトレドへ行け」という格言のあるトレド。
まるで中世にタイムスリップしたかのような、ロマンティックな街並みが本当に素敵です。
どの路地も、小道も、絵葉書のような美しさ。こういう街は、行き先を決めずにブラブラ散策するのが一番。自分だけのとっておきの風景を探してみてくださいね。
時間に余裕がある方は、少し足を延ばして街全体を見渡せるビューポイントまで行きましょう♪
「ミラドール・デル・バジェ展望台」からの景色は、本当にため息もの。トレドは、「大都市よりも、ヨーロッパのかわいくて古い街並みが好き」という方に、心からおすすめしたい街なのです。
コルドバ歴史地区
スペイン南部アンダルシア地方にあるコルドバ。シマシマ模様のアーチが有名な「メスキータ」や、真っ白な壁とカラフルな花のコントラストが美しいユダヤ人街など、見どころがギュッと詰まった街です。
イスラム教・キリスト教・ユダヤ教それぞれの影響がミックスされた街並みは、1984年に「コルドバ歴史地区」として世界遺産に登録されました。
まずはこちらの「メスキータ」。スペイン語で「モスク」という意味ですが、れっきとしたキリスト教の大聖堂です。
長い歴史の中で、イスラム・キリスト教勢力の支配図が何度も変わったコルドバらしい、いわば“歴史の証人”なのです。
足を踏み入れた瞬間、目に飛び込んでくるのがこの「円柱の森」。1300本もの柱が365個のアーチを支えている姿は、まさに圧巻!
中を歩いて行くほどに、イスラム教とキリスト教の建築が見事に融合されていることに気づきます。
長い年月が流れた今も、このように2つの文化・宗教が融合された姿が残っていること。そしてそれが世界遺産として後世に残されていくことに、感銘を受けるのです。
コルドバ歴史地区には、ユダヤ人街があります。中でも有名なのが「花の小怪」という路地。
真っ白な壁がカラフルな花の植木鉢で飾られていて、小さいエリアながらずっと滞在したくなるような雰囲気でした。
コルドバでは毎年5月にパティオ祭りなるものが開催され、家々のパティオの美しさを競うコンテストが行われるそう。
この時期はたくさんの家のパティオが一般に開放され、タパスがサービスされたり、フラメンコショーが行われたり。ぜひコルドバにはこの時期に訪れてみたいものですね。
世界遺産から歴史とカルチャーを感じよう
さまざまな基準をクリアして登録された世界遺産の数々。その地域の歴史やカルチャーを肌で感じられるのも大きな魅力ですよね。
今度の休暇には、世界遺産を目的とした旅に出てみるのはいかがでしょうか。
All photos by Yu Villegas