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サードパーティーの意味とは? 業界別の使い方についてわかりやすく解説

  • 2024.2.26
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ITの分野などを中心に、ビジネスシーンでもよく耳にする「サードパーティー」という言葉。業界別の意味や、具体的な使い方を、現役フリーアナウンサーの新保友映が解説します。
ITの分野などを中心に、ビジネスシーンでもよく耳にする「サードパーティー」という言葉。業界別の意味や、具体的な使い方を、現役フリーアナウンサーの新保友映が解説します。

主にITの分野を中心に、ビジネスシーンでもよく耳にする「サードパーティー」という言葉。皆さんは正しい意味をご存じですか。「サードパーティー」は、業界によって意味するものが微妙に異なる言葉でもあります。今回は「サードパーティー」の意味を、業界別の具体的な使い方とともに、現役フリーアナウンサーの新保友映が解説します。

サードパーティー(3rdParty・thirdparty)の意味とは

まずは「サードパーティー」の一般的な意味を説明します。

・サードパーティの意味は「第三者」
「サードパーティー」とは当事者ではない第三者や、第三の派閥を意味します。そして、サードパーティーに対応する言葉として、「ファーストパーティー」「セカンドパーティー」があります。これらの意味は業界によって微妙に変わりますが、多くは、メインとなる製品を製造したりサービスを提供したりするメーカーをファーストパーティー、その製品やサービスを利用する消費者をセカンドパーティーと呼び、これに対して、ファーストパーティーの提供する製品やサービスと互換性のある周辺機器や関連するサービスを提供するのがサードパーティーとされています。業界ごとの詳しい意味については後述します。

・語源は英語のthirdparty(3rdparty)
「サードパーティー」の語源は、英語の「thirdparty(3rdparty)」です。「party」という単語には、「集団」や「党派」「関係者」といった意味があり、「thirdparty(3rdparty)」で「第三者」「第三党」という意味になります。

コンピューター業界におけるサードパーティーとは

「サードパーティー」または「サードパーティー製品」といった言葉が使われる業界の1つにコンピューター業界があります。

・コンピューター業界におけるサードパーティーの意味
コンピューターの業界では、パソコン本体やOSを製造するメーカーをファーストパーティーと呼びます。そして、パソコンを使用する消費者がセカンドパーティー、ファーストパーティー以外で、パソコンやOSに対応するソフトや周辺機器を製造するメーカーがサードパーティーとなります。周辺機器や関連ソフトの中でもファーストパーティーのメーカーが製造する物は純正品とも呼ばれますが、サードパーティーが提供する製品は純正品に比べて価格が安く、バリエーションも豊富であることが多いのも特徴の1つです。

・コンピューター業界におけるサードパーティーの使い方・例文
コンピューター業界におけるサードパーティーの具体的な使い方は以下の通りです。

【例文】「経費削減のため、マウスやキーボードはサードパーティー製品を購入してください」

ゲーム業界におけるサードパーティーとは

ゲームの業界において「サードパーティー」という場合、ゲーム機に対応するソフトを開発する第三の会社を指します。

・ゲーム業界におけるサードパーティーの意味
ゲーム業界におけるファーストパーティーは、ゲーム機器本体を開発するメーカーです。Nintendo Switchを開発、販売する任天堂や、PlayStation(プレイステーション)を開発、販売するSONYがこれに当たります。そして、ファーストパーティーからの委託を受けて、周辺機器や対応するソフトを作るのがセカンドパーティーです。サードパーティーは、ファーストパーティーからの委託を受けず、対応するソフトなどを独自に開発するメーカーのことで、国内ではスクウェア・エニックスやコナミ、カプコンなどが有名です。

本来、ファーストパーティーのメーカーは、ほかのファーストパーティーの製品を作ることはありませんが、例外としてSEGAがあります。SEGAは、元々はセガサターンやドリームキャストなどのハードウェアを販売するファーストパーティーのメーカーでしたが、現在は他のファーストパーティーメーカーのゲーム機器に向けてソフトを開発するサードパーティーメーカーとして有名です。

・ゲーム業界におけるサードパーティーの使い方・例文
ゲーム業界における「サードパーティー」の具体的な使い方は以下の通りです。

【例文】「新作のゲーム機の発売に合わせて、サードパーティーからさまざまなソフトが発表された」

プリンター業界におけるサードパーティーとは

プリンターの分野でも「サードパーティー」という言葉は使われますが、この分野ではサードパーティーは活躍しにくいとされています。

・プリンター業界におけるサードパーティーの意味
プリンター業界において、ファーストパーティーはプリンター本体を製造するメーカー、セカンドパーティーはプリンターを使用する消費者です。ファーストパーティーの企業はプリンターに合わせてトナーやインクなど関連する消耗品を製造し、これらは「純正トナー」「純正インク」などと呼ばれています。比較的高価な純正製品に対して、プリンターと互換性のある非純正のインクやトナーを作っているのがサードパーティーです。プリンター業界では、本体を販売した後に純正の消耗品を買ってもらうことで利益を生み出すビジネスモデルが取られていることから、ファーストパーティーは純正製品の使用を推奨していて、サードパーティー製品は活躍しにくくなっています。

・プリンター業界におけるサードパーティーの使い方・例文
プリンター業界におけるサードパーティーの具体的な使い方は以下の通りです。

【例文】「サードパーティー製の使用済みインクカートリッジは回収の対象外です」

物流業界におけるサードパーティーとは

物流業界においてサードパーティーという場合、近年の重要なキーワードとして「3PL(3rdPartyLogistics)」があげられます。ここでは「3PL」とは何かも含め、物流業界におけるサードパーティーについて解説します。

・物流業界におけるサードパーティーの意味
まず、物流業界におけるファーストパーティーは発荷主、つまり出荷元のメーカーです。そして、セカンドパーティーはファーストパーティーと取引をする問屋や小売店、配送業者などを指します。通常の場合、物流はファーストパーティーとセカンドパーティーの二者間の取引のみで成立します。ここに、第三の物流専門業者がサードパーティーとして入ってくるのが「3PL」です。

もう少し詳しく解説します。メーカーは商品を生産し販売するまでの過程で、効率的な物流の仕組み(ロジスティクス)を作る必要があります。しかし、この物流の仕組みをメーカー自身で担うのは非常に煩雑で負担も大きくなります。そこで、原材料の仕入れから、生産過程での工場内での物流、出荷や返品に至るまで、全ての物流に関わる仕組みの計画・構築・管理を、第三の物流業者に一括で委託するのが「3PL」です。

少しややこしいですが、物流業界の中でもロジスティクス分野に限ると言葉の意味が変わり、メーカーが全てのロジスティクスを担うことをファーストパーティーロジスティクス、配送業者や物流業者に一部を委託することをセカンドパーティーロジスティクス、そして、全てのロジスティクスを専門業者に委託することをサードパーティーロジスティクスといいます。

・物流業界におけるサードパーティーの使い方・例文
物流業界における「サードパーティー」の具体的な使い方は以下の通りです。

【例文】「業務効率化のため3PLを導入した」

企業活動・企業戦略におけるサードパーティーとは

企業活動や企業戦略においても、「第三者」を意味する「サードパーティー」はよく使われる言葉です。

・企業活動・企業戦略におけるサードパーティーの意味
サードパーティーに関する言葉のひとつに「TPRM:サードパーティーリスクマネジメント(ThirdPartyRiskManagement)」があります。これは、自社と取引や関わりのある第三者からもたらされるリスクを想定し、管理することを意味します。ここでのサードパーティー(第三者)とは、系列会社や取引先企業、利用しているクラウドサービスなど、ビジネス上の取引のあるさまざまな関係先を含みます。近年、DXが推進される中で、それまで自社の中だけで扱っていた情報を外部の組織と共有したり、社内ネットワークに外部サービスを取り入れるような機会が増え、適切なリスク管理の重要性が注目されるようになっています。

また、「サードパーティーデータ」という言葉も使われます。これは、自社で集めたデータを「ファーストパーティーデータ」というのに対して用いられる表現で、社外の第三者から提供されたデータ、例えば国や自治体が公表したものや、調査会社が提供するデータなどを表します。社外から提供されたデータの中でも、提携先の企業などから提供されたものは「セカンドパーティーデータ」と呼び、サードパーティーデータとは分けて考えられます。また、アンケートへの回答など、企業に対して顧客側から積極的に提供されるデータの事をゼロパーティーデータと呼び、これはファーストパーティーデータの一部に含まれます。

・企業活動・企業戦略におけるサードパーティーの使い方・例文
企業活動や企業戦略における「サードパーティー」の具体的な使い方は以下の通りです。

【例文】「セキュリティ強化のためにTPRMのフレームワークを導入した」

インターネットの世界におけるサードパーティーとは

インターネットの世界では、近年「サードパーティー」の存在が注目を集めています。

・インターネットの世界におけるサードパーティーの意味
インターネットにおいて「サードパーティー」という場合、Webサイト上に広告を提供する事業者を指します。ここでのファーストパーティーはWebサイトを運営する事業者で、セカンドパーティーはWebサイトを訪れるユーザーを指します。インターネット広告はWebサイトの提供者とは別のサーバーから配信されているためこのように呼び、Webサイトそのものが持つデータを「ファーストパーティーデータ」、これに対して、広告事業者が保有するデータを「サードパーティーデータ」と呼びます。これに関連して、サードパーティーデータを利用した「サードパーティークッキー」の運用が近年注目されています。詳しくは後述します。

・インターネットの世界におけるサードパーティーの使い方・例文
インターネットにおける具体的な使い方は以下の通りです。

【例文】「サードパーティーデータをうまく活用することでユーザーに合わせたアプローチができる」

クッキーとは

インターネットに関連して、近年話題になっているのが「サードパーティークッキー(3rdPartyCookie)」です。Webサイトを開いた時に「すべてのCookieを受け入れる」ことを促されたり、「Cookieを有効にしてください」といった表示が出てきたりすることがあります。

「クッキー(Cookie)」というのは、Webサイトを閲覧した時にWebブラウザ上に保存されるユーザー情報のファイルのことです。Webサイトに訪れた回数や、閲覧したページ、訪問日時など、Webサイト上の行動履歴を記録するもので、これによって、ユーザーに合わせた広告を表示したり、Webサイト上での動きを効率化したりすることができます。クッキーは「ファーストパーティークッキー」と「サードパーティークッキー」の2種類に分けることができます。

・ファーストパーティークッキー
「ファーストパーティークッキー」というのは、訪れたWebサイトが直接発行するクッキーです。例えば、オンラインショップで買い物をするために会員登録をし、IDとパスワードを設定したとします。その情報が、オンラインショップの発行するファーストパーティークッキーとしてWebブラウザ上に保存されることで、2回目以降に訪れた際、IDなどの入力を省略してログインすることができます。

・サードパーティークッキー
一方の「サードパーティークッキー」というのは、訪問したWebサイト自体ではなく、第三者から発行されるクッキーです。第三者というのは、具体的にはWebサイト上に表示されているWeb広告の事業者などで、1つのWebサイトに限らず複数のWebサイトにまたがってユーザー情報を取得することができます。例えば、AとBという2つのWebサイトを訪問し、どちらにもC社が運営するWeb広告が掲載されていたとします。この場合、WebサイトA、Bが発行するファーストパーティークッキーと、それぞれのWebサイトを訪問した際にC社が発行するサードパーティークッキーが保存されることになります。

複数のWebサイトから横断的にユーザー情報を集めることができるサードパーティークッキーがあることによって、個人に合わせた効果的な広告などを表示することができます。オンラインショップで商品を閲覧したあと、全く関係ないWebサイトを見ている時にその商品のWeb広告が表示されるようになったという経験をしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。これはサードパーティークッキーによるものです。

・「サードパーティーのcookieを許可/ブロックする」とは?
ユーザーの知らない間に、さまざまなユーザー情報を収集するサードパーティークッキー。パーソナライズされた広告の提供を受けるというメリットもある一方、情報を取得させるかどうかユーザーがコントロールできないため、個人情報保護の観点からは懸念もあります。各Webブラウザでは設定からクッキー使用の設定ができ、サードパーティークッキーをブロックすることも可能です。また後述する通り、AppleやGoogleではサードパーティークッキーを無効にする動きも出ています。

ただ、サードパーティークッキーは必ずしも広告事業者だけが使っているものではなく、Webサイトによっては運用の利便性のために複数のドメインを使っている場合もあり、サードパーティークッキーをブロックすることで不具合が発生する可能性もありますので、注意が必要です。

・サードパーティークッキー規制について
個人情報の保護への意識が高まるなかで、サードパーティークッキーへの規制の動きも出ています。アメリカのカリフォルニア州では、消費者プライバシー法によって運用の規制があるほか、AppleやGoogleも独自の規制を設けています。このうち、AppleのWebブラウザ「Safari」では、2017年からトラッキングを防止する機能(ITP)を導入して徐々に規制を強化し、最新バージョンではサードパーティークッキーの利用は完全にブロックされているほか、ファーストパーティークッキーに関しても制限をかけています。

また、Googleは、Webブラウザ「Google Chrome」において、2024年後半に全てのユーザーのサードパーティークッキーを段階的に廃止するとしていて、2024年1月4日からは、全世界のユーザーの1%を対象に、サードパーティークッキーへのアクセスをデフォルトで制限するテストを実施しています。複数のWebサイトから横断的にユーザー情報を収集するサードパーティークッキーは、ユーザーに合わせたサービスを提供できるというメリットもある一方で、個人情報保護の観点から今後一層、慎重な運用が求められます。

まとめ

「サードパーティー」は、一般的には「第三者」という意味で使われます。ビジネスにおいて、自社と取引先や顧客以外の、第三の立場から関わるもののことをこのように呼びます。サードパーティーと対応する形で、「ファーストパーティー」「セカンドパーティー」といった言葉もありますが、業界によって意味するところはさまざまですので、この機会に、各業界でどのように使われているか確認してみてください。

■執筆者プロフィール
新保 友映(しんぼ ともえ)
山口県岩国市出身。青山学院大学卒業後、2003年にアナウンサーとしてニッポン放送に入社。『オールナイトニッポンGOLD』のパーソナリティをはじめ、『ニッポン放送ショウアップナイター』やニュース情報番組、音楽番組など担当。2018年ニッポン放送退社後はフリーアナウンサーとして、ラジオにとどまらず、各種司会、トークショーMC、YouTube、Podcast、話し方講師など幅広く活動。科学でいじめのない世界をつくる「BE A HEROプロジェクト」特任研究員として、子どもたちの授業や大人向け講座の講師も担当している。

文:新保 友映

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