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【素敵なおうち訪問】 店舗と住居が有機的につながる、風通しのいい空間づくり (大嶋さん宅後編)

  • 2024.2.24

素敵なおうちを訪ね、家づくりにおいてこだわったところやお気に入りのポイントなどをお聞きする連載「素敵なおうち訪問」。今回訪れたお宅は、大嶋さん自身が設計した夫婦の理想の家。後編では寝室のある1階に作った美容室や、夫妻が気に入っているインテリアなどについてご紹介します。

大嶋さん宅のおうちDATA

広い土地を贅沢に使った、長方形の2階建住宅。1階は美容室と寝室と浴室、洗面所、トイレがあり、2階はキッチンとリビング、子ども部屋が二つ、広々としたロフトがあります。大きな窓とスケルトンの床で、開放感があります。

・間取り:2階建て、3LDK+店舗
・世帯人数:4人暮らし
・延床面積:116.32㎡(内美容室30.60㎡)
・築 1年未満
・設計業者:SNARK Inc.

PROFILE
大嶋励さん(建築設計事務所)、沙織さん(美容師)、息子(5歳)、娘(1歳)の4人暮らし。沙織さんは2月に「siki美容室」をオープン。

アートや雑貨が映える、シンプルな木材使い

アートや個性的なオブジェが並びます。

大嶋さん宅のベースは、塗装していない木材。シンプルな白壁と木が、個性的な雑貨やアート、違う素材やさまざまな色もすべて受け止めてくれます。

「東京のアパートでは雑貨を仕舞いこんでいましたが、やっと飾れるようになりました。建物の構造と造作した家具、集めた雑貨がなんとなく融合して、良く見えるバランスを探りました。テレビ台の扉には鉄板を使うなど、いろいろな素材を使って、遊びをプラスしています」と励さん。

ヴィンテージのデスクライトは、ちゃんと使うことができるそう。

美容室の装飾を中心に、自宅に置かれたヴィンテージのライトや植物の台などの小物は、東京・西荻窪にある古道具店「poubelle」にセレクトをお願いしているのだとか。

「実は学生時代の同級生なんです。いつか一緒に仕事をしたいと思ってお願いしました。自分が選ぶものとは少し違うものを入れたいなと思って。おまかせして選んでもらったものは、すべてお気に入りです」と励さん。

2階にある植物を置いた台も、選んでもらったもの。

自宅から続く、自然光が気持ちよく入る美容室

バスルームや寝室のある1階に、住居と扉一枚を隔てて作ったのが、沙織さんの美容室。大きな窓から光が差し込む、居心地のいい空間です。

「東京ではフリーランスで美容師をしていましたが、念願の美容室をオープンしました。小さなお子さんのいる人にも来てほしいので、プライベートサロンのような空間にしてもらいました」と沙織さん。

「ちょうど1階の半分くらいの広さ。本当は住居との間にある扉は籐にする予定だったのですが、使ってみたかったジュートの扉に。結果的に籐よりにおいが自宅の方に行かないのでよかったです。これだけ土地に余裕があると、住宅に店舗が併設されているというわかりやすい造りが多いですが、あえて家と美容室が別空間にならないようにしました。1階の天井はサッシの規格サイズに合わせているので低めなのですが、逆に落ち着ける空間になったかなと思います」と励さん。

ところどころに置かれた、ピンクのオブジェがアクセントに。

病院で使われていた台に天板をつけた作業台やスツールも、シンプルな空間になじみます。

美容室から自宅を見たところ。美容室の営業中は扉を閉めて、空間を分けます。

広い敷地だからこその、抜け感を楽しむ

2階の子ども部屋からの眺め。

キッチンに作ったシンプルなフレームの飾り棚には、お気に入りの器を並べて。

日中は大きな窓のカーテンはせず、借景を楽しんでいるという大嶋さん夫妻。

「近くに建物が立っていないので、音を気にせずに暮らせるだけでなく、景色も楽しめてありがたいですね。隣の畑が麦の季節は、思わず見惚れてしまうほどきれいで。窓が大きいので、光や風がよく入り、明るくて気持ちがいいです」と沙織さん。

空まで見渡せるスケルトンの床が、家全体をつなぐポイント

1階と2階をつなぐ階段にはアクリル材を使用し、隙間から見通すことができるスケルトン仕様に。

「1階は天井が低いので、ふさいでしまうとすごく狭く見えてしまいます。2階は天井が高くて広いので、光を取り入れて、建物全体で雰囲気を感じられるよう、繋がっているようにと考えました。どこにいても、地面から空まで見渡せるのは贅沢。寝室で寝ながら、2階の床のルーバー越しに空が見えるのが最高です」と励さん。

沙織さんも、家事をしながら1階の寝室で寝ているお子さんたちの様子が見えるのが安心なのだとか。

「最初はアクリルを入れる予定ではなかったので、子どもも小さいし、おもちゃとか何かをこぼしたらすべて下にいってしまうのが心配で、スケルトンの床に反対していました。でもアクリルを入れることになったので、全然大丈夫。階段も最初は少し怖かったのですが(笑)、子どももすぐに慣れました」

地元だから叶えられた、建築家の理想の住まい

周りへの音を気にせず、子どもたちが走ったり遊んだりできる一軒家の暮らしは、とても気に入っているという沙織さん。

「手狭になったとき、都内で広い家に引っ越しすることも考えましたが、新築は難しいので、群馬に帰って新築の家を建てるのがいいなと思いました。参考にしたのは、ドイツの建築家ミース・ファン・デル・ローエなどのシンプルな空間事例。マンションのリノベーションより、一軒家の方がやりがいが感じられて。おかげでやりたかったことをやり尽くせた気がします」と励さん。

実は家づくりにも、美容室づくりにも、ほとんど何も要望を出さなかったという沙織さん。使い勝手も満足しているのだそう。

「夫は建築家だし、信頼して委ねていました。それに自分の家を建てるのは一生に一度のこと。だから好きに作った方がいいんじゃないかと思って。子どもが小さいので危険なところがないようにというのは言いましたが、それも全然大丈夫でした。

唯一、使いたいコンロがあったのですがサイズ的に合わなくて。なので、もうすべておまかせしました。設計時にある程度、ここに何を入れるなど計画して、確認しながら作ってくれたので、収納もしやすいです」と沙織さん。

今後は、まだ手付かずの外構に着手したいと話す励さん。敷地内に小屋を建てる予定なのだそう。

「洗面所に合う引き出しがまだ見つからなくて、収納がないので、これからの課題ですね。少しずつ暮らしをアップデートしていくことが、心地よさに繋がっていけたらいいなと思います」

励さんの理想を実現した夢の住まいは、建築の知識を最大限に生かした、家族の環境の変化に対応できる風通しのいい家でした。

photograph:Mari Yoshioka edit & text : Mayumi Akagi illustration(間取り):Kayo Yamaguchi
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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