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『虎に翼』出演の“謎美女”に注目集まる…33歳・バイリンガル女優の「美しさだけじゃない魅力」

  • 2024.5.10
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どんなに目標を定めても、そのために努力をしても、“女性だから”という理由だけで泣き寝入りしなければならない時代があった。連続テレビ小説『虎に翼』で描かれるのは、弱い立場にありながらも決して諦めない、人間の強さ。ハ・ヨンス演じる崔香淑も、自分のため、兄のため、そして仲間のために行動した一人だった。

応援したくなる香淑の魅力

『虎に翼』の主人公・猪爪寅子(伊藤沙莉)は、弁護士になるため明律大学の女子部に通っている。女子部の仲間には、華族令嬢の桜川涼子(桜井ユキ)や、男装している山田よね(土居志央梨)、弁護士の夫と三人の子どもを持つ大庭梅子(平岩紙)など、生育環境や立場が異なる者たちが集まっている。

兄の勧めで朝鮮から日本に留学し、明律大学女子部に入って弁護士になるための勉強をしている香淑も、寅子たちの大事な仲間の一人。

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(C)NHK

最初は皆の陰からひっそりと様子をうかがっていた香淑だが、寅子や涼子たちとやりとりし、ともに時間を過ごすうちに、彼女の芯の通った価値観が透けて見えてくる。女子部から高等試験の合格者が出なければ、存続も危うい事態となったときも、自ら大学に直談判し「来年こそは受かってみせます」と頭を下げてみせた。

そんな香淑だが、兄が思想犯の容疑をかけられ、特高に連行されてしまう。妹である香淑にも手が及んでおり、このままでは日本で高等試験に受かり、弁護士になるのは厳しい状況だ。

しかし、香淑はそれを承知のうえで、女子部を存続させるため、女子部のみんなのために勉強を頑張ってきたのだった。

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(C)NHK

大学に頭を下げたのも、自分とは直接関係のない高等試験のために勉強に精を出したのも、すべてはともに頑張ってきた寅子たちのため。利他的な精神に満ちた香淑の行動は、自己犠牲に思えてしまうほど健気に映った。

最後に寅子たちと海へ行き、思い出をつくってから母国へ帰った香淑。どうかこれ以上、彼女の夢が、出自や生育環境で絶たれることがないよう祈りたい。

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(C)NHK

香淑ロスを癒す注目作『リッチマン』『愛の旋律』

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写真:アフロ

早くも香淑ロスに陥っている視聴者のため、配信サービスですぐに観られるハ・ヨンスの出演作をご紹介したい。『リッチマン、プアウーマン』(2012/フジテレビ系列)の韓国版リメイク作である『リッチマン』(2018)と、映画『愛の旋律』(2019)だ。

『リッチマン、プアウーマン』では石原さとみが演じた夏井真琴を、『リッチマン』ではハ・ヨンスがキム・ボラとして演じている。30社近く就職試験に落ちまくっている就活生として登場する点は変わらないが、比較的、真琴のほうが自己卑下する傾向が強い。キム・ボラは「宇宙最高ボラ!」と自分で自分を鼓舞するシーンが多々あり、前向きな印象がある。

映画『愛の旋律』では、工場で働く歌手志望の女性・ローズを演じているハ・ヨンス。レコード会社にスカウトされ、日夜レッスンを積み、有名歌手への道を歩もうとする。しかし、想定外の妊娠が発覚し、夢を絶たれた彼女はシングルマザーとして人生の舵を切り直す。

平気で残業や休日出勤を要求し、従業員を駒としてしか見ていない工場長に真っ向から立ち向かう様は、『虎に翼』の香淑が大学の権威者たちへ直談判した姿とオーバーラップする。弱い立場だからといって卑屈にならず、当然の権利を得るために毅然と背筋を正す居住まいは、間違いなくハ・ヨンスの女優としての魅力につながっている。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_