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TBS『アンチヒーロー』から朝ドラまで……『岩田剛典』が"ナゾの男"役に抜擢されまくる理由

  • 2024.4.28
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クリーンな王子様イメージからのシフト

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(C)SANKEI

LDH所属のEXILEといえば、日に焼けた屈強な男性たちがビーチで日差しを浴びながらレモンサワーを飲んでいるイメージが、一般層には多いはず。そんななか、岩田剛典が​​三代目 J SOUL BROTHERSに加入した2010〜2011年頃、通称・岩ちゃん旋風とも呼べる一大ブームが巻き起こった。

その優しげな王子様的ルックスはもちろん、慶應義塾大学卒という経歴も相まって、これまでのEXILEのイメージに新たな風を吹き込んだのが、岩田剛典の存在。彼をきっかけに新規のファンも急増し、並行して俳優活動をスタートさせたことで人気は盤石なものとなった。

ドラマ『ディア・シスター』(2014/フジテレビ系列)の櫻庭永人(ハチ)、映画『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』(2016)の日下部樹、そして『パーフェクトワールド 君といる奇跡』(2018)の鮎川樹など、彼のパブリックイメージに沿ったクリーンな役柄をメインに、俳優としても広く知られることになった岩田剛典。

しかし、2020年あたりから様子が変わってくる

ドラマ『砂の塔』(2016)の生方航平、『一橋桐子の犯罪日記』(2022)の久遠樹、映画『AI崩壊』(2020)の桜庭誠や『死刑にいたる病』(2022)の金山一輝など、悪役寄りの謎の男や、前科持ちの役が増えてきたのだ。

極め付けは『あなたがしてくれなくても』の新名誠である。

奈緒が演じる吉野みちの上司という位置付けで、当初は良い職場関係を築いていた。しかし、パートナーと上手くいっていない悩みをお互いに吐露した瞬間に、状況が変わる。みちと誠は惹かれあっていき、世間で言う“不倫関係”になっていく。

デビュー当初は、知的でクリーンな王子様キャラだった岩田剛典が、まさか不倫の相手役をすることになるとは。驚く反面、その進路変更は決して彼のイメージダウンには繋がっていない。むしろ、アンニュイな佇まいも絵になり、映像として映えることが周知され、さまざまな作品で求められる結果になったのではないだろうか。

なぜ岩田剛典には“謎の男”が似合うのか?

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日曜劇場『アンチヒーロー』第2話より (C)TBS

2024年春クールでは、日曜劇場『アンチヒーロー』ならびに連続テレビ小説『虎に翼』に出演中の岩田剛典。前者では、自身が勤める工場の社長を殺害した容疑で捕まった男・緋山啓太を、後者では、主人公・寅子(伊藤沙莉)が通う大学で出会う男子学生・花岡悟を演じる。

緋山は、ビジュアルも言動も少し粗雑で、裁判中も口数が少ない。しかし、弁護士である主人公・明墨正樹(長谷川博己)の手腕によって「緋山は真犯人ではない」と思わせられる方向に、物語が展開していく。

彼は殺人犯なのか、それとも、無実なのか。緋山に無罪判決が出たあとに、明墨法律事務所の弁護士・赤峰柊斗(北村匠海)は、彼が真犯人であることが確信できる決定的な現場を見てしまう。このまま真実はパンドラの箱に入れられてしまうのか。岩田剛典は、セリフが少なく、表情やちょっとした所作で感情を示さなければならない難役を、淡々とこなしてみせた

打って変わり、『虎に翼』の花岡は癖がありつつも、憎みきれないキャラクターだ。当初は好青年を装っていたが、実は少し女性を下に見ている偏見の持ち主だった。とある一件で、寅子とぶつかり合ってしまうが、最後には素直に自らの非を認める様子が、チャーミングに描かれた。

デビュー当時の、知的な王子様イメージとは少し異なる“謎の男”路線を進みつつある岩田剛典。20代の頃とはまた違う、重さと翳りを感じる魅力は、今後さらに求められ続けるだろう。



番組概要:TBS系 日曜劇場『アンチヒーロー』 毎週日曜よる9時、NHK連続テレビ小説『虎に翼』 毎週月曜日から金曜日あさ8時

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_