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新ドラマ『くるり〜誰が私と恋をした?〜』から学ぶ「仕事を選ぶ基準」 “記憶喪失のOL”が選んだ幸せとは

  • 2024.4.20

記憶喪失になってしまった緒方まこと(生見愛瑠)が、男性用の指輪を手がかりに「自分と恋をしていた相手」を探す、火曜22時放送のTBS系列ドラマ『くるり〜誰が私と恋をした?〜』。
ただのラブコメかと思いきや、なくした記憶と向き合いながら自身のパーソナリティを深掘りする主人公の懸命な姿に、思わず共感してしまう。4月16日に放送された第2話では、転職活動をするまことが「仕事を選ぶ基準」について考える描写がある。

自分を自分たらしめるものは何?

「私、過去もないけど、未来もない……」

記憶喪失になってしまったまことは、ふたたび元いた会社で働き始めるも、同僚の仕事の仕方や会社の対応に疑問を感じて退職を決意。転職活動に勤しむが、自分の長所や短所、特技、やりたいことさえ忘れてしまっている彼女にとって、その前途は多難である。まさに、過去も未来も見失っている状態だ。

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火曜ドラマ『くるり〜誰が私と恋をした?〜』第2話より (C)TBS

朝日(神尾楓珠)とともに、カラオケやボルダリング、料理などに挑戦してみるものの、何が「好き」で「得意」なのかがわからない。そもそも、自分を自分たらしめるものは何なのか。記憶なのか、経験や知識なのか、それとも趣味や特技なのか?

まことの心中は、出口のない、暗いトンネルのなかを彷徨っているようなものだろう。朝日に、いまの仕事を選んだ基準を聞くと「好き・嫌いより、向き・不向き?」と返ってくる。「好きと才能は別だから。まずは己を知らないと」と堅実な朝日だが、もともとは漫画家になりたい夢があったという。

朝日は、己を知ったうえで、「好き」よりも「得意」を基準に仕事を選んだということだろう。いまの仕事に大きな不満はなさそうだが、かといってモチベーションが高いようにも見えない。

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火曜ドラマ『くるり〜誰が私と恋をした?〜』第2話より (C)TBS

世間には「好きなものを仕事にすれば楽しく、幸せになれる」という考えと、「好きなものを仕事にするとつらくなる。やっていて苦ではない仕事を選ぶのがいい」という、反する二つの考えがある。果たして、より幸せになれるのは、どちらなのか?

「好き」or「得意」?幸せな仕事の選び方は

朝日の紹介でまことは、とある醤油メーカーへの就職が決まりかけていた。同時並行で、自称・運命の相手である律(宮世琉弥)からも、仕事の誘いを受けている。

律から「自分の人生を幸せにするのが、いちばん大事」「そのためにどう働くかで、仕事は決めたらいい」と諭された結果、まことは醤油メーカーへの就職も、律からの誘いも辞退した。そして、彼女にとってお守りのような存在となりつつある、例の男性用の指輪を製作してくれたショップに足を向けたのだ。

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火曜ドラマ『くるり〜誰が私と恋をした?〜』第2話より (C)TBS

まことが自分自身について知ったことは、会社では控えめで慎重で、社交辞令を上手くつかう人間だったこと。高いところが苦手で、正直者で、花はバラやマーガレットくらいしか知らないこと。

記憶もなければ、長所も短所も、好きなことも嫌いなことも、やりたいこともハッキリとはわからない。そんな彼女は、音が大きい工事現場を怖がる6歳の女の子のために、たくさんの花で通り道を飾ってあげる、花屋の元カレ・公太郎(瀬戸康史)の優しさに触れた。

自らの工夫で、人を喜ばせる仕事がしたい。「笑った顔が見たい」と誰かが願った気持ちを、形にする仕事がしたい。そんな動機でアクセサリーショップを選んだまことは、まだ自分の「好き」や「得意」が何なのか、確信できていないはずだ。

それでもきっと、この仕事を選んだ瞬間の、彼女自身の気持ちは褪せない。仕事を選ぶ基準が「好き」でも「得意」でも、目指したい場所や果たしたい目的について、自分なりに考えた経路があるなら、その過程を拠り所にしてもいいはずだ。

自分を形作る要素とは何なのか。仕事はどんな基準で選べばいいのか。人生を「幸せ」にするための選択について、立ち止まって考えてみたくなる回だった。



番組概要:TBS系 火曜ドラマ『くるり〜誰が私と恋をした?〜』 毎週火曜よる10時

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_