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クドカンには全てお見通し?『不適切にもほどがある!』ドラマそのものが仕組まれた風刺だった

  • 2024.3.28

『不適切にもほどがある!』8話で描写された不倫アナウンサーの件において、該当する番組を観ていない層がただの想像&思い込みで誹謗中傷の波を広げた現象について、おそらく脚本家・宮藤官九郎は「このドラマ自体、まともに観ないで非難する層が出てくること」を見越していたのではないだろうか。このドラマそのものが、令和における物の見方や価値観を風刺したドラマなのかもしれない。

「見ていないけれど批判する」層に対する痛烈な風刺

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金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』第8話より (C)TBS

2022年ユーキャン新語・流行語大賞にランクインした「知らんけど」。関西弁の一つであり、持論を展開した末尾につけることで「いや、知らんのかい!」とツッコミを誘発するボケのように扱われている(関西圏では誤用を憂う見方もある)。

『不適切にもほどがある!』8話において、順風満帆にアナウンサー街道を走ってきたものの、一度の不倫でキャリアを台無しにしてしまった男性アナが登場。復帰の一発目として朝の情報番組の一コーナーに登場するも、実際にはその番組を観ていない層が、SNS上で誹謗中傷合戦を繰り広げる顛末が描かれた。

まさに「〜〜〜だと思う、知らんけど」「〜〜〜だよね、見てないけど」の応酬。利害関係のない第三者が、安全なところから石を投げることの滑稽さについて、痛烈に風刺した回となった。

一歩も二歩も先を行っている脚本家・クドカンの視点

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金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』第8話より (C)TBS

主人公・市郎(阿部サダヲ)が昭和から令和へタイムスリップし、時代錯誤な考え方で破天荒な言動をする様が話題になっているドラマ『不適切にもほどがある!』。脚本を担当するのは名作製造機と称しても異論は出ない宮藤官九郎だ。

約40年の間の変化、実際にこの時代を生きてきた人間が感じているギャップを、市郎というキャラクターに乗せて物語へと昇華し、世間の反応をうかがっているようなドラマである。

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金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』第8話より (C)TBS

8話では、先述した不倫アナウンサーの件に加え、実は何年も前に不倫してしまった経験のある番組プロデューサー・栗田(山本耕史)の過去の過ちを、二組の友人夫婦が上から目線で断罪するようなシーンも。
直接は見聞きしていない、かつ利害関係もない他者が、まさに鬼の首を取ったように批判する現象は「一億総コメンテーター時代」とも言えるだろう。

おそらくこのドラマ自体、一度も観たことがないにも関わらず「SNS上で話題だから」という理由だけで言及している「(仮)視聴者」もいるはずだ。一歩も二歩も先を行き、世の中を俯瞰しているような脚本家・クドカンによって、そういった人々の心理もおそらく読まれている。

このドラマを褒めれば褒めるほど、また、問題だ! と騒げば騒ぐほど、クドカンの手の内で転がされている証拠になってしまうのかもしれない。



番組概要:TBS系 金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』 毎週金曜よる10時

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_