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『自宅前で待ち伏せ』や『頭ナデナデ』…これって愛?モラハラ?『不適切にもほどがある!』

  • 2024.3.25

昭和では許されていたことが、令和では厳しく批判される。同じ行為なのに、時代が違うだけでバッシングの対象になる現象に、言葉にせずとも不思議に思っている層も多いのではないだろうか。3月22日に放送された『不適切にもほどがある!』9話における、市郎(阿部サダヲ)の同僚である安森(中島歩)の言動に焦点を当てる。

本来なら昭和でもアウトな行為

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金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』第9話より (C)TBS

いつの間にか、サカエ(吉田羊)と安森が恋人同士になっていた。
約束をしていないのに自宅の前で待ち伏せをしている安森。人前でハグをしたり頭を撫でてきたりお姫様抱っこをしたりする安森。酔って弾き語りをする安森。

たまたま喫茶店「SCANDAL」でサカエと鉢合わせした市郎、秋津(磯村勇斗)は、サカエ本人から安森の言動について聞く。市郎は「これが人を好きになるってことだ!」と賞賛するが、秋津は令和に生きる人間の価値観から「ただのモラハラ男のストーカー行為じゃないですか」とバッサリ。

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金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』第9話より (C)TBS

人が人を好きになる気持ちそのものは尊く、第三者に貶められていいものではない。安森がサカエに対し、待ち伏せや、人目をはばからずスキンシップをするのも、彼女のことが好きだからゆえの行動である。現にサカエ自身も「嫌ではない」と発言し、スマートフォンやSNSがない昭和なら仕方のないこと、とみなす発言もしている。

しかし、「待ち伏せ」「人前かつ同意を得ない過剰なスキンシップ」は、本来なら昭和や令和といった時代など関係なく、アウトな行為である。モラルハラスメントやストーカー行為に共通するのは、相手の意思や希望を聞かない、まったく配慮しない、自分本位な言動であること。いくら事前に約束しづらい環境だからといって、相手の都合を考えずに自宅前で待ち伏せをするのは完全なるストーカー行為であり、同意を得ないスキンシップはモラルハラスメント、もっとエスカレートすればDVにまで発展し得る行為である。

昭和では許されていたことが、令和では許されなくなった、のではない。うやむやにされ、曖昧に流されていた不快な言動に名称がつき、嫌なことには嫌だと言いやすくなっただけのことなのかもしれない。

「アップデート」=時代に合わせて考え方を変える、ではない

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金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』第9話より (C)TBS

本作『不適切にもほどがある!』や『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』(東海テレビ系列)では、昭和の価値観にまみれた世代が、令和に合った考え方を学ぶ構図が新鮮に受け取られ、「アップデート」という言葉が頻出している。

本来「アップデート」は、パソコンやスマートフォンそのもの、あるいはインストールされたソフトやアプリケーションを最新の状態にすることを指した言葉である。パソコンも人も、古いままでは動きが鈍くなってしまう。適度にアップデートすることは大切だが、「アップデート」=「時代に合わせて考え方を変える」ではないことに注意したい。

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金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』第9話より (C)TBS

上述したように、昭和では許されていた考え方や言動が、令和ではバッシングの対象になることが多々ある。セクシャルハラスメントやモラルハラスメント、9話で話題にのぼったマタニティハラスメントなどが代表例だろう。

こういったハラスメントの加害者にならないよう、知識をつけ、さまざまな立場にいる人たちの考え方を学ぶことが「アップデート」である。移りゆく時代に合わせて「今はこういう時代だから、とりあえず気をつけておこう」と付け焼き刃な態度で向き合うものではない

令和で問題となりやすい事象は、昭和でも「問題」だったのだ。ただ「問題」として認知されず、思考停止の空気に飲まれて曖昧に流されていただけである。「アップデート」「〇〇ハラスメント」といった言葉も、慣れてくれば形骸化しがちだ。何が本来の問題なのか、あらためて襟を正す必要がある。



番組概要:TBS系 金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』 毎週金曜よる10時

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_