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『ブギウギ』「欲張りなあなたを尊敬してる」仕事も家庭も両立させたい=贅沢だった時代

  • 2024.3.15

スズ子(趣里)が歌手として活動したピークの1940〜1950年代あたり、まだまだ家庭を持つ女性が仕事も両立させるのは大変な時代だった。むしろ「仕事も家庭も!」と頑張る姿は、ぜいたくで欲張りと思われていた節さえある。羽鳥(草彅剛)の妻・麻里(市川実和子)のセリフからも、その片鱗がうかがえる。

家庭も仕事も! は欲張りなのか?

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(C)NHK

1940年代、スズ子のように子どもがいて、かつバリバリと仕事もしている女性の存在は珍しかった。

スズ子の場合、伴侶である愛助(水上恒司)が亡くなってしまい、一人で娘の愛子(このか)を育てなきゃならない背景も関係しているだろう。振り返ってみれば、映画の撮影現場に愛子を連れてきて、騒動が起こった事もあった。

「仕事場に子どもを連れてくるのは非常識」「シッターやお手伝いさんを雇えばいいのに」といった声が出てくるのは、当時、仕事をしながら子育てする事がまだまだ珍しかった証拠といえるだろう。

今でいう専業主婦として、女性は家に入り、家事や育児に専念するのが当たり前とされていた時代。令和と比べると、まだまだ「子どもが小さいうちは、母親は家にいたほうがいい」と考える層も目立つ。

しかし、経済面から考えても、共働きで家事や育児も分担する(あるいはベビーシッターや家事代行を頼む)やり方が珍しくなくなってきている。

スズ子たちが生きる時代から約70年ほど経った現代、当時は「ぜいたく」「欲張り」とされていた生き方が、少しずつ主流となっている。むしろ、働きながら育児・家事をしないと到底生きていけない社会情勢だ。同じ日本でも、月日が経てばこうも立場が変わる。

子の背中を見て育つ親

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(C)NHK

第24週「ものごっついええ子や」では、成長した愛子をめぐる誘拐事件が発生。結果的には誘拐などされておらず、たまたま愛子が知り合った男の子の父親が暴走しただけで事は済んだ。

大人の事情はなんのその、誘拐未遂事件のせいで「学校帰りに遊ぼう」という約束を果たせなかった子どもたちは、お互いに謝罪し合っていた。そんな様子を見守っていたスズ子、そして刑事の高橋(内藤剛志)は「子供の背中を見てると、我々も一生懸命生きなきゃと思いますな」とひっそり襟を正す。

子どもの行く末を見守り、ときには教え諭す立場であるのが親だけれど、「親」という資格や技術を得たわけではない。子を持った瞬間から親としてのスタートが始まり、その道のりは試行錯誤の連続、初めてのことだらけ。

まさにスポンジのように知識や経験を吸収していく子どもたちを見ていると、親のほうが学ばされることも多いだろう。親子としてのシンプルな関係性を、『ブギウギ』らしく軽快に描いた週だった。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_