1. トップ
  2. 「ギャンギャンうるさくて無理」「オガワ消えろ」一般人もエゴサに悩む現代『不適切にもほどがある!』7話

「ギャンギャンうるさくて無理」「オガワ消えろ」一般人もエゴサに悩む現代『不適切にもほどがある!』7話

  • 2024.3.13

一台のスマートフォンが担う役割は、本来の電話機能に限らない。起床時のアラーム、時計、メールやSNSでの連絡、情報検索、動画視聴、音楽鑑賞、電車のICカード、各種支払い……。もはや「スマートフォンをなくした」は、まともな日常生活が送れないことと同義だ。3月8日に放送された『不適切にもほどがある!』7話では、スマートフォンやSNSにまつわる“現代の闇”にあらためて光が当たる。

初めてエゴサをした小川が感じた恐怖

約40年前からやってきた小川市郎(阿部サダヲ)にとって、スマートフォンやSNSは突然あらわれた不思議な物体。もちろん「エゴサ」「アンチ」といった言葉も通じない。
前回出演した番組「常識クイズ」でハッシュタグ検索をしてみろ、と促され、実際に小川がSNSを覗いてみると……。そこには「オガワ消えろ」「ギャンギャンうるさくて無理」など、小川を罵倒する類の発言が並んでいる。

それを見た途端、小川は「お前に俺の何がわかる!」「誰だてめえは、出てこいコラ!」と感情を荒げてしまう。すぐに平常心に戻った彼だが、これがまさに「エゴサとアンチによって起こる副作用」だ。

undefined
金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』第7話より (C)TBS

「エゴサ」「アンチ」といったものは、芸能人をはじめ、名前や顔を公にして活動している者特有の現象だと思われがちかもしれない。しかし、一億総発信時代とも言われる令和において、スマートフォンを持っていない人を探すほうが困難だ。立場や環境に関わらず、誰もがエゴサをし、誰もがアンチの攻撃対象になり得る時代である。

確かに、ほかの誰でもない自分自身が批判や攻撃の対象になっている、と思うと、それがSNS上のことであっても恐怖や不安、怒りに駆られるだろう。まるでインターネットが世界を支配しているように感じられ、もれなく全員が自分を攻撃しようとしている、と錯覚するかもしれない。

しかし、インターネットやSNSの世界は、広いようで狭い。知っている者と知らない者の差がハッキリしている
たとえば「炎上」という現象について考えてみても、人によってその規模を捉える感覚が異なる。誰もが知っている共通事項として「この前のあの炎上がさ」と話してみても、その炎上自体が認知されていないケースは珍しくない。

「デジタルタトゥー」という言葉があるように、一度「炎上」したり、「アンチ」の攻撃対象になったりしてしまうと、その痕跡はいつまでもインターネット上に残り続けてしまう。しかしその始まりは、顔も名前も知らない安全なところにいる層からの、何気ない一言なのだ。心ない中傷だとしても、そのほとんどは「みんなも言っているから良いと思った」「ただのストレス発散」といった動機から生まれていると想像できる。

実体のない「エゴサ」「アンチ」の副作用に、現代に生きる我々はどう向き合っていくべきか。この世にスマートフォンとSNSがある以上、ずっと考え続けていかねばならない問題なのかもしれない。

「あれがないと、終わるんだ……」

undefined
金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』第7話より (C)TBS

現代にやってきた純子(河合優実)は、美容師のナオキ(岡田将生)と出会い、スカイツリーに登ったり江ノ島に行ったりと、デートをする。お互いに恋人がいることを察知したうえでの、大人な関係だ。

飲食店で食事をしていた際、スマートフォンをなくしたことに気づくナオキ。会計もできず、知り合いに連絡を取ることもできない状況で「終わった……」と力をなくす彼を見て、純子は「あれがないと、終わるんだ……」と不思議そうに呟く。

undefined
金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』第7話より (C)TBS

小川と同じく約40年前に生きる純子にとって、スマートフォンはまさに魔法の道具のように感じられるだろう。一台で写真や動画も撮れるだけでなく、電車に乗ったり会計をしたりするのも、スマートフォンさえあれば難なくこなせる。
しかし、それは裏を返せば、スマートフォンなしでは日常生活が送れなくなる、ということ。便利さを集約すればするほど、影では大きな「不便」が渦巻くことになる。

大切なものは、なくして初めて気づく。スマートフォンやパソコンが壊れてしまった、手元からなくなってしまっただけで、あらゆる行動が制限される現代人は、果たして昭和の時代よりも自由になっているのだろうか?


番組概要:TBS系 金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』 毎週金曜よる10時

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_