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「顔が良いから結婚はできる」ドラマ『不適切にもほどがある!』に見る時代の変化とは

  • 2024.3.1

昭和から令和、約40年近くかけて変わってきたものはさまざま。とくにわかりやすいのは、言葉の違いかもしれない。同じ現象や物を表す言葉でも、昭和と令和では表現が異なる。2月23日に放送されたドラマ『不適切にもほどがある!』第5話にて、その片鱗が見えた。

もう「登校拒否」とは呼ばない

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金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』第5話より (C)TBS

阿部サダヲ演じる主人公・市郎が、このドラマにおける“不適切”を象徴するキャラクターだとしたら、吉田羊演じる向坂サカエが“令和の価値観”を体現するキャラクターだ。

ジェンダー問題を中心にメディアでも活躍する社会学者・サカエは、息子のキヨシ(坂元愛登)を連れて令和から昭和へやってきた人物。まだまだアップデートが進んでいない、昭和では半ば当たり前とされている言動に対し、フェミニズムの観点から厳しく律するシーンが目立つ。

第5話では、さっそく冒頭より、純子(河合優実)に対し「顔が良いから学がなくても結婚はできる」といった趣旨の発言をした教師に猛反論。ジェンダー、ルッキズムの視点から見ても問題しかない指導である。しかし、約40年前では当たり前だったのかもしれない。キヨシと同じクラスに不登校の生徒がいると知ったときも、頑なに「登校拒否」と称する担任教師に「登校拒否ではない、不登校だ」とサカエは訂正した。

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金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』第5話より (C)TBS

子どもが学校に行けない理由はさまざまあり、そのすべてが積極的に「登校を拒否している」とは断定できない。一日行けても、また行けなくなる場合もある。一概に原因が学校にあるとも言い切れず、子どもの数だけ理由がある。不登校は、デリケートな問題だ。
だからこそ、「あの子は登校拒否だから」と一括りにレッテルを貼ってしまっては、解決するものも解決しない。そもそも「学校に行けるようになる」が唯一で最善の解決策とも言えない。

本編でキヨシも言っているように、SNSやサブスク、フリースクールがあれば気も紛れるかもしれないが、どれも昭和にはないものだ。一人ひとり、悩みや問題を抱えた子どもたちと向き合うには、些細な「言葉の扱い方」から意識を変えていく必要がある。このドラマにおけるサカエの存在は、本質的な問題はどこにあるか、と考えるきっかけを与えてくれる。

どれくらい知っている? もう令和では使わない言葉

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金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』第5話より (C)TBS

「不登校→登校拒否」以外にも、令和ではもう使われなくなった呼び名がたくさんある。ほんの一例だが、下記に挙げる。

  • 看護婦→看護師
  • 保母→保育士
  • スチュワーデス→キャビンアテンダント
  • 肌色→うすだいだい、ペールオレンジ
  • OL→女性社員
  • 痴呆→認知症
  • レディース&ジェントルマン→ハロー、エヴリワン(オール・パッセンジャーズ)

どれも、無意識な差別が滲み出ていた言葉たちが、よりフラットな視点で置き換えられた例に見える。「差別は無知によって生まれる」とよく言われるように、悪意がなくとも差別と捉えられてしまうことがある。

このように、言葉の使い方から見直していくことは、無意識や無知から生まれる差別をなくしていく一助となるのではないか。「〇〇ハラ」という言葉に表されているように、さまざまなハラスメントがあって生きづらい、とする見方もある現代だが、少々窮屈なくらいに意識を正さねばならないタイミングがきたのだ、と言えなくもない。


番組概要:TBS系 金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』 毎週金曜よる10時

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_