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サッカー知らずの長女が推すサッカー漫画『ブルーロック』。父親的には「不適切にもほどがある!」と思いながらも…ハマッてしまった、その魅力とは

  • 2024.2.21

「”ガチ勢”が多いね」長女が周りを見てつぶやく。「何それ?」初耳なので聞き返す。

「自分の『推し』をとことん推しまくる、半端ない人たちのこと」

ここは、札幌で開かれている、サッカー漫画『ブルーロック』の原画展。
メインの客層は、10代後半から30代前半とおぼしき女性たち。関連グッズの買い方がまさに半端じゃない。中国人顔負けの爆買いだ。うっすら聞こえてくるトークから察するに、何回も来ているリピーターのよう。確かに“ガチ”だ。

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「ブルーロック展」の入り口

4月から中学生になる長女たってのリクエストで、この原画展にやってきた。ちなみに、長女はサッカーのルールを全く知らない。メッシやロナウドも知らない。
それでいて、サッカー漫画好きとはこれ如何に?

「“ブルロ”のグッズ、何がいいかな?」長女は屈託のない笑みを浮かべた。

最も熱く、最もイカれたサッカー漫画『ブルーロック』(講談社)

「世界一のエゴイストでなければ、世界一のストライカーにはなれない」
(by絵心甚八(ルビで「えご じんぱち」)※『ブルーロック』1巻1話より引用)

日本をW杯優勝に導く世界一のストライカーを創る壮大な実験。その名も「ブルーロック(青い監獄)」プロジェクト。ハイテクトレーニング施設・ブルーロックに集められた300人の才能あふれる高校生FW(フォワード)が、互いのエゴイズムをぶつけ合う。

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「ブルーロック展」札幌会場に展示されている黄金のトロフィー

情け容赦無くふるいにかけられ、次々に脱落する若者たち。デスゲームさながら、負けたら終わりの緊張感あふれるストーリーだ。
「全員攻撃得意なフォワードって、守備崩壊でしょ」と突っ込みたくなる作品だが、圧倒的な勢いでそこを押し切り、有無を言わせず読者を引っ張っていく。

自分が少年時代に愛読した「キャプテン翼」とは真逆の世界観。「ボールは友達」がモットーだった翼くん、岬くんら仲間との絆を大切にしていたな。日向くんのタイガーショットもすごかったけど。

累計発行部数は3,000万部超。アニメ化され、4月にはスピンオフ版が全国の映画館で上映される大人気漫画だ。

良い子の皆さんは真似しないように!?

「ボケ」「カス」は当たり前。試合中の登場人物たちのセリフは、なかなか刺激的な単語のオンパレード。その場で自分が言われたら、間違いなく心が複雑骨折する。
長女は「クラスの男子の言葉遣いはもっと汚い」と、大して気にしていない。それはそれで問題ですが。
実在する選手や監督を批判し、皮肉るシーンもあり、ネット上では賛否両論だ。

一方で、グッとくる名ゼリフの数々も。

「過去なんてどーでもいい!俺が見たいのはお前の“今”だ」
(by潔世一(ルビで「いさぎ よいち」)※『ブルーロック』3巻16話より引用)
「正しい選択をするんじゃなくて、選んだ道を正解にするんだ」
(by蜂楽廻(ルビでばちら めぐる)※『ブルーロック』18巻154話より引用)

長女の推しは…“潔い”主人公

絶大な人気を誇る一番の理由は、熱量の高い個性豊かなキャラクターたちだ。一人一人のワケありな過去、サッカーにかける強い思いや葛藤を丁寧に描いている。長女によると「イケメンが多いし、長所と短所がはっきりしていて、推しやすい」とのこと。

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主人公・ 潔世一 (いさぎ よいち)。素顔は普通の高校2年生(「ブルーロック展」にて撮影)

一番のお気に入りは主人公の潔世一(ルビで「いさぎ よいち」)。「潔い」と「世界一」、源平合戦で名を上げた弓の名手「那須与一(※ルビで「なすのよいち」)をかけ合わせた造語と勝手に推察。長女はどうでもいいようだが。

サッカーにかける思いは強烈な潔だが、性格は素直で至って普通。ピッチに出ると、自分のエゴを主張しながら、周りのプレーヤーのエゴを生かし、チーム力を飛躍的にアップデートさせる。1足す1を2ではなく、3にも4にもできるキーマンがエゴイストたちの主人公という設定が逆説的で興味深い。

父親の注目は…時代錯誤の超スパルタキャラ

かたや、おじさん世代の自分が注目しているのは糸師冴(ルビで「いとし さえ」)。
主人公のライバルの兄で、スペインの名門チームの下部組織で活躍する天才だ。

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糸師冴(いとし さえ)。口の悪い“日本の至宝” (「ブルーロック展」にて撮影)

この男、登場人物たちの中でも、輪をかけて口が悪い。目上にも生意気かつ無礼で毒を吐きまくる。コンプライアンス的には即レッドカードの言動ばかり。巷で話題のTBS金曜ドラマ「不適切にもほどがある!」の小川先生の方が、はるかに礼儀をわきまえている。もちろん、ミュージカル風に語ってくれるなんてことは死んでも無い。

同じく口の悪い弟には、特に手厳しく犬猿の仲だ。主人公のプレーはクールに評価する一方、弟はいくら活躍してもガン無視。ただ、嫌われ役を敢えて買い、弟の怒りのモチベーションを呼び起こして鍛える超スパルタ教育を実践しているようにもみえる。

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主人公たちのベッドルームを再現(「ブルーロック展」にて撮影)

言い訳や妥協が一切許されない勝負の世界。アクの強いキャラクター一人一人が限界までエゴを突き詰め、互いのエゴを“化学反応”させて奇跡的な勝利をつかみ取るー作品の端々から、そんなメッセージが伝わってくる。多様性やバランス重視の令和の時代にはそぐわないが、無茶苦茶で昭和っぽいギラギラ感は、中毒性が高い。

「ブルロ」の次は「葬送」

イベントからの帰り道、長女は購入した潔のグッズを手に取って満足そうだ。4月に上映されるスピンオフ映画を見に行きたいか尋ねると、「潔が脇役扱いだし、凪(※スピンオフ映画の主人公)みたいな無気力タイプは興味ない」とつれない返事。

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凪誠士郎(なぎ せいしろう」) めんどくさがりのトラップ名人(「ブルーロック展」にて撮影)

凪誠士郎(※ルビで「なぎ せいしろう」)はだらしない性格だが、やる時はやる本番に強いタイプ。個人的にはお気に入りのキャラだが、若い女性客に交ざって、おじさん一人で見るのはちょっと…などと思案していると、長女がスマホで動画を見始めた。

「やっぱりYOASABIの主題歌いいわ。潔もいいけど、フリーレンは最強!」

ついにそう来たか…ブルーロックの最新刊を買いに行った時、大型書店の店頭に負けじと並んでいた人気漫画『葬送のフリーレン』の主人公だ。戦闘シーンはそれなりに描かれるが、物語全体の熱量は決して高くない。ブルーロックとは対照的だ。一見すると物足りないが、淡々とした描き方の裏には…

えっ、なぜ自分が漫画の内容を詳しく知っているかって。まあ、長女みたいな突っ込みは無しということで。

んー、回を重ねるにつれ、長女の気まぐれがうつってきたかも。

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警官風アイドル!?(「ブルーロック展」にて撮影)

※2024年2月現在の情報です。

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文:ゆゆパパ
編集:Sitakke編集部 ナベ子

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