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「名車探偵」映画・ドラマに出てくるクルマの話:トヨタ・スタウト

  • 2024.2.18
トヨタ・スタウトのイラスト

黒板五郎のピックアップトラック

田園風景の中を走るオンボロのピックアップトラック。ベンチシートにはドライバーの父、その隣には彼の2人の子供たちが並んで座っている。彼らは父の実家がある「過疎の村」へと向かっている。

息子「父さん、過疎ってどんな字を書くんですか」。
父「……」。

1980年秋。黒板五郎は、息子・純と娘・蛍と共に東京から北海道・富良野へやってきた。妻の令子が家出してしまい、人生をやり直すために幼い子供たちを連れ、生まれ故郷に戻ってきたのだ。

2024年正月、ワタシは“また”観ている。ドラマ『北の国から』を。ここ数年、年末年始になるとシリーズ全部をイッキ観するのが恒例となった。たぶん、忘れてしまった何かを、年の瀬になると思い出したくなるのだ。年を取ったせいもある。純や蛍と同世代というのもある。

『北の国から』は連ドラ(1981〜82年放送)と、その後のスペシャル版と、子供たちの成長に合わせ20年以上続いたシリーズである。『'84夏』の丸太小屋全焼、『'87初恋』の汚れた一万円札、『'92巣立ち』の誠意のカボチャなど、語り継がれる名シーンは多々あるが、ワタシが繰り返し観てしまうのはその原点、ファーストシリーズ全24話。

どの話も素晴らしく、純を演じる吉岡秀隆と蛍を演じる中嶋朋子の名子役ぶりが光る。中でも、純と蛍が母の恋人に新しい靴を買ってもらい、父が買ってくれたボロボロの運動靴を捨ててしまうシーンは出色。

脚本を書いた倉本聰は、「あの子たちは僕自身の投影で、子供の姑息さを描いている」と以前語っていたが、それはワタシの子供時代そのものでもある。観ていると気恥ずかしい気分になってくる。

田中邦衛演じる五郎の「青さ」にも惹きつけられる。電気も水道もない大自然の中で子育てをするも、『大草原の小さな家』のようなたくましい“父さん”には程遠く、頑固で子供っぽい男であるのがいい。

そんな五郎の相棒がトヨタ・スタウト。文なしの五郎のために幼馴染みの中畑(地井武男)が用意してくれた小型トラックだ。各話で活躍するが、スペシャル版からは日産ジュニアに変更されてしまう(大人の事情だろう)。『2002遺言』まで愚直な五郎はスタウトに乗り続けてほしかったな。

Information

トヨタ・スタウトのイラスト

トヨタ・スタウト

初代が登場したのは1956年。ドラマに登場するのは2代目67年型の2000㏄。全体的にアメリカ車を意識したデザインでボンネットの上に耳のようにピョコッと突き出しているウィンカーランプがかわいい。

profile

辛島いづみ

からしま・いづみ/フリーの編集者&ライター。スチャダラパーと一緒に『余談』も。

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