1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. 低い弾道で“ビタ止め”するには…?ゴルフ研究者が打ち方を徹底解説

低い弾道で“ビタ止め”するには…?ゴルフ研究者が打ち方を徹底解説

  • 2024.2.16

ゴルフはスポーツのなかでも、とくに意図した動きができないといわれる。その原因が「細胞や脳に関係する」とわかり、自身も素早く100切りを達成した研究結果をレポート。斬新な視点と理論が、レベルアップを目指すゴルファーに新しい上達のヒントをもたらす!

低く出て止まるアプローチを楽しむ

スピンアプローチとはどのようなものか

これまで、本連載で説明してきたインナーカウンターやインバースキネマティクスのような課題達成型のスイング解釈では、総合的な体の使い方が1パックになっていてボールを投げるように狙ったところに打てるのですが、実際に思ったところに打てるようになるといろいろと遊んでみたくなるもの。そこで今月は、スピンアプローチの話をしたいと思います。

スピンアプローチには高い弾道と、戻ってくるような強烈なバックスピンのショット、低い弾道でブレーキがかかってキュっと止まるショットに大別できるようですが、今月は後者側のスピンアプローチの話になります。キャッチボールで高く投げ上げて相手の胸を狙うほうが、普通の中弾道で胸を狙うより難しいことからもわかるように、高いループの弾道でターゲットを狙うというのは、そもそも日常経験から離れたものなので距離の感覚把握が難しくなります。

さらに、ウエッジで高さを出すためにはリーディングエッジをボールの赤道と南極の間に正確に差し込み、ロフトによって強いバックスピンをかける必要があるのですが、これはある程度のヘッドスピードが求められるので、トップしてホームランにならないように注意を払わなければならない難しいショットになります。

これに対し、低い弾道で打ち出してバックスピンをかけて止めるのは、弾道が低いので一見リスキーに感じますが、低い弾道は距離感もつかみやすいうえ、下方スライドによるバックスピン量は当然スライド量に依存しているので、下方スライドさえできていれば低速であっても(強烈なバックスピンで戻ってくるようなショットではありませんが)数バウンドで止まるショットになる。

この「低く打ち出して止めるスピンアプローチ」について詳しく説明していきます。

テニスのスライスショットを打つ感覚でいい

以前の記事で、リーディングエッジは差し込むのではなく、フェースを被せるような意識でボールをフェースでぶ厚く打ち抜き、下方スライドでバックスピンをかけることを説明しました。どの番手でもこの考え方は基本的には一緒なのですが、低い弾道でもしっかり止める強いバックスピンをかけるスピンアプローチを打つためには、ボールとフェースとのコンタクト時間を長く保ち、下方スライド量を多くとることが必要です。

そこで、練習場の2階席から1階のピンに打ち下ろすようなイメージで、ロフトを立ててより厚くボールをとらえながら、下方スライドも多目にする意識をもち、フェースを押し込むようにしてボールを打ってください。もちろん、ウエッジはロフトが大きいので1階に打ち下ろすとはいっても通常のアプローチに対し、半分から3分の1くらいの高さの弾道で飛んでいき、バックススピンによって数バウンドで止まってくれます。

ただ、このように文章で説明してしまうと「低い弾道」と「止まるボール」という相反する要素から、難しく感じてしまうかも知れません。しかし、私のなかではテニスのスライスショットやドロップショット(いずれも下方スライドでバックスピンをかけるショット)の実経験から低く打ち出して止まるスピンアプローチをイメージしていて、その成功体験のイメージがあるので(ボールの挙動を疑うことなく)かなり容易に打つことができます。

ところが、スピンアプローチをネットで調べてみると、クラブを短く持つ、スタンス幅は狭く、オープンスタンスで、ボール位置は右足の前で、と書かれていてどうしても頭で考えるゴルフになってしまいます。これでは作法どおりに事を運ぼうとしてギクシャクしてしまい、自然な動きもできなくなるので手順は参考程度にして、まずは理屈はともかく感覚で臨みたいものです。

テニスではボールは相手側から飛んでくるものなので、スタンスを決めてからスイングを作るなどということは一切できません。どうしているかといえば、弾道を予測してそのなかで考えられるもっとも打ちやすい(効率のよい)打点を先に割り出し、そこから逆算(インバース)してスタンスを決めるという手順になります。スタンス幅などは結果を出すためであれば、ある意味どうでもいいのです。

もちろん、ボールが飛んでこないゴルフでは、基本としてスタンスから考えることも大切ですが、手順(お手本)を示されてそのとおりにやるというのは緊張もするものなので、ボールを前にして感覚重視で打ちやすいようにアバウトに考えるのもありだと思います。

なお、「フェースを開いてオープンスタンスで」というのがアプローチの打ち方のお約束になっているのは、少しでもスピンをかけてブレーキのあるボールを打ちたいということだと思いますが、いろいろな要素を盛り込みすぎると複雑になって難しくなってしまいます。普通にフェースを開かずスクエアスタンスで打ってもバックスピンはそれなりにかかるので、はじめは無理してフェースを開く必要はありません。

スクエアスタンスで問題なく打てるようになって、もうひとつ階段を昇ってみたくなったら、フェースを開いてオープンスタンスにして打ってみるといいと思います。

いかがでしたか? テニスのスライスショットを意識して、レッスンを行ってみてください。

文・イラスト=サンドラー博士
●ゴルフ好きの研究者。ゴルフの専門家ではないが、ゴルフ理論は「教える側」という「外側からの視点で組み立てられているから難しい」ということに気づいてからは、「それをどう解決するか」の研究に没頭。出た答えを多くのアマチュアに伝えたく、毎月レポートする。

元記事で読む
の記事をもっとみる