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自社製造にこだわりを持つ、日本のトラッド・メーカーを訪ねる

  • 2024.2.15
神奈川〈フクゾー洋品店〉店内、神奈川〈ジーンズショップ モチヅキ〉店内、兵庫〈神戸ザック 新長田店〉店内、兵庫〈もちはだ〉工場内

取材・文:トロピカル松村(編集ライター、〈CRT〉ディレクター)

〈フクゾー洋品店〉シャツ、〈ジーンズショップ モチヅキ〉ペインターパンツ、〈もちはだ〉ソックス、〈ゴロー〉チロリアンシューズ、〈神戸ザック〉バックパック
ちなみにこのトルソーに着せたチロリアンシューズ、シャツ、ジーンズ、ザック、ハイソックスは、すべてそんなスタンスから生まれたもの。工房のキャリアは様々だが、50年、さらには70年以上続くかなりの老舗も登場!シャツ〈フクゾー洋品店〉横浜を代表するトラッド・メーカーのシャツ。店舗2階の、見えるように設けられた縫製工場で生まれる。22,000円。ペインターパンツ〈ジーンズショップ モチヅキ〉今では数少ない“街のジーンズ屋”が手がけているジーンズ。店内にある工房でこだわりの逸品を製造。25,300円。ソックス〈もちはだ〉/冒険家・植村直己氏も愛したという暖かすぎるソックス。自社の縫製機器を用いてニット製品を多数製造。3,190円。チロリアンシューズ〈ゴロー〉/根強いファンも多い、日本が誇る登山靴メーカーのカジュアルシューズ。店舗内と自社工場で作る。39,380円。バックパック〈神戸ザック〉/神戸発、本格登山家を魅了してきたザックメーカーのバックパック。店内3階にある工房でハンドメイド。33,000円。

ゴロー(東京/巣鴨)

老舗・登山靴メーカーにある名作カジュアルシューズ

1973年創業の日本が誇る登山靴メーカー〈ゴロー〉。自社製造自社販売を貫いているだけあって、メディアで取り上げられることも少なくない名店だ。普段は山仕様のブーツがフィーチャーされることが多いのだが、そのうえ、ここはヘビーデューティなスタイルがトレンドだった70年代に、どこよりも早くチロリアンシューズやモカシンを日本で作っていた功績も持っている。そのため、カジュアルシューズのラインナップも流石のもの。

東京〈ゴロー〉チロリアンシューズ
チロリアンでは珍しい高さのある深型タイプ。42,350円。
東京〈ゴロー〉「バディー」のステッチダウンタイプ
人気作「バディー」のステッチダウンタイプ。41,360円。
東京〈ゴロー〉チャッカブーツ
チャッカブーツ。35,200円。
東京〈ゴロー〉の「ゴロッパ」
〈ゴロー〉が街用に作ったスリッパはその名も「ゴロッパ」。25,300円。

メーカーゆえの強みは数多く、店頭では必ず購入者の足を計測し、フィットしたものを作って提供する。言わずもがな修理も対応。店の2階で靴を縫っていた職人が、縫い糸が切れにくいよう糸一本一本に松脂(まつやに)を塗る所作はつい見入るほどに美しい。使っている靴の革はなんと厚さ約3mm!ヨーロッパ中を巡り見つけたらしい。お世辞にも軽いとは言えないが、履くとびっくり。マシンメイドにはない職人芸の足馴染みに感動するのだ。

東京〈ゴロー〉店内
重厚な靴だらけの店内。
東京〈ゴロー〉顧客の足を計測する様子
顧客の足を必ず計測。左右で足の長さが違っていようが問題ナシ。
東京〈ゴロー〉登山靴のビスポーク
登山靴のビスポーク。
東京〈ゴロー〉店舗内での様子
店舗内で職人芸が見られることも。
東京〈ゴロー〉店内
歴代のクラフツマンの写真や、登山家の写真が随所にある。

Information

東京〈ゴロー〉外観

ゴロー

所狭しと既製靴が並んでいるが、ユーザーの足を必ず計測してオーダーメイドで製作することをモットーにしているため、ぜひとも店頭へ。

住所:東京都文京区本駒込6-4-2 
TEL:03-3945-0855
営:10時~19時(日・祝~18時)
休:火曜
HP:www.goro.co.jp

フクゾー洋品店(神奈川/横浜)

70年以上、ひっそり息づく横浜のトラッドウェアが粋

品の良いブティックが並ぶ横浜元町ショッピングストリートにある、ここ〈フクゾー洋品店〉はトラディショナルファッションを超がつくほど古くから発信。国内生地・自社製造に重きを置いて販売してきた老舗だ。1950年代頃から婦人服店として有名に。

神奈川〈フクゾー洋品店〉カーコート
ハマトラ以前の1950~60年代に〈フクゾー洋品店〉でメンズから人気を博したというカーコート。103,400円。
神奈川〈フクゾー洋品店〉ヨットパーカ
古くから横浜のヨットマンに愛されてきたヨットパーカ。23,100円。
神奈川〈フクゾー洋品店〉シャツ
柄も豊富。もちろん修理にも対応。22,000円。

70年代後期にハマトラファッションで注目を集めたこともあるためウィメンズのイメージが先行しがちだが、実は店舗2階のメンズフロアに並ぶものも逸品ばかり。シャツを筆頭に製品の多くは、裁断や縫製、ロゴの手刺繍に至るまで2階奥に設けられた工房(本格的な工場)にて製造。しかも工程を分散させず最初から最後まで一人が縫うように心がけているという。その丁寧な仕事ぶりがじかに見られるのもここの魅力。

神奈川〈フクゾー洋品店〉店内
店舗内の工場で作られているボタンダウンシャツ。
神奈川〈フクゾー洋品店〉タツノオトシゴのロゴ刺繍
ほぼすべての製品に施されているタツノオトシゴのロゴは手刺繍だ。
神奈川〈フクゾー洋品店〉店内
陳列も接客もものすごく丁寧で、さすがは横浜の老舗トラディショナルメーカーと感じさせられる。

Information

神奈川〈フクゾー洋品店〉外観

フクゾー洋品店

横浜で70年以上。シンプルで着やすく、品のいいメンズ服も揃う。そごう横浜、横浜タカシマヤにも店を構える。

横浜元町本店
住所:神奈川県横浜市中区元町3-127
TEL:045-651-2801
営:10時30分~19時(短縮の場合あり)
休:不定休
HP:fukuzo.com/

ジーンズショップ モチヅキ(神奈川/藤沢)

街のジーンズショップが作るニッチなオリジナルが評判

レプリカジーンズも、フレアパンツも、ワークパンツもなんでもござれ。ジーンズを専業として40年以上になる、神奈川・藤沢にある〈ジーンズショップ モチヅキ〉には地元の老若男女が訪れる。前述した多種多様なジーンズを扱っていた店主の望月智好さんは扱う商品に合った「もう少しこういうシルエットなら」という願望を叶えたものが欲しいと思うように。

神奈川〈ジーンズショップ モチヅキ〉カバーオール
1910年代のカバーオールを気楽に着られるよう今のサイジングで製作。27,500円。
神奈川〈ジーンズショップ モチヅキ〉ホワイトジーンズ
リーズナブルジーンズを意識して作ったホワイトジーンズ。11,000円。
神奈川〈ジーンズショップ モチヅキ〉ストレートジーンズ
シルエットも豊富。こちらは股上やや深めのストレート。11,000円。

10年ほど前から店内に工房を作り、オリジナルジーンズを手がけるメーカーになった。近くのセレクトショップと協業で70sなジーンズを作ったり、常連客の個人オーダーにも対応したり。ヴィンテージライクなものもあれば、徹底してリーズナブルなものもある“街のジーンズ屋さん”が手がけるジーンズが面白い。

神奈川〈ジーンズショップ モチヅキ〉店内
往年のアメカジブランドが揃う店内。
神奈川〈ジーンズショップ モチヅキ〉オリジナルジーンズ
広島や岡山の生地で丁寧に作られているオリジナルジーンズ。ブランドは〈フルムーンファクトリー〉という。
神奈川〈ジーンズショップ モチヅキ〉店内
店内で製作。店で購入したものなら、微調整もガンガン対応してくれる。

Information

神奈川〈ジーンズショップ モチヅキ〉外観

ジーンズショップ モチヅキ

1981年に藤沢駅前にジーンズショップをオープン。2017年に移転し、現在の店舗になる。

住所:神奈川県藤沢市鵠沼橘1-16-5 春蔵舎101号室 
TEL:0466-25-3304
営:11時~19時
休:木曜
Instagram:@jeans_shop_mochizuki

神戸ザック 新長田店(兵庫/神戸)

手仕事まで受け継ぎ守られた神戸発祥のバックパック

ツウな登山家が支持していた〈神戸ザック〉が手がける老舗ブランド〈イモック〉のバックパックが近年注目を集めている。創業者の星加弘之さんが高齢になり閉業しようとしていたところ、セレクトショップ〈乱痴気〉の前川拓史さんが承継したのがその理由。

兵庫〈神戸ザック 新長田店〉トラベルポーチ
コーディネートに添えたくなる「トラベルポーチ」。7,150円。
兵庫〈神戸ザック 新長田店〉外観の「テクリL」
軽い登山にも街使いにも対応する20Lの「テクリL」。29,700円。
兵庫〈神戸ザック 新長田店〉の「きんちゃくザック」
もともと高校のワンダーフォーゲル部の競技用ザックとして考案されたという「きんちゃくザック」。9,790円。

10年以上前から自身の店で取り扱っていた〈イモック〉だけに愛情は人一倍強く、新たにショールーム兼店舗を作って、工房も併設。古きを重んじ、実際に使われていた型紙やミシンも丁寧に保管し活用できるようにした。しかも、それだけでなく製造には自身が指導するファッション学校の生徒らを雇用。各種名品が変わらないどころか、質を向上するよう取り組んでいるのだから人気が出るのも素直に頷ける。

兵庫〈神戸ザック 新長田店〉店内
ワクワクする、ヘビーデューティなザックばかり。
兵庫〈神戸ザック 新長田店〉で使用する型紙
古くから残る厚紙の型紙や動力ミシンを用いて縫われている。
兵庫〈神戸ザック 新長田店〉の製作風景
パーツごとに作り手がいる。最近は大手セレクトショップとのコラボレーションもリリースした。

Information

兵庫〈神戸ザック 新長田店〉外観

神戸ザック 新長田店

工房を併設した本店。タウンユースから本格登山用まで様々なザックが揃う。神戸国際会館SOLに店舗もあり。

住所:兵庫県神戸市長田区腕塚町3-2-2 新長田サンヨービル1F 
TEL:078-742-9070
営:12時~17時
休:不定休
HP:www.kobezac-imock.net

もちはだ(兵庫/加古川)

独自開発の機械から生まれる寒さ知らずの伝統ニット製品

寒いから冬が苦手、という人は絶対に頼ってみてほしい〈もちはだ〉のニット。店舗は冬場のみの不定期オープンで今年は未定らしいが、兵庫の加古川に大きな工場を所有。ここで生まれるニット製品は、靴下も、インナーも、ネックウォーマーも、すべて1970年に自社が生み出したというオリジナルの丸編み機を使用しているのだ。

兵庫〈もちはだ〉ネックウォーマー
植村直己冒険館とコラボレーションで作られているネックウォーマー。各1,800円。
兵庫〈もちはだ〉ハイソックス
植村直己氏が使用したモデルと同じハイソックス。各3,190円。
兵庫〈もちはだ〉長袖インナー
ぽっかぽかの長袖インナー。各7,700円。

特許を取得したこの機械がとにかく優秀。生地を編む段階で起毛させていくから、全体を均一に起毛させるだけでなく、起毛時に生じるパイルのループ破壊を防いでくれて保温性も肌触りも別格。物へのこだわりが強い冒険家・植村直己氏が南極大陸冒険で使用していたハイソックスのメーカー、と聞けば試したくなる人も多いのでは?

兵庫〈もちはだ〉工場内
有名アウトドアメーカーも頼る編み立て工場。
兵庫〈もちはだ〉本社エントランス
本社のエントランスには〈もちはだ〉の様々な製品やパネルの展示が。
兵庫〈もちはだ〉の起毛
〈もちはだ〉が追求に追求を重ね生み出している至極の起毛。編みながら起毛させるという独自製法により保温力を各段に向上させる。

Information

兵庫〈もちはだ〉店舗入口サイン

もちはだ

兵庫県加古川市に工場を持ち、ニットメーカーとして各社OEMも行っている。毎年、冬になると加古川駅前と、本社工場直営の店舗がオープンしていたが、今年は未定。オンラインサイトが充実しているからぜひアクセスしてみてほしい。
HP:www.mochihada.co.jp

profile

編集ライター、〈CRT〉ディレクター・トロピカル松村

トロピカル松村(編集ライター、〈CRT〉ディレクター)

1988年兵庫県生まれ。70~80年代のファッション(トラッド、ヘビーデューティ、サーファー、スポーツなど)に目がないライター。レコードガイドブックの著者で、ノスタルジーなジーンズブランド〈CRT〉を運営している。
HP:https://www.tropicalmatsumura.com/

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