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「未婚の母」を選んだ女性たち それぞれの深すぎる理由

  • 2024.2.15

「結婚して、子どもを産み育てる」。以前から一般的な形態とされてきました。その当たり前が、変わりつつあります。厚生労働省の人口動態調査によると、2022年に生まれた子ども全体のうち、2.3%は母親が未婚のまま生まれた婚外子。メディアで「未婚の母」と公表している女性芸能人も増えた印象があります。そうした女性たちには、どんな事情があったのでしょうか。5人の女性のケースから考えます。

【ケース1】不倫していた既婚者の子を妊娠

職場の上司が既婚者だと分かりながらも、不倫関係を続けている中で思いがけず妊娠してしまった、都内で会社勤めをしているA子さん(30代)。社内不倫をして2年ほど経ちます。彼には家庭があるので、妊娠したって離婚して自分と結婚をしてくれるわけではないと分かっています。相手が既婚者だったとしても「好きな人との間にできた子どもを、産まない選択はありませんでした」と、A子さんは切り出しました。

「長年付き合った彼との婚約が破棄となり、どん底まで落ち込んでいた時に優しい言葉をかけてくれたのが、職場の上司である今の相手でした。不倫はいけないことだとは分かっていましたが、彼は私にとって唯一の心の拠り所だったので……。妊娠したことを彼に伝えると、『認知はできないけど、養育費は払う』と言ってくれました」

maroke/iStock/Getty Images Plus

生まれた子どもは3歳になるが、父親が誰なのかは親しい友達にも一切言わず、秘密を貫いているA子さん。「彼の家庭を壊さずに、良好な関係を築くことが子どもの養育費にも直結するので……。この生活を崩すわけにはいきません」。今後もひっそりと子育てをしていくつもりだそうです。

休みの日に遊びに来てくれるパパのことを、子どもはとても楽しみにしています。「まだ3歳なので、パパと一緒に住んでいないことを不思議がることもなく、会った時には仲良く過ごしていて、よい親子関係」とのこと。

今のところ、A子さんと彼の不倫関係も続いており、養育費ももらえています。ただ、法的な書面などを交わしているわけではないので、「もし不仲になった場合に払ってくれる保証はありません。そのためにも彼と良好な関係を続けることは大切だと思っています……」と、A子さんは切実な胸の内を明かします。

また、都内で親子2人暮らしをするための資金としては、養育費だけでは到底足りないのが現状。そのため、A子さんはフルタイムで働きながらワンオペ育児に奮闘し、忙しい毎日を送っています。

「今は一日一日を無事に過ごすことで手一杯。子どもに私が未婚の母であることや、父親との本当の関係をいつどうやって話すかなどは、まだ考える余裕がありません。いつか話す時が来るのでしょうけど……」。A子さんは今を懸命に生きています。

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【ケース2】妊娠したと告げたら、彼に逃げられた

「彼が私の家に転がり込んでくる形で、半同棲生活がスタートしました」。そう語るのは、3歳年下の彼と付き合っていたスポーツジムに勤務するB子さん(33歳)。彼は飲食業をしていて、帰りが深夜になることも日常茶飯事。浮気などの心配も多少はありましたが、とにかく気が合って仲が良かったこと、またクリスマスや誕生日、年末年始などの大事な時には必ず一緒に過ごしていたので、「私が本命であるという自信はあった」とB子さんは言います。

二人は避妊をしていませんでしたが、「もし妊娠したら、一緒になるつもり」と言う彼の言葉を信じ、安心しきっていた。

しかし、いざ妊娠が発覚し、彼に嬉々として伝えると、その日を境に彼はだんだんと家に帰って来なくなりました。最初は一日おきに帰って来ていたのが、3〜4日おきになり、1週間帰らないことも。 LINEの返信も鈍くなっていきました。

そして妊娠を告げて1カ月後、彼が急に荷物をまとめて家を出て行き、その後一通のLINEが。

「B子のことは好きだったけど、子どもを養っていくお金がない。結婚もできません。ごめん!」。彼に逃げられてしまいました。

その後、B子さんはお腹にできた子どもをどうするか、真剣に悩みました。まずは両親に素直に話し、すでに結婚して子育てをしている姉にも相談。すると、「できる限り育児に協力する」と言ってもらえました。A子さんは以前から「子どもを持ちたい」という思いが強かったこともあり、そうした家族の後押しもあってシングルマザーの道を決断しました。

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彼からは、今もたまにLINEが来るそうです。

「でもそれは、きっと寂しくなった時に連絡してきているのだと思います。ちょっと未練がある元彼のような軽いテンションなので、こちらとしてはイラッとしますね。並々ならぬ覚悟で出産・育児をした身からすると、温度差がありすぎて……。養育費を払ってくれているわけでもないので、こちらは彼に気持ちを入れることなくあしらっているような状況です」

今、B子さんはシングルマザーとして頑張って仕事に育児に奔走しています。出産から1年が過ぎた頃、仕事を通じてある男性と知り合い、交際がスタートしました。彼は子どものことも可愛がってくれていて、「このままいい関係が続けば、彼と再婚もあるかも?」と、B子さんは少し期待していると話します。なお、子どもの父親にあたる元彼のことは、今後も子どもに話すつもりは一切ないそうです。

【ケース3】独身だと偽られ……離婚協議中の相手と

独身だと思って付き合っていた5歳年上の彼との間に子どもが出来た都内に住むC子さん(38歳)。もともとイベント関係の仕事をしている時に取引のあった男性でしたが、現場でのやり取りや打ち上げなどで接する機会が増え、交際に発展しました。

彼は常々「君と結婚したい」と言っていましたが、妊娠したことを伝えると、突如「実は……まだ結婚しているんだ」と、彼が離婚協議中の既婚者だということが発覚したのです。

出産する頃には彼の離婚が成立して、結婚できるだろうとばかり思っていたC子さん。しかし実際に出産した後も、なかなか彼の離婚が成立しないのです。

それから、彼の“離婚するする詐欺”もはや3年。C子さんと息子のふたり暮らしも板についてきて、結婚は半ば諦めモードになりつつあります。「週末は家に来て、息子とよく遊んでくれます。やっぱり息子には父親の存在が重要だなと感じるので、この関係性がズルズルと続く気がする」とC子さん。

「彼の離婚は成立しないままではありますが、私のことも変わらず恋人として接してくれて、誕生日や記念日にはお祝いをしてくれます。息子と3人で海外旅行に連れて行ってくれたことも。旅行先でのあまりに楽しく幸せな時間に、ふと“彼に他の家庭があることを忘れてしまう”こともあります」

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C子さんは、「心のどこかで、いつかは彼の離婚が成立して、3人家族になれる日が来るのではないか?」と思っています。「その可能性は50%くらいでしょうか」と、まだまだ彼との結婚を諦めてはいない様子です。

【ケース4】精子バンクを利用して

新卒で大手企業に就職、20代から仕事優先でキャリアを積み、30歳で起業。現在も次々と新しい事業を展開する、やり手経営者のD子さん(35歳)。

起業後、何人か彼氏ができたこともありましたが、浮気をされたり働かない男性に頼られたり。「とにかくダメンズしか寄ってこない」と、恋愛では苦労するタイプであると自覚しているようです。

恋愛するだけの相手だったら、ダメンズでもまだいいのかもしれませんが、結婚となるとそうはいきません。「もう自分には恋愛結婚は無理だと分かっていましたが、子どもが欲しいという願望は捨てきれず、自らシングルマザーの道を選びました。幸い、経済力はあるので」と、未婚の母の道を選択した思いを語ります。

父親となってくれるパートナーを探していた時期もありましたが、「相手には自分より収入の多い人を求めていたけど、出会う独身男性の中には、なかなかいないので諦めました」。その後、結婚はせずに、精子バンクを利用して妊娠しました。

「出産後も仕事はバリバリ継続しているので、家事と育児はアウトソーシングに。家事代行サービスやベビーシッターを使ってやりくりしています。私の体が資本にはなりますが、精神的なストレスはあまりないですね」。

これからの時代は、D子さんのように自ら希望して、未婚の母になるケースも増えていきそうです。

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【ケース5】年齢的リミットから、まずは出産

20代で最初の結婚をしましたが、相手からのモラハラに苦しみ、離婚したE子さん。結婚へのトラウマから「もう二度と結婚はしたくない」と強く思っている中で出会った彼は、E子さんと同じ39歳のバツイチ男性でした。

E子さんと同じく、彼も前の結婚でつらい思いをしたため「再婚はしたくない」と考えており、価値観の似通ったパートナーでした。39歳という年齢的に、少しずつ子どもを諦める覚悟もし始めていたE子さんでしたが、なんと彼との間で自然妊娠をしたのです! 奇跡のような妊娠に、自分でも驚くほど嬉しい気持ちになったと言います。

しかし彼には前妻との間に子どもが2人おり、思春期の子どもの手前、「再婚して子どもが生まれる」というフェーズになかなか移ることができず、E子さんとの間に子どもができてもなお、再婚には二の足を踏んでいるようでした。加えて正直なところ、「二度と結婚したくない」と断言していたE子さんが、妊娠したことをこんなにも喜んだことも意外だったようです。

それから彼は、相当悩んでいる様子でした。子どもを生み育てる喜びも、またその家庭が壊れた時の辛さも、両方知っているからこそ、なかなか決断できなかったのかもしれません。前妻の子どもたちの心情を慮っていたのもあるでしょう。しかし、お腹の子は待ってはくれません。どんどんお腹は大きくなり、出産の時期が近づいてきました。

最後まで彼は再婚に踏み切れませんでしたが、E子さんは「今回が私が母親になれるラストチャンス」との思いで、彼との再婚は一旦諦めて、まずは出産することを決意。彼とは付かず離れずのパートナー関係のまま、未婚の母の道へ進みました。

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「彼との間に婚姻関係はないですが、子どもの父親であることは間違いないし、なんだかんだ言って前妻との間に子どもが2人いるだけあって、育児面では私より手慣れているし知識も豊富。頼れるパートナーではありますね」とE子さん。

もしかすると、「彼の前妻との子どもたちが成人した後に、彼と結婚する未来もあり得るかもしれない」と希望は捨ててはいません。

未婚の母には、強い思いと覚悟がある

「未婚の母」といっても、そこに至るまでには様々な状況があり、思いがあり、ストーリーがあります。しかし共通しているのは、女性の確固たる「子どもを産みたい」という強い思いと、「母になる」という覚悟でした。

未婚の母の道へ進むと、基本的には「母一人、子一人」で生活することになるので、母と子の絆はより固く結ばれ、親子ながら良きパートナーのような関係にもなっていくように感じました。また未婚の母は、周りの支えがあったとしても、基本的には「自分一人でしっかり育てる」という強い意志があるので、精神的にも自立している傾向にあると思います。

たとえ籍を入れていなくても、妊娠期間から出産後にかけて、自分や子どもに対してしっかりと向き合い、育児や養育費などのケアをしっかりしている彼については、子どもに対して「この人がお父さんだよ」と伝えている傾向にあります。一方で、不誠実な態度をとっていた彼の場合は、未婚の母は子どもに対して父親の存在自体を明かしていません。

女性のキャリア構築や働き方も変化している昨今、出産や育児、家族のあり方もどんどん多様化していくことでしょう。大切な命を、社会全体で育てていくために、まずは「未婚の母」や「婚外子」の実情を知っていくことも、また大切なことかもしれません。

■田中 絵音のプロフィール
一般社団法人日本合コン協会会長。東京ママパーティー主宰。唎酒師。 数々の合コン・婚活パーティーやママイベントの運営に携わり、恋愛心理やコミュニケーションに精通する恋愛アドバイザーとして活動中。 著書は6冊。一児の母。

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