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自由にさせることとワガママは違う?イヤイヤ期の2歳児の「秩序感」の育て方

  • 2024.2.14
出典:ぎゅってWeb

イヤイヤ期と呼ばれる2歳頃には、さまざまな場面で親子の衝突が起こります。子どものやりたいことをさせるのがよいとも聞きますが…本当でしょうか?今回は、2歳児の「秩序感」の育て方について、事例を交えて解説します。

2歳半ごろの子どもの内面では何が起こっているのか?

2歳半ごろは、身体的にも精神的にも大きく成長する時期です。イヤイヤ期とも呼ばれ、ネガティブイメージがつきまといますが、子どもの内面の育ちには欠かせない大切な時期でもあります。子どもの成長に何が起こっているのかを理解して、この時期をうまく乗り切れるとよいですよね。

モンテッソーリ・メソッドでは、2歳半は「秩序の敏感期」と呼ばれています。周囲の環境から、決まりごと、仕組み、位置関係、順序などを学ぶ時期のことです。秩序感は生後すぐから4歳までに発達しますが、2歳半ごろが最もピークと言われています。

私はよく「突然全く知らない外国にひとり連れてこられた状況」に例えて説明しますが、子どもにとってこの世の中は、見ず知らずの異世界です。地図もなければ作法も分かりませんし、言葉も通じません。そんな状況で必死に周りを見回して、物の位置関係を把握したり、手で触って物の重さを知ったり、何度も試してやっとスプーンを握れるようになったりするのです。

そんな途方のない努力ができるのも、2歳児が持つ溢れ出る好奇心のおかげ。「もっと知りたい!」「自分でやってみたい!」という強い気持ちが、そのような大仕事を子どもにさせているのです。しかし、そんな子どもも絶望感に襲われることがあります。

それは、誰かにせっかく作り上げた秩序を乱された時です。大人がいつもと違うやり方をした時、いつもの公園まで違う道を通った時、パパの髪型がいつもと違う時…。まさに今、自分の秩序感を作っている子どもの世界とは、そんなふうなのかもしれません。

ルールや約束事もしっかり覚えられる時期

自我が大きく育つ時期の2歳児は、「なんでもやってみたい!」「自分でやりたい!」というパワーに満ち溢れています。靴や服を自分で脱ぎ着するなど、興味を持ったことに挑戦して、自分でできることを増やすのはとてもよいことです。子どもの気持ちに寄り添い、ひとりでできるようにサポートするのが大人の大事な役目です。

ただし興味があるからといって、なんでもやらせていいかと言えばそれはどうでしょうか。水に触るのが楽しいからといって、蛇口から水を出しっぱなしにしてはいけませんし、おもしろいからといって風呂の栓を勝手に抜かれては困ります。よいこと・よくないことを知るのも子どもの秩序感になりますから、しっかりこの時期に伝えましょう。逆をいえば、この時期に許していたことを後から訂正するのは、とても大変なことです。

やってはいけないことは短くはっきり伝えます。大きな声で脅かしたり、怒鳴ったりする必要はありません(危ない時は、つい大きな声が出てしまいますが…)。子どもの手を押さえて、「こればダメ」「しないでね」「水がなくなったら困るよ」のように教えてください。「水の出しっ放しはダメだけど、お風呂の時間にじょうろ遊びをするのはどう?」と代替案を加えるのもよい方法だと思います。

子どもの得意な方法で教える

2歳児はとにかくやる気いっぱいなのですが、大人とは違った世界の見方をしているのです。これが、2歳が(大人にとって)イヤイヤ期と呼ばれる所以だと思いますが、子どもの得意な方法で関われば、スムーズに行くことも多いです。

この年齢は感覚器官を通して世の中を学んでいるので、言葉で言われるより、やり方を見たり触ったりして覚えることが得意です。また、自分でやりたい・決めたい気持ちが強いので、その欲求をうまく満たす関わりを考えていきましょう。

*前回の記事では、「感覚の敏感期」について詳しく紹介しています

とにかくやり方を見せる

私の勤務先では、棚に置いてある教具の中から子どもが好きなものを選んで活動しますが、「出したものは自分で片付ける」というルールがあります。初めての子どもには「片付ける」という言葉は通じませんので、使い終わった教具を子どもに手渡して棚の場所を示し、「ここに置いてね」と伝えます。子どもは自分で運んで行って指定された場所に置きます。

次の機会には同じように子どもに教具を渡して、「あそこだよ」と伝えます。これを繰り返していると、そのうち子どもは自然に使い終わったものをしまうようになります。時々忘れてしまう時もありますが、「忘れているよ」と声をかければ、「ああそうだった」という顔で戻ってきます。子どもの中で「片付ける」という秩序感が育ったのでしょう。

ハサミの使い方を教える時も同じです。子どもの隣でハサミで切る様子をゆっくり見せると、子どもは何も言わずに私の手元をじいっと見ています。子どもが見ることに集中できるように、あれこれ言わずに黙って見せます。

子どもがハサミで切りはじめても最初はうまくいきません。様子を見ながら頃合いで「手伝ってもいいかな?」と声をかけてから、ハサミに手を添えて一緒に切ります。うまくいきそうなら、少しずつ手を離します。

「自分で決めた!」という満足感を

2歳児には「自分で決めた」という感覚がとても重要です。着る服を自分で選びたい子どもには、取り出しやすいように着替えボックスの中身を整える、選択肢を絞るなどのサポートをします。時間がないときは「これとこれ、どっちにする?」でも十分です。

寝る前に読む本も少数精鋭にして選びやすいように。時間がない時は「今日は1冊しか読む時間がないんだ。これとこれならどっちがいい?」と聞けばいいのです。

なるべくルーティン通りにする

子どもはルーティンが大好き。同じ順番で同じことをすると落ち着くので、できるだけ毎日の生活リズムを同じにするよう心がけます。

見通しが立つ状態を好むので、予定を先に伝えておくのもよいです。毎日遊んでいる公園に明日は予定があって行けないとしたら、「明日は来られないから、今日たくさん遊んでおこうね」と伝えれば、次の日にグズる時間は短くて済みます。

公園から帰る時間の10分ほど前になったら「あと少しで帰るよ」と声をかけたり、「あと1回ブランコに乗ったら帰るよ」と具体的な言い方をしておくのもよいです。いきなり「もう帰るよ」と遊びを中断させるよりも、子どもが気持ちを切り替えやすくなります。

今回は私が経験した事例を紹介しましたが、子どもによっても特性が違うと思います。ぜひ家庭で子どもの様子を観察してみてください。

<ライター/堀田はるな>

モンテッソーリ原宿子供の家・モンテッソーリすみれが丘子供の家教員、保育士。アパレル業界、eコマース、金融など様々な業種でのマーケティング業務を経験後、教育の道へ転身。日本モンテッソーリ協会承認モンテッソーリ教員免許取得。著作「子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド」。

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