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共同コンポスターも登場、生ゴミは立派な「資源」に。

  • 2024.2.13

2020年にサーキュラーエコノミーのための反浪費法案が可決されて以来、売れ残り品やプラスチック容器に対する規制が次々に実施されているフランス。業者を対象にした規制が多い中、昨年イートインの使い捨てプラ容器が禁止されたのは一般市民の目に見える身近な変化のひとつだった。そして23年12月31日からフランス全土で義務化された生ゴミの分別回収は、一般消費者に直接関わる改革。家庭の生ゴミを可燃物として処理するのをやめ、リサイクルすることになったのだ。調理くずから食べ残し、ガーデニングの植物ゴミまで、何を分けるのか、ゴミはどこに出すのか、さらには家庭でのコンポスト(堆肥)作りのノウハウまで、メディアも一斉にこの問題を取り上げている。

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パリ市が配布した、生ゴミ回収の手引き。生分解性の袋に入れて、回収ボックスへ。

コンポストという言葉が浸透し、奨励され始めたのは10年ほど前。集合住宅に住むパリジャンにとって家庭用コンポスターは難問ゆえ、管理組合がイニシアチブを取る共同コンポスターは数を増やし、いまやその数は市内900カ所にのぼるという。また、市内の3つの区では、共同住宅に専用ボックスを置いて生ゴミを戸別回収するテストも施行された。ミミズコンポストを無料配布したり、マルシェに回収ボックスを設置したりと、パリでも"生ゴミ=資源"の啓発が進んでいる。

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共同コンポスターにアクセスできない市民は、マルシェや街角の回収ボックスへ毎回ゴミ出しすることに。市内に設置が進んでいる。

では、行政が回収する生ゴミはどこへ行くのだろう?首都圏のゴミ処理を司るSyctom(シクトム)によれば、パリで集めた生ゴミのほとんどはコンポスト場ではなくバイオガス工場に送られ、ガスは燃料に、副産物はバイオ液肥となる。生ゴミの資源化といえばコンポストと思いがちだが、意外と少数派なのだ。

一方で、これまで飲食店や大規模小売店、学校や病院の食堂など、企業の生ゴミ処理を請け負ってきたレザルシミスト社のように、回収先の近隣に処理場を設けて地産地消コンポストを販売するようなスタートアップ企業も活躍している。

今回の制度化で、パリ市は戸別回収を諦め、市内各所に生ゴミ回収ボックスを設置する方針を発表した。どの家からも徒歩3分以内、24時間いつでもゴミ出しできることが目標で、気になる衛生面も48時間ごとの回収&清掃でクリアするという。希望者には家庭用の小さな生ゴミボックス、ビオ・ソーも配布。通勤時にゴミ出しするパリジャンの姿は、はたして日常の風景になりえるだろうか?

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家庭用の専用ゴミ箱ビオ・ソーも希望者に配布。
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首都圏のゴミ回収を司るシクトムの解説動画より。パリ市民の生ゴミから生まれたバイオガスは、バス運行などのエネルギーになる。
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集めた生ゴミを全国10都市の近郊で処理するレザルシミスト社は、地元産の堆肥として庭園用などに販売している。https://alchimistes.co

*「フィガロジャポン」2024年3月号より抜粋

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