「浸透させたいからさらさら系しか使いません」、「パックすればだいたい浸透する」、「成分さえチェックすればOK」……
その思い込み、私たちが正します!
HAKUに搭載された画期的な浸透技術を開発
資生堂 沖嶋杏奈さん
肌に負担の少ない浸透技術を研究しています
HAKU メラノフォーカスEV
45g ¥11000(編集部調べ)/資生堂
オバジC25セラム NEOの製剤研究で浸透力アップに貢献
ロート製薬 平和也さん
濃度、成分ごとに最適な浸透処方を日夜開発中
オバジC25セラム NEO
12ml ¥11000/ロート製薬
リポソーム アドバンスト リペアセラムの処方を担当
コーセー研究所 スキンケア製品研究室 池田裕政さん
処方の工夫次第で浸透力は大きく変わります
リポソーム アドバンスト リペアセラム
50ml ¥12100/コスメデコルテ
Q. そもそも浸透するってどういうこと?
A.美容成分が角層の奥深くまでいきわたっている状態
肌の最大のバリア機能である角層の奥深くまで、美容成分がいきわたった状態のこと。スキンケア時に感じる“肌になじんだ”という感覚や浸透感とは異なり、浸透しきるまではやや時間がかかる。
Q. 浸透力は何で決まる?
A.成分の大きさ、化粧品の基材、肌状態、一緒に配合する成分、などあらゆる要素で決まります
浸透力は、成分そのものの大きさや、水に溶けるのか油に溶けるのかといった成分の性質、成分が溶け込む基材の種類などが作用しあって決まっている。ほかにも肌の状態や一緒に配合されている成分との相性なども重要。
【みんなが知らない!】浸透のハナシ
テクスチャーと浸透のしやすさは別物
さらりとしたものは浸透しやすく、とろりと粘度を感じるものは浸透しにくい。そう考える人も多いかもしれませんが、その認識は正しくありません。基本的に、テクスチャーと浸透力に関連性はありません。すごく肌なじみのいいものでも、実際に調べてみるとほとんど浸透していないことも。その逆も然りなのです。テクスチャーはご自身の好みで選んでいただいて問題ありません(沖嶋さん)
“たっぷりのせる”が必ずしもいいわけではない
塗ったぶんだけ肌上の成分の量は増えるので、一見いいことのように思うかもしれません。しかし、製剤の種類によっては多すぎる量が不適切な場合も。スキンケアの種類によって最大効果を発揮する量を使用量として定めて提案しておりますので、メーカー推奨の量を守っていただくことがより効かせるための近道になります(池田さん)
塗った順に浸透するわけじゃない
美容成分は、塗った順ではなく浸透しやすい順に浸透していきます。一般的に水溶性の成分やサイズの大きいヒアルロン酸、コラーゲンなどの成分が浸透しにくく、レチノールなどの油溶性成分が浸透しやすいといわれています。では、油溶性のものを先に塗ったほうがいいのか、というとまた違って、油を先に塗ることで膜を張り、水溶性成分の浸透を妨げることも。化粧水など水っぽいものから塗るというのは理にかなっているのです。成分は、浸透しやすいものが浸透しにくいものを自動的に追い越して肌に広がっていきます(沖嶋さん)
あえて浸透させない成分もある
すべての成分が肌の内部で働くわけではなく、肌表面でこそ力を発揮する成分もあります。たとえば、(水分の蒸散を防ぐ)保湿の目的で配合する高分子のヒアルロン酸や、抗菌・殺菌成分など。どの成分も、どこに届けて効かせたいかを計算し、浸透力をコントロールして化粧品に配合しているので、塗るだけで必要な場所に届いているはずです(平さん)
成分表が似ていても中身や浸透力は全然違う
成分表からわかるのは、あくまで“材料”のみ。各成分の量、バランス、混ぜる順番など、絶妙な組み合わせで化粧品は成り立っています。そういった要素が少し変わるだけでも、中身も浸透力も違うものになってしまうんです。また、材料の“質”も重要。たとえば同じ牛肉でも、ひき肉なのかステーキなのか、国産かアメリカ産か、などの違いが料理の味に大きく影響しますよね。化粧品も同様で、材料の質によって効きが変わります(池田さん)
【VOCE読者から集まった】浸透のギモンをすべて解決!
Q. のせた量に比例して浸透量もアップする?
ロート製薬 平さん
相対的に浸透量は多くなるけど一定量を超えると浸透しづらくなります
「一定量までは、のせたぶんだけ浸透量も上がります。しかし、肌が抱え込める量には限界があり、2倍のせたから2倍浸透するという単純なものではありません。製剤の種類によっては逆効果となったり、続けて使うスキンケアの浸透を妨げる可能性も」
Q. 化粧水は細胞間脂質という油の膜に弾かれて浸透しないと聞きました……。
ロート製薬 平さん・資生堂 沖嶋さん
純粋な水ならそうですが油分が入っている化粧水は細胞間脂質になじみます
「角層になじむ保湿剤や油分が配合されているもの、また浸透させる技術が搭載されているものを選べば、化粧水はきちんと肌に浸透します」(平さん)
「本来角層は脂質で満たされており、水溶性の成分が弾かれやすいのは事実。なので、角層を水分で潤してあげ、水溶性の成分が入りやすい環境をつくることが大切です」(沖嶋さん)
Q. 油分を最初に入れるとその後の浸透を妨げない?
コーセー 池田さん
油分の種類によります。肌になじみやすい油分ならむしろその後の浸透を後押しします
「ひと口に油分といっても、肌になじんでやわらげるもの、表面に膜を張って保護するものなど種類がいくつも存在します。肌をほぐすタイプの油分なら、その後に使う化粧水のなじみを高めてくれるので、スキンケアの初めに使用しても問題ありません」
◆こんな油分ならむしろOK!
先行乳液など肌をほぐす油分
先行乳液や導入美容液など、スキンケアの最初に使うことを想定しているものは当然OK。硬くなった肌をやわらげ、成分を受け入れやすい状態へ導く。
AQ アブソリュート エマルジョン マイクロラディアンス
全3種 各200ml ¥11000/コスメデコルテ
◆こんな油分は最初に塗らないほうがベター
保護用のオイル、クリームなど膜を張るのが目的の油分
ケアの締めとして使うクリームやオイルなど、最初に使う想定でない油分を個人の判断で導入用に使うのは×。化粧水や美容液が入りにくくなってしまう。
Q. 効かせたい成分から塗るのはあり?
ロート製薬 平さん
一番初めに塗ることでほかのものに邪魔されず浸透力が上がる可能性も
「お手入れの中で最も重要視している、いわば“メイン”にしたい美容成分などがあれば、それを初めに塗るというのもひとつの手です。油分が多いものを避け、かつ浸透性にこだわったアイテムを選べば、効果を期待できる可能性が高まります」
Q. 浸透するまで待ってから次のステップにいくべき?
資生堂 沖嶋さん
次々にアイテムを重ねて肌の上で製剤が混ざると浸透性に影響がでてしまいます
「資生堂の製品は、浸透性を計算し成分の量や基剤とのバランスを細かく設計してつくっています。混ぜ合わせることを前提として設計されている製品以外は、肌の上で混ざることで緻密に考えられたバランスが崩れてしまい、本来の力を発揮できなくなる可能性があります」
Q. 洗い流すものに美容成分を入れて意味はある?
ロート製薬 平さん
吸着しやすい成分などを選んで入れているので意味はあります
「洗浄系のアイテムにはその性質に合った美容成分を厳選し、配合しています。たとえば、洗い流しても肌に残りやすい吸着型ヒアルロン酸や短時間で肌の中に浸透する成分など。洗い流すという前提できちんと効かせるための処方に仕上げているので、効果を期待していただいて大丈夫です」
◆クレンジング・洗顔
・肌表面で効かせたい成分
・吸着しやすい成分
を優先的に配合
◆美容液などの与えるスキンケア
・時間をかけて浸透する成分など
自由に配合できる
Q. メイクの上から塗った美容成分には効果があるの?
コーセー 池田さん
メイクの間をすり抜けて浸透する成分なら効果あり!
「もちろんメイクという膜があるぶん、通常であればその上から塗るものの浸透性は落ちてしまいます。しかし、メイクの膜をすり抜けて肌に到達する美容成分も存在し、それらを配合した製品であれば浸透を期待できることも。メイクの上から使用できる専用のアイテムの使用をおすすめします」
Q. 浸透させようとすればするほど、バリア機能が弱まらない?
ロート製薬 平さん
一時的にゆらぐことはあっても、すぐに戻ります
「浸透力の高さを謳っている製品は、確かに角層にゆらぎをつくって成分を引き込む設計になっていることもありますが、それは一時的なもの。化粧品として毎日問題なく使用できるよう処方設計し、安全性もきちんと確認しているので、よほどの敏感肌でない限り心配する必要はありません」
Q. 処方で浸透力をアップさせる方法はある?
資生堂 沖嶋さん
バリア機能に影響のない画期的な浸透促進剤を使って浸透力を高めています
「浸透促進剤は成分の浸透を助ける一方、バリア機能を低下させるという課題も。しかし、資生堂が開発したのは、バリア機能を低下させない新しい浸透促進剤。バリアを壊すのではなく、部分的に取り除くことで成分の浸透ルートをつくり、飛躍的に浸透力がアップ」
ロート製薬 平さん
美容成分が溶け込む製剤のバランスを調整し、高濃度の美容成分を浸透させやすく
「高濃度ゆえにカプセル化に向かないビタミンCを深く浸透させるため、ビタミンCそのものではなく、溶け込んでいる製剤のほうに着目。肌に近いバランスに調整した製剤にビタミンCを溶かすことで、肌が大量のビタミンCを自然に受け入れやすくなります」
コーセー 池田さん
独自のリポソーム技術で浸透しやすいカプセルに美容成分を閉じ込めています
「厳選された成分を特殊なカプセルに入れ、角層深くへと運ぶ“リポソーム技術”。その先駆者であるコスメデコルテでは、リポソームを構成する素材にもこだわりました。リポソーム浸透に加えて、リポソームの膜自体もバリア膜となり、肌を立て直します」
撮影/高橋一輝(近藤スタジオ) イラスト/MAKOTO 取材・文・構成/河津美咲