ネットバンクの普及やメガバンクによる通帳レスの推進などにより、紙の通帳が徐々に姿を消しつつあります。通帳レスはメリットが多い半面、預貯金が把握できずに遺産相続から漏れるなどの問題点が指摘されています。
今回は通帳レスに潜む4つの落とし穴を紹介しますので、通帳レスにするかどうかの判断材料として活用してください。
■本当に通帳レスにしていいの?
メリットを重視して通帳レスにすると、いくつか困ったことが発生します。通帳レスにする前に注意点を把握しましょう。
●注意点1:相続対策が大変
通帳レスは、紙の通帳の情報を電子化することです。もし、何らかの事情で急に亡くなったとき、通帳が手元になければ家族が資産の存在を把握できないかもしれません。
●注意点2:閲覧期間が限られている
入出金履歴のWeb上で閲覧可能な期間は件数単位、年単位など、銀行よって対応がまちまちですが、長期間にわたるお金の記録を保存したいのであれば、紙の通帳より利便性が劣ります。
通帳レス後も取引記録を保存したいのであれば、定期的にデータをダウンロードし、パソコンに保存するか、プリントアウトして保管しなければなりません。
●注意点3:紙の通帳と併用できない
通帳レスにすると、これまで使用していた紙の通帳は使用できなくなります。紙の通帳に戻す際は、窓口で再発行してもらわなければなりません。
●注意点4:情報管理が大変になる
従来に比べ、情報管理が大変になります。通帳を盗まれることがないかわりに、通帳の情報が盗まれる可能性があるからです。
特に注意しなければならないのはIDやパスワードの管理です。これらの情報が流出すると、不正利用されて自分の財産が盗まれてしまうかもしれません。また、2段階認証などにも対応しなければならないため、情報管理が紙の通帳よりも大変になります。
■注意点を踏まえて検討を
盗難リスクがなく利便性が高いとして使用が広がっている通帳レスですが、相続の大変さや取引記録の保存の煩雑さ、情報管理の大変さなどの注意点があります。
これから通帳レスにすることを検討している人は、こうした注意点も踏まえて変更するかどうか、決めたほうがよいでしょう。
文・馬場正裕(ファイナンシャル・プランナー) 高校教師・学習塾・予備校の講師を経て、現在は金融・保険などのマネー系Webライターとして活動中。主に、金融メディア、SDGsメディアに出稿している。