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川口春奈さん「気持ちを伝えるより相手を尊重するのも強さ」 映画「身代わり忠臣蔵」出演

  • 2024.2.8

俳優の川口春奈さん(28)が出演する映画「身代わり忠臣蔵」が2月9日から公開されます。赤穂浪士たちが亡き主君の無念を晴らそうと討ち入りを決行する「忠臣蔵」の物語をベースに、吉良上野介の身代わりに仕立てられた弟・孝証の奮闘を描いた時代劇コメディです。本作で、吉良家に仕える女中・桔梗を演じた川口さんに、作品への取り組み方や演じた役を通して感じた「強さ」についてなどをお聞きました。

これまでとは違った見方ができる時代作品

――本作は、史実である「赤穂浪士」事件を題材にしていますが、忠臣蔵にはどんなイメージがありましたか?

川口春奈さん(以下、川口): 圧倒的な男性社会の中で、女性が登場するイメージがあまりなかったんです。でも、今作ではムロツヨシさん演じる孝証と桔梗との恋愛模様も少し描かれていたり、コメディ要素が強かったりして、今まで私が抱いていた印象とは違った見方ができる作品だなと思いました。

それぞれのキャラクターもすごく個性的なんですよ。永山瑛太さんが演じる大石内蔵助や、林遣都さん演じる斎藤宮内と孝証のちょっとしたやり取りもクスっと笑えて、普段、時代劇を見ないような方や「歴史はよく分からない」という方もテンポよく楽しめる痛快なストーリーになっているので、ぜひ気軽に見に来ていただけたら嬉しいです。

朝日新聞telling,(テリング)

――待ちうけているのが「討ち入り」ということもあり、辛く悲しいシーンもありますが、随所に「笑い」が入ってくることで、ほっこりした気持ちになりました。

川口: 忠臣蔵の大筋のストーリーとあまり変わらないとは思うのですが、映画では友情などの人間関係の部分がより色濃く表現されているので、ずっと重たい話というわけでもなく、色々な感情を楽しんでいただけるかなと思います。

――時代劇ということで、ご自身なりに準備したことはありましたか。

川口: お着物を着る役は久しぶりだったので、最初は「大丈夫かな」と思っていたのですが、今作はベースにあるのは時代劇でも、所作や使う言葉ひとつひとつにはあまり制限がなく、現代と変わらなかったので、そこの不安は特に感じることなくできました。

――今回の映画は京都での撮影だったと伺いましたが、待ち時間はどのように過ごされていましたか。

川口: 待ち時間も桔梗の格好をしていたので、着物を着たまま外に行くわけにもいかず、1人で台本を読んだり、お部屋で静かに過ごしたりしていました。今回は日中に撮影が終わることが多かったので「今日は何を食べに行こうかな?」と、自分で行ってみたいお店を調べて食べに行くこともありました。京都のことは全然知らなかったので、タクシーの運転手さんに「何かおすすめありますか?」って聞いて、連れて行ってもらったラーメン屋さんが美味しかったです。

――太秦の撮影所はどんな雰囲気でしたか?

川口: アットホームな感じがしました。10年くらい前に一度太秦の撮影所にお邪魔させていただいたことがあるのですが、その時のスタッフさんがまた今回も担当してくださって、「おかえり!」と言っていただいたような感じで、10年という年月が経っていたとは思えないくらい自然に、温かく迎えていただきました。

――今作の出演を経て、もっと本格的に時代劇をやってみたいなという気持ちも芽生えたのでは?

川口: そうですね。時代劇に関わる機会はなかなか少ないですし、その時代を演じることの大変さや難しさ、やりがいも現代とはまた少し違うので、お話があればぜひまた演じてみたいです。

朝日新聞telling,(テリング)

かわいらしさの中に、強さとたくましさを

――今作で演じた桔梗は、原作とは名前もキャラクター設定も少し違っていましたが、どのように役を捉え、膨らませていったのでしょうか。

川口: 吉良家の殿に仕えてサポートするという役どころなので、縁の下で支えるたくましさもありながら、孝証さんが魅力を感じるような可憐なところもありつつ、凛とした強い女性像を意識して、桔梗という役に取り組みました。孝証と桔梗のやり取りはほっこりするシーンが多かったので、「なんかかわいいな」って思ってもらえるようなヒロインになれたらと思っていました。

――そんな孝証と上野介の二役を演じたムロツヨシさんとのシーンが多かったようですが、ムロさんとの共演はいかがでしたか。

川口: ムロさんとは今回10年ぶりくらいにお会いしたのですが、撮影でご一緒したのは数日だったんです。なので、撮影の合間にお互いの近況とかを話していたらあっという間に終わってしまって……。ムロさんご自身がとても優しい穏やかな方で、孝証というキャラクターもムロさんのお人柄も、全部が自分をリラックスさせてくれたので、変に構えたり不安になったりすることなく撮影することができました。

――ムロさんはかなりアドリブを入れてくる役者さんだそうですが、川口さんとのシーンでも?

川口: 細かいニュアンスを変えられてはいました。基本的にはムロさんがお1人で暴走されて、私(桔梗)はそれを見守る、ということがほとんどでした(笑)。でも、そういう2人の雰囲気が今作でのお互いのキャラクターに合っているのかなと思います。

朝日新聞telling,(テリング)

激動の時代を生きた江戸の女性に思うこと

――この時代ゆえの生きづらさや辛さは想像以上にあったかと思います。そんな中でも、桔梗には、男性を立て、控えめに支えながらも自分の芯を持った「強さ」を感じました。川口さんは江戸時代の女性についてどう思われますか。

川口: 生きることの重さや大変さは、私が想像しただけでは計り知れないくらいあっただろうし、その時代に生きた人にしか分からないと思いますが、きっと色々なことを経験して犠牲にしながらも、激動の時代をがむしゃらに、たくましく生きたんだろうなと思います。今作で演じた桔梗にもそう思うことが多々あったので、その強さを改めて感じましたし、尊敬しますね。

――演じていて、桔梗の強さを特に感じたシーンは?

川口: 後半の方で孝証が戦いの場に向かうと桔梗に告げるのですが、「戦いに行ってほしくない」と心配する気持ちや、寂しい、不安といったたくさんの感情が渦巻く中で、桔梗が自分の気持ちをグッと抑えこむシーンがあるんです。その場面を演じた時に、自分の感情を伝えることよりも、相手を尊重して、ただ静かに見送ることも「強さ」だと気づきましたし、その強さをもった人なんだと感じました。

■根津香菜子のプロフィール
ライター。雑誌編集部のアシスタントや新聞記事の編集・執筆を経て、フリーランスに。学生時代、入院中に読んだインタビュー記事に胸が震え、ライターを志す。幼いころから美味しそうな食べものの本を読んでは「これはどんな味がするんだろう?」と想像するのが好き。

■植田真紗美のプロフィール
出版社写真部、東京都広報課写真担当を経て独立。日本写真芸術専門学校講師。 第1回キヤノンフォトグラファーズセッション最優秀賞受賞 。第19回写真「1_WALL」ファイナリスト。 2013年より写真作品の発表場として写真誌『WOMB』を制作・発行。 2021年東京恵比寿にKoma galleryを共同設立。主な写真集に『海へ』(Trace)。

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