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グラフィックデザイナー・小林一毅の好きな器と、その付き合い方

  • 2024.2.4
〈ろくろ舎〉の椀

伝統的な蒔絵(まきえ)とモダンなグラフィックを組み合わせた漆椀

真塗(しんぬ)りと呼ばれる上質な塗りの椀は、福井県鯖江(さばえ)市の〈ろくろ舎〉製。内側には僕がデザインした“ウナギ”が蒔絵で描かれています。グラフィックを考える時はいつも、「おいしそうに見える」ことを大事にしているのですが、ウナギの柄は気分が豊かになるし、食欲がそそられる。

お吸い物をなみなみ注いだ中にこの丸い曲線が見えたら、縁起もいいし面白いかな、と。ご飯をしっかりよそってもいいし、おひたしの小鉢にしてもいい。使い続けると箔が削れて下の塗りが見えてくると思いますが、それって愛用した証しですよね。

蒔絵を手がけたのは80歳くらいの職人さん。僕の絵を見ながらフリーハンドで描いてくれました。漆の器は素敵だけれど、ちょっと敷居が高くて僕たちの生活にはまだ馴染みきっていない。グラフィックの文様を品よく取り入れることで、日用の器としての可能性も広がる気がしています。

〈ろくろ舎〉の椀
〈ろくろ舎〉は漆器の木地師でもある酒井義夫が営むブランド。ウナギの椀は、伝統的な漆椀をベースに塗りや柄をカスタムできる「オンリー椀」シリーズとして作られた。「真塗りの漆はそれ自体がとても美しいので、外側は無地のまま。外から見ると穏やかな景色だけれど、中を覗くとハッとする点が気に入っています」

profile

グラフィックデザイナー・小林一毅

小林一毅(グラフィックデザイナー)

こばやし・いっき/1992年滋賀県彦根市生まれ。資生堂クリエイティブ本部に所属後、2019年に史上最年少でJAGDA新人賞を受賞。〈MILKBREW COFFEE〉など店舗やブランドのグラフィック、パッケージを手がける。

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