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【上野】東京国立博物館 特別展「本阿弥光悦の大宇宙」は凄い!

  • 2024.2.5

本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)の大宇宙、美の世界にビッグバン

東京国立博物館 平成館で開催中の特別展「本阿弥光悦の大宇宙」[2024年1月16日(火)~3月10日(日)]で光悦の深淵なる美意識の宇宙に出会いました。

本阿弥家の家職に関わる家伝を聞き書きした『本阿弥行状記(ほんあみぎょうじょうき)』(原本・江戸時代・17世紀、天保13年(1842)写 兵庫・清荒神清澄寺(きよしこうじんせいちょうじ) 鉄斎美術館蔵)では「生涯へつらい候事至てきらいの人」といわれた光悦。

今に残る光悦ゆかりの作品は、斬新な目を奪うものばかり。光悦は「へつらい」が「きらい」な個性の強い天才芸術家だったのでしょうか。 本展は、本阿弥家の家職「刀」と、裕福な京都の町衆(まちしゅう)の篤い「法華信仰」と血縁を通して結ばれた強い絆「信」に注目し、光悦の「漆」「書」「陶」の天才の宇宙を観てみようという展覧会です。

※特別な許可を得て撮影しています。館内は撮影禁止です。

出典:リビング東京Web

特別展「本阿弥光悦の大宇宙」 東京国立博物館

光悦の小宇宙 超新星のインパクト 国宝《舟橋蒔絵硯箱(ふなばしまきえすずりばこ)》

会場入り口から宇宙を貫く超新星爆発なみのインパクト、本阿弥光悦作、国宝《舟橋蒔絵硯箱》が輝いてお出迎えです。

漆工芸の硯箱の常識を超えた盛り上がったフォルム。方形、角丸(すみまる)、被蓋造(かぶせぶたづくり)。金蒔絵の硯箱の蓋表には黒々とした鉛の板が貼られ、豪華さとモダンな意匠が特徴。

光悦流のかな文字が銀金貝で「東路乃 さ乃ゝ かけて濃三 思 わたる を知る人そ なき」の文字が散らされています。 源等(みなもとのひとし)「後撰和歌集(ごせんわかしゅう)」の歌で、「佐野の舟橋」の「舟橋」以外の文字が表されている中世からの歌絵意匠。和歌を知る人には分かる教養のきらめきをまとう光悦の小宇宙。

 

出典:リビング東京Web

国宝 舟橋蒔絵硯箱 本阿弥光悦作 江戸時代・17世紀 東京国立博物館蔵

光悦の宇宙を貫く美と法華信仰(ほっけしんこう)「娑婆即寂光(しゃばそくじゃっこう)」

光悦の面影を伝える《本阿弥光悦坐像》と《本阿弥光悦肖像》

京都で、刀剣鑑定を家職とする室町時代以来の名門の家に生まれた本阿弥光悦は、自身も優れた刀剣鑑定の目利きでした。

本阿弥家は、一族の中で婚姻関係を結び一族の結束を固め、技術の漏洩も防いでいたと考えられています。光悦も従姉妹の妙得を妻に迎えています。 光悦の孫・光甫の作と伝えられる《本阿弥光悦坐像》は、法衣姿で頭巾をかぶり座った木彫の坐像。 富岡鉄斎(とみおかてっさい)賛、神坂雪佳(かみさかせっか)筆《本阿弥光悦肖像》も頭巾に法衣姿。

どちらも目立つのは大きな福耳。口角を上げ、下げた眉とオデコのシワまで柔和に笑う好々爺然としています。 光悦は、京都の町衆だけでなく、茶人や公家、大名家ともネットワークを築いていたとか。コミュ力の高い総合芸術プロデューサーだったのかもしれません。

本阿弥光悦坐像 伝本阿弥光甫作 江戸時代・17世紀、本阿弥光悦肖像 富岡鉄斎賛、神坂雪佳筆 大正4年(1915) 京都・光悦寺蔵 ※本作は展示会場にてご観覧ください。

重要美術品《短刀 銘 兼氏 金象嵌 花形見(めい かねうじ きんぞうがん はながたみ)》

光悦所持と伝わる重要美術品《短刀 銘 兼氏 金象嵌 花形見》 華やかな拵が見事です。

 

出典:リビング東京Web

重要美術品 短刀 銘 兼氏 金象嵌 花形見 志津兼氏 鎌倉~南北朝時代・14世紀、(刀装)刻鞘変り塗忍ぶ草蒔絵合口腰刀 江戸時代・17世紀

信仰と情熱が生み出す光悦の大宇宙の秘密、重要文化財《紫紙金字法華経幷開結(ししきんじほけきょうならびにかいけつ)》

光悦が一門の菩提寺・本法寺に経箱とともに寄進した重要文化財《紫紙金字法華経幷開結》。 平安の「三蹟」で知られる小野道風(おののとうふう)筆とされ、光悦の寄進状に「道風之法華経」とあるそうです。光悦の篤い信仰心が伺える品です。

光悦をはじめ京都の法華町衆は、信仰に従い、日々の家業や制作活動に精進することが、功徳を積み、仏の世界へ近づく修行とされていたと考えられています。

仮の世とされるこの世を仏国土・光明荘厳(こうみょうしょうごん)となすことが仏の御心に叶い功徳になれば、作品作りにも情熱が生まれ、高度な技を磨き、心の修行になったのでしょうか。 日蓮の教えにある通り「娑婆即寂光」。それが母・妙秀の教えに適うことでもあったとされています。篤い法華信仰と情熱から生まれた光悦の大宇宙の秘密が少し垣間見えて来たような気がします。

 

出典:リビング東京Web

重要文化財 紫紙金字法華経幷開結 平安時代・11世紀 京都・本法寺蔵 (注)会期中、部分巻替えがあります。

 

出典:リビング東京Web

重要文化財 立正安国論 本阿弥光悦筆 江戸時代・元和5年(1619) 京都・妙蓮寺蔵 全期展示

「光悦蒔絵」の斬新なデザイン、フォルムと重要文化財《花唐草文螺鈿経箱(はなからくさもんらでんきょうばこ)》

国宝《舟橋蒔絵硯箱》は、光悦が関わったとされる俵屋宗達風の意匠を持つ「光悦蒔絵」と称される漆工作品の中でも斬新なフォルムと個性的な意匠が魅力です。 光悦蒔絵の独特な意匠やモチーフには、光悦と謡曲(ようきょく)との深い関わりがあるとされています。

資料の上で唯一、光悦自身と直接関わりのある漆工芸、重要文化財《花唐草文螺鈿経箱》。 光悦が、本阿弥一門の菩提寺である本法寺に、《紫紙金字法華経幷開結(ししきんじほっけきょうならびにかいけつ)》および「箱机青貝」を寄進した時の経箱です。机は残っていませんが本作が箱にあたるとされています。

「法華経」の文字を中心に、全体に当時流行の朝鮮王朝時代の唐草文様が螺鈿で表現されています。光悦の唯一の基準作例ともされますが、他の漆工芸と作風が異なるところは光悦の宇宙で不思議の1つです。

 

出典:リビング東京Web

手前、重要文化財 花唐草文螺鈿経箱 本阿弥光悦作 江戸時代・17世紀 京都・本法寺蔵、奥、桜山吹図屛風 色紙:本阿弥光悦筆/屛風:俵屋宗達筆 江戸時代・17世紀 東京国立博物館蔵

 

出典:リビング東京Web

手前、重要文化財 扇面鳥兜蒔絵料紙箱 江戸時代・17世紀 兵庫・滴翠美術館蔵、他、特別展「本阿弥光悦の大宇宙」 第二章 謡本と光悦蒔絵 展示風景 東京国立博物館

光悦の書の美の宇宙 重要文化財《鶴下絵三十六歌仙和歌巻(つるしたえさんじゅうろっかせんわかかん)》

俵屋宗達が下絵を描いた金銀泥の鶴が華やかさと雅さも感じさせる重文《鶴下絵三十六歌仙和歌巻》。 光悦が肥痩のある古筆を思わせる漢字とかな文字で、宗達の鶴の下絵に呼応するかのように緩急のある素早い筆致で散らし書きを配した和歌巻の全巻公開です。

地上から飛び立ち、飛翔する宗達の鶴の群と、光悦の書が画面上で歌うように途切れのないリズムを作りながら巻末まで魅せる様は圧巻です。

後に尾形光琳が描く国宝《燕子花図屛風》(根津美術館蔵)の画面上を音符のようにリズミカルに斜めに上下を繰り返す燕子花が思い浮かびました。 光琳が本作を見たかどうかはわかりませんが、光琳も宗達と、光悦の宇宙に魅せられたアーティストの1人です。

 

出典:リビング東京Web

重要文化財 鶴下絵三十六歌仙和歌巻 本阿弥光悦筆/俵屋宗達下絵 江戸時代・17世紀 京都国立博物館蔵 全期展示

光悦の大宇宙、ラストを飾る「陶」のきらめき《黒楽茶碗 銘 村雲(むらくも)》

京都・鷹峯(たかがみね)と樂家(らくけ)との交流

元和元年(1615)、大阪夏の陣の後、光悦は徳川家康(とくがわいえやす)から京都・鷹峯の地を拝領。法華信仰を同じくする一族や町衆、職人を引き連れて芸術家村を作ります。

光悦は、自ら茶を点てたそうですが、作陶を始めたのは、鷹峯に移ってからのようです。自由に伸び伸びと自在に作られる光悦の茶碗は見る人を引き付けます。

本阿弥光悦の京屋敷跡からは、現在の樂美術館と樂家は南へ10分ほどの距離だそうです。当時、樂家の窯は現在よりも少し北にあったそうです。光悦と樂家の交流がイメージされる距離感です。

《黒楽茶碗 銘 村雲(むらくも)》

光悦の大宇宙、ラストを飾るのは「陶」、茶碗です。

《黒楽茶碗 銘 村雲》。少し光沢ある黒釉が総体にかけられていますが、口縁と高台脇は意図して釉薬をかけ外して、景色を作っています。

平らに切り放たれた口縁の潔さと、腰から高台にかけては丸みを帯びた様が1つの茶碗に見られるのが光悦の茶碗の面白み。

光悦と樂家(らくけ)長次郎(ちょうじろう)、道入(どうにゅう)の茶碗1つ1つが、個別の展示ケースで綺羅星のごとく並ぶさまは、光悦の深淵なる美の宇宙に包まれたような体験でした。

 

出典:リビング東京Web

黒楽茶碗 銘 村雲 本阿弥光悦作 江戸時代・17世紀 京都・樂美術館蔵

光悦の深淵なる美と信仰の大宇宙を体験する

東京国立博物館、特別展「本阿弥光悦の大宇宙」は、3月10日(日)まで。 明治時代、光悦を高く評価したのは、お雇い外国人のアーネスト・フェノロサだったそうです。フェノロサから情報を得た実業家で東洋美術コレクターのチャールズ・フリーアは来日し宗達と光悦の作品を爆買いして行ったとか。

世界にも認められた光悦の大宇宙。目に見えない仏の光、仏の願う世界を、芸術を通して、信仰を同じくする人々とこの世に表そうとした本阿弥光悦。

光悦の美意識が輝く大宇宙は、信仰と情熱の篤い熱量と、奇抜で斬新、驚きとワクワクに満ちていました。是非お出かけください。

特別展「本阿弥光悦の大宇宙」オリジナルグッズ

特別展「本阿弥光悦の大宇宙」オリジナルグッズは、オリジナル焼き印煎餅(1‚300円)、尚雅堂 和綴じメモ(715円)、重文《鶴下絵三十六歌仙和歌巻》てぬぐい(1‚320円)、重文《鶴下絵三十六歌仙和歌巻》筆ペン(900円)を購入。

てぬぐいは広げると、重文《鶴下絵三十六歌仙和歌巻》を思わせるような飛び立つ鶴の群れがモノクロでデザインされていてシンプルでオシャレです。お煎餅、和綴じメモと筆ペンも鶴の意匠です。

 

出典:リビング東京Web

特別展「本阿弥光悦の大宇宙」オリジナルグッズ

〇東京国立博物館 URL:https://www.tnm.jp/ 住 所:〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9 アクセス:JR 上野駅公園口・鶯谷駅南口から徒歩10分、東京メトロ上野駅・根津駅、京成電鉄京成上野駅から徒歩15分 お問合せ:050-5541-8600 (ハローダイヤル) 開館時間:9時30分~17時 ※入館は閉館の30分前まで 休 館 日:月曜日(祝・休日の場合は翌平日休館) 観 覧 料(総合文化展):一般 1,000 円/大学生 500 円 ※特別展は別料金になります。黒田記念館は無料です。 ※総合文化展は、事前予約不要です。入館方法の詳細は東京国立博物館ウェブサイトをご確認ください。 ※高校生以下、および満18歳未満と満70 歳以上の方は総合文化展は無料。入館の際に年齢のわかるものをご提示ください。 ※障がい者とその介護者1名は無料。入館の際に障がい者手帳などをご提示ください。 ※開館日・開館時間・展示作品・展示期間等、今後の諸事情により変更する場合があります。最新情報は、東京国立博物館ウェブサイト等でご確認ください。

〇特別展「本阿弥光悦の大宇宙」 Special Exhibition: The Artistic Cosmos of Honʼami Kōetsu 会期:2024年1月16日(火)~3月10日(日)※会期中、一部作品の展示替えを行います。 会場:東京国立博物館 平成館 休館日:月曜日、2月13日(火) ※ただし、2月12日(月・休)は開館 観覧料:一般 2,100円、大学生 1,300円、高校生 900円 ※中学生以下、障がい者とその介護者1名は無料。入館の際に学生証、障がい者手帳等をご提示ください。 ※本展は事前予約不要です。混雑時は入場をお待ちいただく可能性がございます。 ※最新の券売情報の詳細は展覧会公式サイトをご確認ください。

〇特別展特設ショップ 営業時間:博物館の開館時間に準ずる

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