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橋本愛さんが語る「言葉にしないこと」の意味。執着との向き合い方

  • 2024.2.19
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10代で芸能界デビューをし、演技派俳優としてキャリアを重ねている橋本愛さん。新宿ホスト殺人未遂事件に着想を得た映画『熱のあとに』(2月2日公開)では、愛する男を殺そうとした主人公・沙苗を演じています。現在28歳の橋本さんに、ご自身の内面や仕事との向き合い方についてうかがいました。

言うことより「言わないこと」のほうが大切

──『熱のあとに』の山本英監督は、橋本さんについて「SNSでの発信や連載を読ませていただくと、ご自身の言葉をすごく持っていらっしゃる方」と話されていました。普段から考えを深めるようにしているのでしょうか。

橋本愛さん(以下、橋本): 考えることはすごく好きですね。まだ輪郭のない感情や、なんだか定まっていない抽象的なものに対して、言葉によって形を与えるという行為がすごく好きなんです。それは音楽だったり映画だったり、形がないと思っていたものを言語化してくれた存在に、私自身がたくさん救われてきたから。言葉にして形づくることは、誰かにとっての力になったり鏡のような存在になったりもするので、私もそれができるようになりたいと思っています。

朝日新聞telling,(テリング)

SNSに対しては、最近意識が少し変わってきました。以前はなんでもかんでも言葉にしていたし、思いの丈を全部ぶちまけてやる、みたいに思っていました。でも今は、「何を言葉にしないか」にすごく気を配るようになりました。言うことより「言わないこと」のほうがある意味では大切で、それが今の段階だと感じています。

だから、言葉にして出すまでの関門がかなり増えましたね。前だったら3段階くらい突破すれば出していいかなと思っていたけど、今はスクリーニングがすごくてもはや何も言えない、みたいなこともあります(笑)。でも、私の言葉を待ってくれている人もいるので、これからも熟考しながら書いていきたいですね。

──言葉ととても真摯に向き合っていらっしゃいますね。

自分で執筆する連載をやっていくなかで気づいたことがあって、それは書くほうがうまく気持ちを整理できるということ。話すより書くほうが得意で、むしろ話すのはちょっと苦手。一方で書くとなるとスラスラと言葉が出てくるんですよ。

でも、言葉選びにはとても慎重です。表したい感情や伝えたいことにぴったり当てはまる語句じゃないと許せなくて。似たような言葉はいっぱいあるし、世の中で流行っている言い回しもあるけれど、それらを雑に扱うのも嫌。一番相性のいい言葉を見つけたいし、選んで表現したいと思っています。

朝日新聞telling,(テリング)

「執着は私を形づくるもの」

──映画のなかで橋本さんが演じる沙苗は、ある意味では執着ともとれるような愛のあり方を表現されていました。ご自身は執着とどのように向き合っていますか。

橋本: 少し前にあらゆる執着を手放したくなって、実践してみたんですよ。そうしたら確かにすごくラクだけど、なんだかふわふわしたような体感があったんです。まあ幸せだし、これでいいのかなと思ったのですが、一昨年くらいに「やっぱりダメだ、もっとしっかり地に足をつけて歩かなきゃ」と思う出来事がありました。

そのときに、執着って一概にネガティブなものではないし、むしろそれこそが自分を形づくるものになっていたり、私でいられる要素のひとつではないかなと思ったりしたんです。だから、その「度合い」をコントロールしようと。行きすぎると苦しいだけになるけど、自分の欲と向き合いながら前向きに行動を起こせる程度の執着に留めておく、という形に変化してきました。

朝日新聞telling,(テリング)

まとう“空気”を調整すること

──10代の頃からキャリアを積んでいらっしゃいます。モデルや俳優の仕事はオファーがあって成り立つ側面があるように思いますが、そういった状況で「やりたい仕事」を掴む秘訣はありますか。

橋本: そうですね、「動きながら待っている」という感覚はずっとあります。待つ、というのは自分ではコントロールできないことへの対応で、そうしながらも何をすれば目指す方向に行けるのかを客観視しながら見極めていく。そして、できることから行動にうつしていきます。そうすると、数年後にやりたかった仕事をいただけたり、巡り会いたかった人とご縁があったり。ずっとこれを繰り返してきているかもしれません。

──最近、特に意識されていることは?

橋本: 最近は撮っていただいた自分の写真を見るときに、まとっている空気をチェックするようになりました。オーラが見えるわけじゃないですが、オーラみたいなものというか。表情的にはちょっと崩れていてもまわりの空気が輝いていればいいし、反対に表情や顔が整っていても空気の色が違ったり沈んでいたりすれば、いいものではないなとか。

朝日新聞telling,(テリング)

人って、意外に人の顔をちゃんと見ていないと思うんですよ。その手前にある空気の方を先に察知する気がしているんです。だから、その場で足りていない空気の種類を判断して、もっとこうしてみようと動いています。

これまで自分に嘘をつくことがなかなかできなかったんですが、必要な嘘ならついていいのかもしれないと思って、初めてやってみることもしました。なんか自分が輝いていないなと思ったときに「私が世界一かわいい」って言い聞かせてみる。マインドコントロールに近いのかもしれませんが、意外といい方向にいったら、またちょっと違う表現で試してみたり。そうやって少しずつ出力するものを調整して、自分が行きたい場所を目指しているのだと思います。

■Kaori Teradaのプロフィール
編集・ライター。ウェルネス&ビューティー、ライフスタイル、キャリア系などの複数媒体で副編集長職をつとめて独立。ウェブ編集者歴は12年以上。パーソナルカラー診断と顔診断を東京でおこなうイメージコンサルタントでもある。

■植田真紗美のプロフィール
出版社写真部、東京都広報課写真担当を経て独立。日本写真芸術専門学校講師。 第1回キヤノンフォトグラファーズセッション最優秀賞受賞 。第19回写真「1_WALL」ファイナリスト。 2013年より写真作品の発表場として写真誌『WOMB』を制作・発行。 2021年東京恵比寿にKoma galleryを共同設立。主な写真集に『海へ』(Trace)。

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