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くどうれいんの友人用盛岡案内 〜手土産編〜 #10 山善のみたらしだんごともりおか絵巻

  • 2024.2.1

仕事で遠方によく行くようになって、お土産の買い方がすこし変わってきた。いままでは、せっかく行ったのだからそこならではのものを買って帰らねば!と思っていた。青森に行けばりんご、大阪に行けばたこやき、というような考え方だったのが、「その土地に愛されているお店」のものを食べるたのしみも、旅行の豊かさのひとつではないかと思うようになった。この場所と言えば!というものよりも、その土地に住んでいる人がこぞっておいしいと思うものが気になる。
となれば、どんな街にも和菓子屋さんはあるかもしれないけれど、盛岡で食べる和菓子もとってもおいしいのですよ。

それで、わたしは〈山善〉のお菓子が大好きって話。

まずは、みたらしだんご。

ああ、なんてうつくしいんだろう。強めの焼き目があるのがうれしい。とろっともちもちのだんごに、甘すぎないみたらしがたっぷりついている。香ばしい匂いともっちもちのだんご。だんごひとつは一口よりも少し小さめだから、気が付くとひょいひょい2、3本食べてしまう。
〈山善〉の本店は盛岡市材木町にあるので、このみたらしだんごは材木町の「よ市」でも販売されているのだが、このみたらしだんごがまた、焼きたてで温かくって最高!べアレンビールを片手に歩いていても、焼きたてのみたらしだんごが並んでいたら買ってしまう。わたしが食べたいから買うね!と言い、焼きたてだ~!と興奮しながら食べていると、ビール飲んでいるのにだんご?と怪訝(けげん)な顔をしていた友人も「一本もらっていい……?」と悔しそうに言ってくる。そして一口食べてあまりのおいしさに笑い出す。うまいっしょ?うんま。

そして、最近お土産として買うことが多いのはこの「もりおか絵巻」だ。
“当時の皇太子殿下美智子妃殿下にお買い上げ賜った自慢の銘菓”とのことで、昔からあることは知っていたけれど、なかなか食べてみる機会がなかった。一度食べたら「これは!」となり、定番のお土産になった。和菓子屋さんに売っているもので、常温で日持ちがするというのはけっこうありがたい。

持ち上げると、ふわん、とやわらかいのがすぐにわかる。すべすべの包み紙をほどくと真っ白い羽二重餅が顔を出す。

ぐるぐるになっているところには、小豆と黒胡麻と胡桃が入っている。マシュマロのようにぶわっとやわらかく、もっちりしていて、甘さが上品だ。濃い日本茶にもコーヒーにも合う。

そして、やっぱり生菓子も外せない。1月は干支菓子として「辰」があった。迫力のあるフォルムだけれど、顔がちょっとだけひょうきんでかわいい。「福椿」もうれしくなるような鮮やかな色合いで、おめでたい気持ちになる。

そしてなによりも、わたしが〈山善〉で好きなのがこの「うぐいす餅」!
冬の厳しさにおわりがちょっとだけ見えてきて、春のことをほんのすこし感じられるようになってくるとうぐいす餅の季節がやってくる。〈山善〉の大福やお餅の大きさはとっても小ぶりで、一口でぱくっと食べてしまえるくらいなのがよい。香ばしいきなこに、じんわりと甘さが染みるこしあんがぴったりくる。

わたしはいつもこのうぐいす餅を自分のとっておきのご褒美にしている。

〈山善〉には紹介したいお菓子がほかにもたくさんある。りんごの入った「啄木」というお菓子や、宮沢賢治ゆかりの名づけをされたものも多いのでぜひ見てほしい。

〈山善〉のお菓子は材木町の本店、盛岡駅のフェザン店、川徳店で購入できる。生菓子以外はオンラインでも購入可能。みたらしだんごは、「よ市」のない期間はフェザン店、川徳店で取り扱っている。

山善

住所:岩手県盛岡市材木町2‒21
TEL:019‒622‒2618(代表)
営業時間:9:00~18:00
定休日:元日
HP:公式サイト

くどうれいん

作家。1994年生まれ。著書にエッセイ集『わたしを空腹にしないほうがいい』(BOOKNERD)、『虎のたましい人魚の涙』(講談社)、絵本『あんまりすてきだったから』(ほるぷ出版)など。初の中編小説『氷柱の声』で第165回芥川賞候補に。現在講談社『群像』にてエッセイ「日日是目分量」連載中。近著に『桃を煮るひと』(ミシマ社)がある。

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