1. トップ
  2. 独走態勢に入ったソフトバンク「他球団の脅威になっている“2つのポイント”」とは?

独走態勢に入ったソフトバンク「他球団の脅威になっている“2つのポイント”」とは?

  • 2024.5.20
  • 33536 views
undefined
写真:SANKEI

日本のプロ野球も開幕からもうすぐ2カ月が経過しようとしています。同リーグに所属するライバル球団との対戦もそれぞれ2カード以上を消化し、今季のチーム力も見えてくる時期。そんな中、好調をキープしているのがパ・リーグ首位を走る福岡ソフトバンクホークスです。5月19日時点で39試合を消化し、27勝10敗2分。勝率は7割を超え、2位の北海道日本ハムファイターズに6ゲーム差をつけて独走態勢を築きつつあります。

今季のパ・リーグと言えば、リーグ4連覇を目指すオリックス・バファローズや昨季2位で怪物・佐々木朗希を擁する千葉ロッテマリーンズ、最強の投手陣を誇る埼玉西武ライオンズなど、開幕前の時点では混戦が予想されていました。

そんな中、早くも一歩抜け出しつつあるソフトバンク。その強さの要因はどこにあるのか――。データをもとに探っていきましょう。

他球団の脅威になっている2つのポイント

今季のソフトバンクを見て、「何がすごいか」と言われると、実は返答に困ってしまう専門家も多いはず。なぜなら、「全部すごい」からです。チーム成績を見ると、打率.258、本塁打26、得点162、防御率2.03がリーグトップ、盗塁数34も日本ハムに次いでリーグ2位。投打で他球団を圧倒していることがわかります。

もともと、分厚い選手層には定評のあったソフトバンク。近年は故障者の多さや世代交代にやや苦心していた印象がありますが、今季は「働くべき選手がしっかりと働いている」ことで実力通りの結果が出ていると言えるでしょう。

undefined
写真:SANKEI

今回は、その中でも特に他球団の脅威になっているポイントを2つほど挙げてみましょう。ひとつめが、「最強の外野手トリオ」です。今季のソフトバンクは開幕から基本的に「レフト・近藤健介選手、センター・周東佑京選手、ライト・柳田悠岐選手」でスタメンを固定して戦っています(柳田選手と近藤選手は指名打者で出場するケースもアリ)。そのうえで、打順は1番周東選手、3番柳田選手、5番近藤選手が指定席。近藤選手と柳田選手は現在、パ・リーグの打率&出塁率トップ2を独占。周東選手もそれぞれ4位に位置づけており、それが12球団最多の162得点という爆発力につながっています。

特に大きかったのが1番を打つ周東選手の覚醒です。昨季までは「足のスペシャリスト」の印象が強く、バッティング面では非力さや確実性の低さを指摘されることも多かった周東選手ですが、今季はバッティングに力強さが出て、確実性も上昇。持ち前のスピードはそのままパ・リーグ盗塁数1位に完全にリードオフマンに定着しています。柳田選手、近藤選手の安定感は“さすが”の一言に尽きるので、ここであえて語る必要もないレベルですが、この3選手の好調ぶりは他の打者にも好影響を及ぼしています。

それが、今季からチームに加わった山川穂高選手です。開幕前はFA移籍1年目で、昨季はほとんど公式戦に出場できなかった山川選手の状態を不安視する声もありましたが、現時点で本塁打、打点のリーグ二冠王。山川選手の前後を打つ3選手の存在が、良い意味で刺激となっているはずです。山川選手は4月13日に行われた古巣・西武戦で2本の満塁ホームランを放つという離れ業を見せてくれましたが、このとき、塁上には二度とも周東選手、柳田選手の二人が出塁していました。周東選手が出塁し、柳田選手からはじまるクリーンアップでそれを返す得点パターンは今季のソフトバンクのお家芸と言っていいでしょう。

モイネロ先発転向で空いたリリーフの穴を埋めた嬉しい誤算

undefined
写真:SANKEI

もうひとつ、特筆すべき要素が「リリーフ陣」です。チーム防御率2.03がリーグトップなのは前述のとおりですが、その中でも「リリーフのみの防御率」を見てみると、その数字は驚異の1.69。今季はモイネロ投手が先発に転向し、甲斐野央投手が西武へと移籍したため、リリーフの層にやや不安がありましたが、フタを開けてみれば松本裕樹投手、津森宥紀投手、杉山一樹投手といった面々が防御率0~1点台と抜群の安定感を見せています。クローザーのオスナ投手が本調子ではないのが気がかりですが、その不安を帳消しにするほどの絶対的な安心感が今のソフトバンクリリーフ陣にはあります。

中でも昨季一軍登板ゼロに終わった杉山投手の活躍は良い意味でチームの誤算だったと言えるかもしれません。もともと、投げるボールは超一級品。スケール感も抜群で「メジャー級」の呼び声も高かっただけに、開幕からの好調ぶりで一気に殻を破った感があります。

このように、今季のソフトバンクは突出したひとりのスーパースターがチームを牽引するのではなく、レベルの高い選手が複数揃い、それぞれが自分の役割をしっかりと果たしていると言えます。2017~2020年に日本シリーズ4連覇を果たした「強いホークス」がまさにそんなチームでした。

まだシーズンは100試合以上残っていますが、ここまでの戦いぶりを見る限り、今季のパ・リーグ覇権争いはソフトバンクを中心に回っていくと言っていいはずです。


花田雪
1983年、神奈川県生まれ。編集プロダクション勤務を経て、2015年に独立。ライター、編集者として年間50人以上のアスリート・著名人にインタビューを行い、野球を中心に大相撲、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど、さまざまなジャンルのスポーツ媒体で編集・執筆。著書に『あのプロ野球選手の少年時代』(宝島社)『オリックス・バファローズはいかに強くなったのか』(日本文芸社)がある。

※本記事は、5/19の情報です

の記事をもっとみる