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「将来的にチームを代表するバッターに」苦戦する度会にとって、“主砲の1軍昇格”がターニングポイントとなるか

  • 2024.4.27
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写真:SANKEI

開幕2戦連続ホームランという最高のスタートを切った横浜DeNAベイスターズのルーキー・度会隆輝選手が「プロの壁」に苦しんでいます。4月24日終了時点で打率は.202まで降下。それでも、三浦大輔監督は度会選手を一貫して1番で起用し続けています。苦しむルーキーを我慢して使い続ける、その理由とは?

最高のデビューから一転…

今季、ドラフト1位でDeNAに入団した度会隆輝選手。春季キャンプからルーキーらしからぬ明るいキャラクターと打撃センスを見せ、オープン戦では打率.434と絶好調。開幕戦で1番ライトに抜擢されるとプロ2打席目には初安打初ホームランをマークするド派手なデビューを飾りました。また、その翌日にもセ・リーグの新人としては史上初となる開幕2戦連発&4安打の固め打ち。まさに「最高のデビュー」を見せた度会選手でしたが、その後はやや勢いに陰りが見られるのが現状です。

4月に入ってからは月間打率が.171と低迷。本塁打も開幕2戦目を最後に出ていません。データを見ると、対右打者の打率が.273(55打数15安打)なのに対して対左は.088(34打数3安打)。左ピッチャーとの相性が極端に悪いのが分かります。打席の内容を見ると、高めやインコースは天性のバットコントロールで上手くさばけるのですが、アウトコース、特に低めのボールを空振りしたり、自分のスイングをさせてもらえないシーンが目立つように感じます。

ただ、これもある意味では「仕方のない」は現象と言えるでしょう。アウトコース&低めは、ほとんどのバッターが苦手にしているコースでもあり、そこが「弱点」なのは度会選手に限った話ではありません。また、オープン戦、開幕直後にあれだけ目立つ活躍をすれば他球団からのマークも厳しくなり、それだけ「研究」もされてしまいます。4月の時点でルーキーの度会選手がこれだけ対策されているのも、良い意味で度会選手が規格外のルーキーだからこそ

三浦監督がどんな不調でも度会選手を開幕から1番で起用し続けるのも、「自力で乗り越えてほしい」というメッセージにほかなりません。もちろん、他に「1番」を任せられる選手がいない、という事情もあるでしょうが、不振が続きながらも我慢して起用を続けるその姿勢からは「将来的にチームを代表するバッターに成長してほしい」という親心が透けて見えます。

プロで活躍するために必要な“割り切り”

今後、度会選手がこの「プロの壁」を乗り越えるために必要なこと――。それは苦手なアウトローの見極め」になってくるでしょう。積極性は度会選手の魅力のひとつなので、無理にボールを「見る」必要はないかもしれませんが、どうやっても打てないようなボールにまで手を出す必要はありません。特に左ピッチャーの外角へ逃げるボールなどは、「ストライクを取られても仕方がない」くらいの割り切りを見せることも必要になってくるはずです。

また、先日チームに加入した筒香嘉智選手の一軍合流タイミングも、度会選手にとっては「ターニングポイント」になりそうです。筒香選手が復帰すれば、当然ながら4番、もしくはクリーンアップでの起用が予想されます。当然、打順も組み替えることになるはずなので、その時点で不調が続いていれば打順を少し下げ、もう少し「余裕」の出せる下位で起用するケースも生まれてくるかもしれません。

確かに現時点での度会選手は「プロの壁に苦しんでいるように思えます。ただ、プロ1年目の4月の時点で課題がすでに見えていることは、長いプロ野球人生を考えればポジティブに捉えることもできます。

シーズン中にこの壁をクリアすることができるようであれば、強力DeNA打線にもうひとり、“頼れるバッター”が加わることになります。セ・リーグは首位から最下位までが4.5ゲーム差(4/24時点)にひしめいており、まだのど球団も飛び抜けていません。

筒香選手が加入し、度会選手が覚醒する――。そうなれば、DeNAが一気にセ・リーグの台風の目になる可能性も十分あるはずです。

天性のスター性とバッティング技術を持つ度会選手。苦しい時期を乗り越えたその先には、かならず「答え」があるはずです。


花田雪
1983年、神奈川県生まれ。編集プロダクション勤務を経て、2015年に独立。ライター、編集者として年間50人以上のアスリート・著名人にインタビューを行い、野球を中心に大相撲、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど、さまざまなジャンルのスポーツ媒体で編集・執筆。著書に『あのプロ野球選手の少年時代』(宝島社)『オリックス・バファローズはいかに強くなったのか』(日本文芸社)がある。

※数字はすべて4月24日終了時点

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