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改めて実感する「松井秀喜の凄さ」…“ステロイド全盛期”にメジャーリーガーたちと対等に肩を並べた日本人スラッガーの功績

  • 2024.4.22
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ドジャースの大谷翔平選手が日本時間4月22日(現地時間21日)のメッツ戦で今季5号ホームランを放ち、メジャー通算本塁打数を176本としました。この記録は松井秀喜さん(ヤンキースほか)が持つメジャーリーグでの日本人最多本塁打記録を更新するメモリアルアーチ。数字の上でも“日本人最強スラッガー”の称号を得たことになりますが、前記録保持者の松井さんの“偉業”が色褪せるわけではありません。大谷選手が記録を更新した今こそ、改めてその“すごさ”を振り返ってみましょう。

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写真:AP/アフロ

松井さんは2003年から2012年まで、メジャーで10年間プレーして通算175本塁打を記録しました。大谷選手は今季でメジャー7年目なので、量産ペースでも松井さんを上回っていることになります。しかし、大谷選手が23歳で海を渡ったのに対し、松井さんがメジャーへと移籍したのは28歳。「成長途上」の大谷選手に対し、松井さんは「全盛期」にメジャー入りし、そこから38歳までメジャーでプレーしています。ちなみに、日本時代の大谷選手は通算48本塁打ですが、松井さんは332本塁打。「日米通算」では507本塁打と、大谷選手の224本塁打を大きく上回っています。

選手としてメジャー移籍したタイミングが違うため、一概に比較はできませんが、通算本塁打数では記録を越されても、まだまだ松井さんが持つ“記録”は多くあります。

"全盛期"で移籍する難しさと"驚異的"な成績

ひとつが、シーズン20本塁打以上5回という記録。ちなみに大谷選手は昨季時点で20本塁打以上を4度マークしています。ちなみに、日本人によるシーズン20本塁打以上は松井さんと大谷選手、そして昨季の鈴木誠也選手(カブス)の3人しか達成していません。松井選手はメジャー移籍後、ケガによる離脱も経験していますが、「レギュラー」としてフルシーズン働いた年に関して言えば、引退前年の2011年を除いてすべて20本塁打以上をマーク。一般的には「衰える」と言われる30代を過ぎてもこの数字を残したことは、驚異的と言っていいでしょう。

また、本塁打だけでなくスラッガーの証である「打点の多さ」も松井さんの特徴のひとつ。渡米1年目からの3年連続を含め、キャリアで4度のシーズン100打点以上をマークしています。大谷選手がシーズン100打点をマークしたのは2021年の一度だけで、実は日本人の「シーズン打点では松井さんが上位4位までを独占(5位が大谷選手)。特に2005年に記録した116打点は今もアジア人最多打点記録として残っています。

1位 松井秀喜 116打点(2005)
2位 松井秀喜 108打点(2004)
3位 松井秀喜 106打点(2003)
4位 松井秀喜 103打点(2007)
5位 大谷翔平 100打点(2021)

ステロイド全盛期に日本人がメジャーリーガーと対等に戦う

本塁打でも打点でも、日本人、アジア人として突出した記録を残している松井さんですが、付け加えておきたいのが、プレーした時期です。松井さんがメジャーで主にプレーした2000年代は、「ステロイド時代」とも呼ばれ、メジャーリーガーの間で筋肉増強剤の使用が蔓延した時代でもありました。

2013年に「バイオジェネシス・スキャンダル」と呼ばれる大規模な薬物スキャンダルが表沙汰になり、多くの大物メジャーリーガーが1990年代後半~2000年代にかけて、ドーピングを行っていたことが発覚。アメリカ中を巻き込む大騒動となりました。

そんな中、松井さんは一度も疑惑すらかけられることなく、筋骨隆々のメジャーリーガーを相手にこれだけの数字を残したのです。

「ドーピング全盛期」とも言える時代にアジア人スラッガーとして孤軍奮闘した松井さん。自身は大谷選手について「僕とは比べ物にならない」と謙遜するコメントを残していますが、それもまた松井さん“らしい”言葉かもしれません。

紳士で、謙虚で、多くの人から愛される。厳しいと言われるニューヨークのメディアからグッドガイ賞に選出されたこともあるなど、人柄のすばらしさでも知られた松井秀喜さん。

通算本塁打記録こそ大谷選手に更新されましたが、その偉業は決して色褪せることなく、多くのファンの脳裏に焼き付いているはずです。


花田雪
1983年、神奈川県生まれ。編集プロダクション勤務を経て、2015年に独立。ライター、編集者として年間50人以上のアスリート・著名人にインタビューを行い、野球を中心に大相撲、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど、さまざまなジャンルのスポーツ媒体で編集・執筆。著書に『あのプロ野球選手の少年時代』(宝島社)『オリックス・バファローズはいかに強くなったのか』(日本文芸社)がある。

※本記事は、4/22の情報です

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