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今シーズンのプロ野球で"カギとなる打順"…チームの顔を支え、相乗効果を生む重要なポジション

  • 2024.4.25
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写真:PIXTA

野球の世界では年月とともにそれまで「常識」と考えられていたものが覆され、新しい常識が生まれています。そんな中、特に「考え方」が大きく変化しているのが打順」です。今回は、ひと昔前とは大きく異なる「打順の考え方」について解説していきましょう。

メジャーの最強打者が"2番"を打つシンプルだが合理的な理由

メジャーを中心に大きく「考え方」が変わったのが「2番打者」です。かつてはクリーンアップと呼ばれる3~5番にチームの強打者を置き、2番打者はクリーアンプへのつなぎ役」を担うケースがほとんどでしたが、現在のメジャーリーグではこの2番にチームの最強打者を置くケースが大半を占めるようになりました。ドジャースでプレーする大谷翔平選手も今季、開幕から「2番打者」として出場を続けています。

日本では「最強の打者は4番」という考え方が今も根強く残っていますが、メジャー流の考え方はこうです。

良い打者をなるべく多く打席に立たせる

非常にシンプルな考え方ですが、たとえば初回の攻撃で三者凡退に終わってしまうと、4番には打順が回ってきません。しかし、2番なら確実に打順が回ってくるうえ、そのシチュエーションはノーアウトもしくは1アウトに限定されます。

この考えかたであれば「2番より1番のほうが打順が多く回る」とも言えますが、メジャーでは1~2番に最強打者を並べることも多く、ドジャースでも1番ベッツ選手、2番大谷選手の打順を組んでおり、昨季までのエンゼルスでも大谷選手とトラウト選手が1~2番でコンビを組むケースが多く見られました。

日本ではチームによって違いが

ちなみに日本ではメジャーほど「2番打者最強説が浸透しているわけではなく、たとえば阪神は2番に中野拓夢選手を置き、3~5番に長打力のある選手を置く「オールドスタイル」を採用しています。ヤクルトもチーム最強打者の村上宗隆選手を一貫して4番で起用し続けており、こちらも2番には西川遥輝選手など、どちらかというと「つなぎ役」に適したバッターを配置することが多いようです。

その一方でロッテは2番に長打力のあるソト選手や昨季本塁打王のポランコ選手を配置するなど、「メジャー流」の打順を組んでいます。また、日本ハムも「スラッガータイプ」世までは言えませんが2番に首位打者も獲得した松本剛選手を起用するケースが多く、どちらかと言えばメジャー流のオーダーと言えそうです。

「2番」の考え方は現在の日本球界ではチームによって異なっており、スタメンオーダーを見てメジャー流か日本流か、確かめてみるのも面白いかもしれません。

今シーズンのプロ野球で"カギとなる打順"

また、今季のプロ野球を見て「カギ」を握りそうな打順がもうひとつあります。それが「5番打者」です。クリーンアップ最後の砦”として、おもに塁上に埋まった走者をかえすことを求められる役割ですが、セ・リーグでは開幕から好調だった中日が4番の中田翔選手の後ろに昨季ブレイクした細川成也選手を配置。巨人も開幕当初は4番岡本和真選手の後ろに坂本勇人選手を起用。坂本選手の好調に後押しされるように、岡本選手が打ちまくるという相乗効果も見られました。逆に、坂本選手が調子を落としてからチームの勢いもやや弱まったのも5番の重要性を証明しているかもしれません。また、ヤクルトも4番村上選手のあとを打つ5番にサンタナ選手を据え、両者ともに開幕から好調をキープしています。

パ・リーグに目をやると、やはりと特筆すべきはソフトバンクの5番近藤健介選手。昨季、本塁打&打点の二冠王を獲得した近藤選手は今季も絶好調。FA加入した4番山川穂高選手が開幕からしばらく波に乗れなかった中で、しっかりと高打率をキープ。そのおかげで、「4番が打てなくても5番がかえす」流れが定着。山川選手が復調の気配を見せると打線の威力がさらに増し、パ・リーグ首位争いの中心となっています。

「5番打者」の重要性はチームの“顔”でもある4番打者の役割ともリンクしています。ここまで挙げた5番打者に共通して言えるのは、「4番を後ろから支えている」という点。細川選手もサンタナ選手も近藤選手も、前を打つ4番の選手の後ろでしっかりと結果を残すことで4番打者のプレッシャーを半減させ、それが相乗効果を生んでいると言えます。

メジャー流の「2番」と、今季のカギを握りそうな「5番」。まずはこの2つの打順に注目してみるだけでも、野球観戦をより楽しめるはず。ぜひTRILL読者のみなさんも、プロ野球を見るときは「打順」も気にしてみてください!


花田雪
1983年、神奈川県生まれ。編集プロダクション勤務を経て、2015年に独立。ライター、編集者として年間50人以上のアスリート・著名人にインタビューを行い、野球を中心に大相撲、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど、さまざまなジャンルのスポーツ媒体で編集・執筆。著書に『あのプロ野球選手の少年時代』(宝島社)『オリックス・バファローズはいかに強くなったのか』(日本文芸社)がある。

※本記事は、4/24の情報です

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