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「今年が終わってしまう可能性もある」突如訪れたチャンス…崖っぷち投手の執念を感じた"覚悟の100球"

  • 2024.4.11
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写真:SANKEI

ドラゴンズの左腕、松葉貴大投手が崖っぷちの状況でチャンスを掴んでいます。4月10日のDeNA戦、今季初先発のマウンドで6回途中1失点の好投を見せています。その裏側には、数々の苦難を乗り越えてきたベテランならではの矜持と、静かな闘志が燃え続けていたのです。

キャンプで言われた厳しい現実

ドラゴンズ投手陣の層の厚さはリーグ屈指です。小笠原慎之介投手、柳裕也投手、涌井秀章投手といった主力選手に加え、高橋宏斗投手や昨年ドラフト1位ルーキーの仲地礼亜投手など、次世代を担う若手も台頭しています。2019年にオリックスからトレードで加入した松葉投手は、今季のローテーション入りは容易ではありません。昨季はわずか1勝と辛酸をなめたプロ12年目の33歳は、開幕から2軍で調整を続けていました。

また落合英二コーチは春季キャンプで、ローテーション入りを目指す松葉投手に向けてこう語っています。

「厳しいことを言うようだけれど、読谷(2軍)で普通にやっていて頑張っていますからってチャンスはもらえないと思うよ」「そりゃあ仲地を使うよ、お前がよっぽどアピールしないと

この言葉を受け、松葉投手は意識を変えたそうです。大塚投手コーチも「もうリミッター解除ですよ。行けるとこまで。5回のリミットは解除してもらう」とドーム限定5回までの今までのピッチングスタイルの変更を促しています。

そして2軍戦3試合に登板し2勝、防御率0・56と着々と準備してきた松葉投手。転機となったのは4月4日。当初、ウエスタン・リーグでの登板が予定されていましたが、突如1軍の先発が告げられました。準備期間はわずか中5日。しかも相手は強力DeNA打線。先発候補はたくさんいる中で、まさに「崖っぷち」とも言える状況での登板でした。

試合前、松葉投手は「わくわくはしない。この1回のチャンスで今年が終わってしまう可能性もある。不安の方が大きい」と率直に話しています。

野球人生を懸けた魂の100球

 しかし、松葉投手は冷静でした。キャンプからフォームを見直し、安定感を向上させることに注力してきました。自身の持ち味である「ストライクゾーンでの勝負」「打たせて取る」ピッチングを貫く覚悟も固めていたのです。

試合はまさにその通りの展開となりました。145キロを超える速球はないものの、丁寧にコーナーを突き、DeNA打線を翻弄しました。3回にピンチを招き1点を失うも、後続を断ち切り最少失点で切り抜けています。今季初登板の松葉投手の100球は、執念すら感じる投球でした。

ヒーローインタビューで松葉投手は「今日のチャンスをつかめなかったら、次は簡単には回ってこないと思った」と語っています。その言葉の裏には、数々の挫折と、そこから這い上がってきたベテランの矜持が垣間見えます。

また立浪監督も試合後「本人は完投って言ってましたけど(笑) 序盤は低めに球をうまく集めて自分の投球ができたと思います」と評価しています。

今回の好投は、松葉投手にとって単なる1勝ではありません。野球人生を懸けた、大切な試合だったのです。また今回の投球内容は、厳しい競争の中で生き残るための、大きな一歩となっています。彼の姿は、若手選手にもベテラン選手にも刺激を与えたことでしょう。

松葉投手の挑戦は続きます。ローテーション定着、そしてチームの勝利への貢献。ドラゴンズはチーム防御率1.85と、リーグ屈指の成績を収めています。その中で先発ローテーション入りは決して平坦ではありませんが、松葉投手には、常に「諦めない」という強い意志が刻まれています。今後も、ドラゴンズの選手を熱く見守っていきましょう。


※本記事は、4/11の情報です

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