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「特に大きかった」山本由伸の大型契約の裏にあった"日本人選手の活躍"…大谷でもダルビッシュでもない投手とは?

  • 2024.4.24
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写真:AP/アフロ

日米が注目する今季のメジャーリーグも、開幕してから約1カ月が経過。ドジャースへと移籍した大谷周平選手をはじめ、多くの日本人選手が期待通りの活躍を見せています。今回はニューヨーク・メッツなどでもプレー経験のある五十嵐亮太さんに、メジャー移籍1年目の山本由伸投手について伺いました

※本稿は発売中の『メジャーリーグ観戦ガイド2024 大谷翔平 新たなる挑戦』(コスミック出版)の内容を一部抜粋・再編集して掲載しています。

山本由伸の契約の裏には、日本人選手の活躍アリ!

――大谷翔平投手の所属するドジャースにオリックスから移籍してきた山本由伸投手。メジャー1年目ながら投手史上最高額となる12年3億2500万ドルでの契約は驚きを持って報じられました。

五十嵐 僕も、金額そのものには驚きました。メジャーで1球も投げていない投手が、総額だけで言えばヤンキースのエースであるゲリット・コール以上の価値を認められたわけですから。ただ、その一方で日本人選手の評価が高まっている理由自体は納得できます。山本投手への評価は、大谷選手はもちろんこれまで日本人選手がメジャーでしっかりと結果を残したからこそ。特に大きかったのが千賀滉大投手の活躍でしょう。昨季、メジャー1年目で最終的にはメッツのエースと呼べるまでの位置に上り詰めた。メジャー関係者から見たら「千賀がコレだけやれたのだから、日本で千賀以上の数字を残して、なおかつ年齢も若い山本はもっとやれるはずだ」と感じたはずです。

――日本のプロ野球での実績がこれまで以上にメジャーで評価されるようになった?

五十嵐 レベルの差自体が確実に縮まっていると感じます。投手だけでなく、近年は野手も鈴木誠也選手、吉田正尚選手が良い契約を結んで結果を残していますよね。日本人でなくてもNPBで結果を残して外国人選手がアメリカに戻って活躍するケースも多いですし、逆にメジャーやマイナーでプレーした外国人選手が日本に助っ人として移籍しても、以前ほど活躍することがむずかしくなっているそれだけ日本球界のレベルが底上げされているこということです。

――その意味では山本投手も含め、今季から海を渡った選手たちにも活躍が期待できる?

五十嵐 もちろん、大いに期待していいと思います。ただひとつ、メジャーで成功するカギを挙げるとすれば「対応力」です。ボール、気候、マウンド……メジャーと日本では大きく環境が変わるのも事実。そこにどうやってアジャスト(対応)していけるか。たとえば千賀投手も「ゴーストフォーク」が話題になりましたが、カットボールもかなり良くなりました。日本で通用した武器を磨くのはもちろんですが、メジャー仕様になにかしらの変化は絶対に必要になります。

――山本投手は「対応力」も高そうな印象を受けます。

五十嵐 ストレートは問題ないと思います。そのうえで必要になるのが変化球ですが、山本投手の場合は複数の球種を高いレベルで操れる。その意味ではキャンプからスプリングトレーニングで「どの球種が使えて、どの球種が使いにくいか」をしっかりと見極めているはずです。武器が1個、2個しかなかった場合は、それがダメだと苦労しますが、彼の場合は選択肢が多いのでアジャストはしやすいのかなと。

――環境面の変化はどうでしょう?

五十嵐 もちろん、戸惑いもあるはずです。ただ、山本投手の場合はチームメイトに大谷選手がいる。これは他のルーキーにも言えることですが、松井裕樹投手はパドレスでダルビッシュ有投手、今永昇太投手はカブスで鈴木選手と、日本人のチームメイトがいるのは大きいはずです。特に1年目は「言葉」で苦労しますからね。自分の思っていることを直接相手に伝えられないのは、想像以上にストレスになるんです。その意味では、日本語で会話できるチームメイトがいて、なおかつ先ほど話した「対応」に関してもアドバイスがもらえる環境は間違いなくプラスになるはずです。今永投手の場合はチームメイトが野手の鈴木選手なので「アドバイス」というよりはコミュニケーション面でのメリットが大きいかもしれません。

――メジャー1年目の山本投手に期待することは?

五十嵐 先発ローテをしっかりと守って、まずは2ケタ勝利。勝ち星は打線の援護やリリーフ陣の協力も必要なので不確定な要素ではありますが、これだけの契約と期待を受けて入団しているので、このラインは超えてほしいし、超えられると思っています。


抜粋・編集
花田雪
1983年、神奈川県生まれ。編集プロダクション勤務を経て、2015年に独立。ライター、編集者として年間50人以上のアスリート・著名人にインタビューを行い、野球を中心に大相撲、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど、さまざまなジャンルのスポーツ媒体で編集・執筆。著書に『あのプロ野球選手の少年時代』(宝島社)『オリックス・バファローズはいかに強くなったのか』(日本文芸社)がある。

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