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実はまだ誰も見たことなかった!世界初「野生下で生まれたてのホオジロザメ」を発見

  • 2024.2.20
世界初!誰も見たことない「生まれたてのホオジロザメ」をついに発見か!
世界初!誰も見たことない「生まれたてのホオジロザメ」をついに発見か! / Credit: Carlos Gauna & Phillip C. Sternes, Environmental Biology of Fishes(2024)

ホオジロザメは世界最大の捕食ザメであり、人間も襲う危険な生物として有名です。

その獰猛な姿からは、小さな赤ちゃんだった頃の面影など想像できません。

実際、生まれたてのホオジロザメは今日まで誰も見たことがありませんでした。

しかしこのほど、米カリフォルニア州の海岸付近でついに世界初となるホオジロザメの赤ちゃんが目撃されたようです。

カリフォルニア大学リバーサイド校(UC Riverside)の報告によると、妊娠したメスのサメが水中に潜って姿を消した後、しばらくして小さなサメが水面に現れたという。

体長1.5メートルほどで、過去に見つかったホオジロザメとしても世界最小の一つとなりました。

研究の詳細は2024年1月29日付で科学雑誌『Environmental Biology of Fishes』に掲載されています。

目次

  • サメの繁殖方法は種類がいっぱい!
  • ホオジロザメの赤ちゃん、ついに見つかる⁈

サメの繁殖方法は種類がいっぱい!

魚類は一般に卵から赤ちゃんがふ化する「卵生」ですが、サメは種類によって繁殖方法が違います。

ネコザメやトラザメは他の魚と同じ卵生で、とぐろを巻いていたり、縁に紐飾りがついたような面白い形の卵を産み落とします。

トラザメの卵
トラザメの卵 / Credit: ja.wikipedia

一方で、サメの中には哺乳類と同じようにお母さんのお腹から赤ちゃんが生まれるタイプもいます。

例えばジンベイザメは「卵黄依存型」で、これは卵生とよく似ていますが、卵が母ザメの体の中でふ化して出産します。

また人間と同じ「胎盤型」もいて、胎内の子ザメにへその緒がつながっていて、そこから栄養を送って胎児を育てるタイプもいます。これはカマストガリザメなどが代表的です。

もう一つが「卵食・共食い型」といい、母ザメがエサ用に生み出した未受精卵を子ザメがパクパク食べることで、胎内で大きく成長するものです。

子ザメは未受精卵を大量に食べるので、お腹の中が黄身でパンパンに膨れ上がるという。

問題のホオジロザメはこの卵食・共食い型にあたり、母の胎内で育った後に外の世界へと産み落とされます。

サメ・エイ類に見られる4つの「胎生」タイプ
サメ・エイ類に見られる4つの「胎生」タイプ / Credit: サメの不思議(国立沖縄記念公園:PDF)

しかしここまでは分かっているものの、野生下で生まれたばかりのホオジロザメの赤ちゃんを見た人は誰もいませんでした。

ホオジロザメの赤ちゃん、ついに見つかる⁈

今回、ホオジロザメの赤ちゃんを発見したのは、カリフォルニア大の生物学者フィリップ・スターンズ(Phillip Sternes)氏と野生生物の写真家カルロス・ガウナ(Carlos Gauna)氏です。

両氏は2023年7月9日、カリフォルニア州中南部サンタバーバラの海岸付近で、ホオジロザメの個体がいないかどうかを調べていました。

そんな中、ドローンカメラを用いて上空から撮影していたところ、妊娠して腹部が大きく膨れ上がったメスのホオジロザメの姿が捉えられたという。

調査場所となったサンタバーバラ海岸付近(星)
調査場所となったサンタバーバラ海岸付近(星) / Credit: Carlos Gauna & Phillip C. Sternes, Environmental Biology of Fishes(2024)

ガウナ氏は数年前にもこの場所で妊娠したホオジロザメに遭遇しており、さらに今回の調査の数週間前にも妊娠したメスを3匹観察していたといいます。

これはこの海域がホオジロザメの出産場所である可能性を示唆するものでした。

「ホオジロザメの出産場所はサメ研究における聖杯(holy grail)のひとつであり、その場所を特定できた人は誰一人としていませんし、生まれたての赤ちゃんを生きたまま見た人もいません」とガウナ氏は話します。

しかし観察を続ける中で驚くべきことが起こりました。

その妊娠したメスが水中深く潜り姿を消し、しばらく時間が経過した後に、淡くて白い小さなサメが水面に姿を現したのです。

特徴的な2つの黒い目、ふっくらと膨らんだ頭部はホオジロザメ以外の何者でもありませんでした。

その全長は約1.5メートルほどと推定され、これまでに見つかったホオジロザメの中でも最小の部類です。

こちらがその映像。

水面に現れた小さなホオジロザメ
水面に現れた小さなホオジロザメ / Credit: TheMalibuArtist – World’s First Images of Newborn White Shark?(youtube, 2024)

これを見た両氏は、先ほど姿を消した母親が水中で産み落としたホオジロザメの赤ちゃんの可能性が高いと推測しました。

スターンズ氏はその証拠として「撮影した画像を拡大してみると、小さなサメの体表面から白い層が剥がれ落ちているのが見つかりました」と指摘。

続けて「これは生まれたばかりのホオジロザメが母親の胎内にいたときの組織を脱ぎ捨てた残骸と見られる」と説明します。

確認された白い組織の残骸
確認された白い組織の残骸 / Credit: UC Riverside – First-ever sighting of a live newborn great white(2024)

加えて、サメの大きさや形、皮膚の状態などは明らかに生まれたてであることを物語っていました。

また妊娠したメスが消えた後に現れたという状況証拠的にも、この個体が新生児であることを指し示しています。

水中に潜ったメスとは別の個体が産んだ可能性もありますが、スターンズ氏は「私の見解では、このサメはおそらく生まれてから数時間内か、長くても1日しか経っていない」と述べました。

出産場所が分かればサメの保護につながる!

今回の発見は単に「ホオジロザメの赤ちゃんが初めて見れた」という以上の価値があります。

というのも、この小さなサメが現れた場所を探索すれば、今まで誰も見たことのないホオジロザメの出産場所が見つかるかもしれないからです。

ホオジロザメの出産は多くの謎に包まれており、専門家らは野生のホオジロザメがどこでどのように赤ちゃんを産んでいるのか疑問に思っていました。

今回見つかったホオジロザメの赤ちゃんの写真
今回見つかったホオジロザメの赤ちゃんの写真 / Credit: Carlos Gauna & Phillip C. Sternes, Environmental Biology of Fishes(2024)

また多くの専門家は従来、ホオジロザメは陸から遠く離れた外洋で出産すると予想していましたが、今回のサメが見つかったのは海岸からわずか300メートルの場所です。

これはホオジロザメが比較的浅い場所で出産する可能性を示しています。

このように繁殖地の詳細が分かれば、すでに絶滅危惧種に指定されているホオジロザメの保護活動にも役立ちます。

スターンズ氏は「これらの水域が本当にホオジロザメの繁殖地であることを確認するには、さらなる調査が必要ですが、もしそうだと判明すれば、政府が介入して、ホオジロザメの保護を進めてほしいと思います」と話しました。

こちらの動画の7分30秒あたりから、妊娠したメスと水面に現れた小さなサメの姿が確認できます。

参考文献

First-ever sighting of a live newborn great white
https://news.ucr.edu/articles/2024/01/29/first-ever-sighting-live-newborn-great-white

First-Ever Footage of a Newborn Great White Shark Has Scientists in a Frenzy
https://www.sciencealert.com/first-ever-footage-of-a-newborn-great-white-shark-has-scientists-in-a-frenzy

サメの不思議(国立沖縄記念公園:PDF)
https://oki-park.jp/userfiles/files/worksheet/20140318-same-n.pdf

元論文

Novel aerial observations of a possible newborn white shark (Carcharodon carcharias) in Southern California
https://link.springer.com/article/10.1007/s10641-024-01512-7

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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