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大谷もダルビッシュも9失点!?メジャーで活躍する投手の「選抜高校野球」を振り返る

  • 2024.3.29

熱戦が続く選抜高校野球。

昨年の秋季大会の成績を基に選ばれた32校により紫紺の優勝旗が争われます。

現役のプロ野球選手やメジャーでプレーする日本人選手もかつてはこのセンバツの舞台で輝きを放ちました。
春は投手力」と言われる所以から、大会では特に投手の活躍ぶりが顕著。偉業を達成した投手からビッグプレーを見せた投手まで戦いぶりは様々ですが、球春譜として現在まで語り継がれ、ファンの心に刻まれています。

そこで今回、現役メジャーリーガーの中から春の甲子園に出場した経験がある3人を「選抜」。甲子園での成績や印象に残るシーンなどを中心に当時を振り返ってみることにしました。3選手はいずれも10年以上前のセンバツに出場したベテラン。野球ファンであればあらゆる選手の顔が思い浮かぶことかと思いますが、早速当時の「春」にタイムスリップしてみましょう。

ダルビッシュ有投手 東北高校(宮城) 第75回,第76回選抜高校野球大会出場

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写真:SANKEI

北海道日本ハムファイターズでプレーした後にメジャーリーグ挑戦。ダルビッシュ有投手も春の甲子園のマウンドに立ったピッチャーの一人です。高校生が在学中にセンバツへ出場できる回数は最大2回ですが、いずれも出場権を獲得。夏も含めると4季連続で出場しており、甲子園の常連選手でした

2年生ながら背番号1で出場した第75回大会は初戦で静岡県の浜名高校と対戦。速球と変化球を巧みに操り、4安打7三振1失点の無四球完投勝利を収めます。しかし、開会式後にファンから腕を強く引っ張られた際に肩を痛めていたことも響き、次戦は6回9失点と大量失点で敗北。同大会で台風の目となった花咲徳栄高校に9-10のサヨナラ負けを喫します。

その後は同年夏に甲子園で準優勝。後一歩届かなかった優勝を目指し、翌年再びセンバツの舞台に舞い戻ります。1回戦の熊本工業高校戦は後に広島東洋カープへ入団する左腕の岩見優輝投手との投手戦になりますが、147キロの直球とキレ味鋭いスライダーとシンカーを武器に12個の三振を奪い、一本の安打も許さない快投乱麻のピッチング。センバツでは10年ぶりとなるノーヒットノーランを達成しました。しかし、その後は調子を崩して準々決勝の済美高校戦はレフトで出場。9回表を終わって6-2とチームは優勢でしたが、その裏に相手の驚異的な粘りを止めることができず、最後はサヨナラスリーランを浴びて敗戦。大会史上初となる4点差サヨナラ負けを決定づける打球は無情にもダルビッシュ投手の頭上を大きく越える放物線を描きました

この大会で快挙と屈辱の両方を味わったダルビッシュ投手ですが、試合中には終始笑顔を見せるなど主将として人間的に成長した姿を見せていました。あれから今年でちょうど20年。この間ノーヒットノーランを達成した投手は未だに現れていません

前田健太投手 PL学園高校(大阪) 第78回選抜高校野球大会出場

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写真:SANKEI

続いては「マエケン」の愛称で親しまれる前田健太投手です。

名門のPL学園高校で1年夏から甲子園で先発登板を果たすなど下級生の頃から力のある投手でした。二度目となる甲子園は3年の春。背番号1を付け、エースとして大会に乗り込みます。

21世紀枠で選出された真岡工業高校との初戦はチーム力の差を見せ付けて9-1で圧勝。直球を中心に16個もの三振を奪って9回1失点と快調な滑り出しを切ります。2回戦の愛知啓成高校戦は相手投手の好投もあり1点を争う緊迫した展開。それでも2回無死二塁のピンチでは素早いバント処理で二塁走者を刺すなど落ち着いたプレーを見せます。9回に味方打線が1点をもぎ取る1-0の辛勝でしたが、試合時間は平均より30分も早い1時間28分。持ち味であるテンポの早い投球が光りました。試合後には「今まででいちばん嬉しい完封」と大物らしからぬ謙虚なコメントを残しています。

ベスト4を懸けた秋田商業高校との試合で衝撃を与えたプレーが「ホームスチール」。2回表にヒットで出塁した後に三塁まで進んだ前田投手は、ゆったりとした歩行から一転、猛然と本塁に突入します。捕手のタッチよりもホームインがわずかに早く、先制点を獲得。高校野球では滅多に見られないノーサインでの本盗でした。

準決勝では本来の投球が出来ず、長崎の清峰高校に0-6で敗戦。しかし、通算4試合で2完投1完封、35回2/3を投げて36三振2四球8失点の力投を見せ、持てる力は充分に発揮しました。同年秋のドラフト会議では広島東洋カープから1位指名を受けて入団。プロ入り後もエースとして活躍し、2016年からはメジャーでプレーを続けています。

大谷翔平投手 花巻東高校(岩手) 第84回選抜高校野球大会出場

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写真:SANKEI

最後の三人目は大谷翔平投手。

MLBで二刀流選手として活躍を続けるスーパースターも、かつてはセンバツに一度出場した経験があります。

新3年で迎えた2012年の第84回大会では背番号1を背負い、4番・ピッチャーで出場。当時から投手と打者の両方で評価が高く、大会屈指の注目選手でした

初戦の相手は大阪桐蔭高校。当時の大谷投手の身長を4cm上回る197cmの藤浪晋太郎投手をエースに置く優勝候補の筆頭です。いきなり難敵との対戦になりましたが、大型右腕同士の対決ということで注目され、プロのスカウトも球場に集結。大会初日第三試合、夕暮れの訪れを予感させる日の陰った甲子園で試合が始まります。

先手を取ったのは「打者・大谷」。2回裏、一打席目から結果を出します。5球目の内寄りに入った甘いスライダーを振り切りライトスタンドへソロホームラン。藤浪投手の出鼻をくじきます。ピッチングでも三振を次々に奪い、前半は花巻東のペースで試合が進みました。しかし、終盤に握力が落ちたところを相手打線に狙われて敗戦。大谷投手は8回2/3を投げて7安打11三振と持ち味を発揮した一方、四死球を11個与えるなど制球が定まらずに大量9失点を喫しました。指先が黒く焦げるまでに至った173球の熱投は実らず、開幕日に甲子園を去ります。同年夏は岩手県大会決勝で敗れ、結局甲子園で勝利を挙げることは叶いませんでした。

対照的に藤浪投手は大谷投手に勝った勢いで同年に甲子園春夏連覇を達成。二人の対戦はその後も続き、プロ入り一年目の交流戦と昨年4月のメジャーリーグの試合で「投手・藤浪VS打者・大谷」が実現しています。高校時代の力関係とは逆にメジャーでは大谷投手が実績で大きくリードしますが、昔からしのぎを削る両者の争いが今後も続くかもしれません。


情報は3月28日時点のものです。

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