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個人旅行でのんびりと。世界遺産・西表島を楽しむ、自然と歴史の穴場スポットめぐり

  • 2024.1.31

手つかずの大自然と希少な固有種による生物多様性に恵まれた世界自然遺産・西表島。高まる人気に対し、環境保護とオーバーツーリズム防止の観点から観光ルールが設定されているのをご存じですか?

ガイドツアーの参加が推奨され、個人で観光できる範囲が制限されるなか、ガイドなしでも楽しめる観光スポットをご紹介します。

西表島が目指す「西表島エコツーリズム」とは

photo by 竹富町観光協会

沖縄で2番目に大きい島「西表島(いりおもてじま)」。島を覆い尽くす亜熱帯のジャングルから特別天然記念物のイリオモテヤマネコなどの希少な動植物まで、「東洋のガラパゴス」とも謳われた生物多様性の宝庫です。2021年7月には、奄美大島、徳之島、沖縄本島北部とともに世界自然遺産に登録されました。

そんな西表島の魅力に惹かれ、訪れる観光客はコロナ禍前で年間30万人を突破。増え続ける観光客を前に、西表島もまた、島の生態系と島民約2,400人の暮らしが脅かされる「オーバーツーリズム」の危機に直面しています。

photo by Mayumi

そんな状況を打開すべく発足されたのが「竹富町西表島エコツーリズム推進協議会」。島の自然を損なうことなく持続可能な地域社会と観光の両立を目指す「西表島エコツーリズム」の全体構想を策定し、西表島を安全かつ存分に楽しむための新たな観光ルールが整備されています。

その一つが、利用目的に応じたゾーニング。世界遺産地域内外に関わらず一定のルールやマナーのもと、ガイド同伴などで観光する「自然体験ゾーン」、世界遺産地域外でルールやマナーを守って一般観光が可能な「一般利用ゾーン」、原則観光不可の「保護ゾーン」の3つに分けられ、さらに、ガイド1人あたりの対応人数や特定エリアへの1日立入人数の上限も設定されています。

加えて、西表島を訪れる旅行者数は1日1,200人まで、年間3万3,000人までと「入島制限」も策定。環境に負荷を与えないよう、入域数を抑制する方針です。

photo by Mayumi

こうして、さらに観光の縛りがきつくなった西表島。もちろんガイドツアーへの参加が安心かつ確実ですが、とはいえ、ふらっと訪れて自分のペースで西表島を楽しみたい旅人も少なくないはず。

そこで今回は「一般利用ゾーン」において、個人でも十分に西表島を満喫できる穴場スポットを厳選してご紹介します。

西表島随一の美しいビーチ「イダの浜」と船浮集落

photo by 竹富町観光協会

西表島西部、奥西表に位置する「船浮(ふねうき)集落」は、同じ島内でも道路が寸断されているため、船でしかたどり着くことができない「陸の孤島」。人口50人足らずだという、外界から隔絶された集落には、まるで時が止まったかのような穏やかな島時間が流れています。

photo by Pixta

船浮港から徒歩10分のところにある「イダの浜」は、西表島随一の美しさを誇る絶景ビーチです。遠浅の海に、沖合には美しいサンゴ礁、さらにはウミガメの遭遇率も高いとか。とにかく訪れる人が少ないので、プライベートビーチのような雰囲気となっており、非日常感が味わえます。

ちなみに、船浮はイリオモテヤマネコ発見の地としても知られているそうですよ。

星の砂とカラフル熱帯魚が楽しめる「星砂の浜」

photo by Mayumi

西表島最北端に位置し、上原港から車で約7分とアクセスのいい「星砂の浜(星砂海岸)」は、星のかたちをした小さな砂粒が転がっていることからこの名がつきました。

星砂(ほしずな)は、実は星のかたちをした有孔虫の遺骸だそうですが、見つけて拾うと幸せになれる、願いが叶うなどの言い伝えがあって、竹富島の「カイジ浜」同様、人気を集めています。

photo by Mayumi

星砂の浜は浅瀬で波が比較的穏やか、水温は高めで、潮だまりや海底の岩陰にカラフルな熱帯魚が多数見られることから、海水浴やシュノーケリングポイントとしても人気の高いスポットです。

ジャングル探検気分が味わえる「大富林道」

photo by Mayumi

西表島南東部、仲間川流域にある大富(おおとみ)集落からスタートする「大富林道(大富遊歩道)」は、片道5㎞ほどの自然散策道です。

道はよく整備されていますが、うっそうと生い茂る亜熱帯の森に囲まれ、ちょっとしたジャングル探検気分が味わえます。また、道の途中には西表島の植生が分かる「亜熱帯樹木展示林」、仲間川と西表ジャングルを見下ろす「仲間川展望所」、国の天然記念物である「ウブンドルのヤエヤマヤシ群落」を展望できるスポットもあります。

photo by Mayumi

写真は仲間川展望所から眺めたジャングルの様子。ここから仲間川マングローブクルーズやカヌーなどのアクティビティを遠望することもできます。

西表島の炭鉱の歴史を物語る「宇田良炭坑跡」

photo by 竹富町観光協会

実はあまり知られていませんが、沖縄で唯一炭鉱があったのが西表島です。近世の終わりごろからその存在が知られ、明治期以降から本格的に採掘を開始し、第二次大戦が終わるまで西表炭鉱として採掘が続けられました。

島内にあるいくつもの炭鉱のうち、当時最大規模を誇ったのがこの「宇田良(うたら)炭鉱」です。現在、多くの炭鉱遺構が老朽化などで失われてゆく中、宇田良炭坑跡は比較的保存状態がよく、近代化産業遺産にも認定されています。

photo by 竹富町観光協会

通称「絞め殺しの木」とよばれるアコウの木の根が建物を飲み込み、その廃墟の姿はまるでラピュタの世界のよう。

西表炭鉱では「圧制炭鉱」と呼ばれる過酷な強制労働を強いられており、さらに当時の西表島ではマラリアで死亡する人が後を絶たなかったことから、脱走者も多かったそう。西表島の別の顔が垣間見える貴重なスポットです。

哀しい歴史が刻まれた「忘勿石」

photo by 竹富町観光協会

西表島南部に位置する「南風見田の浜(はえみだのはま)」。2㎞に渡る風光明媚な白砂のビーチの東端には、哀しい歴史を物語る「忘勿石(わすれないし)」という石碑がひっそりと置かれています。

第2次大戦の戦況悪化で、軍の司令によりこの地へ強制疎開させられた波照間島の島民たち。マラリアに汚染されたこの地ではそのほとんどが罹患し、約3分の1が命を落としたとされています。「忘勿石」は、当時の波照間国民学校(現:竹富町立波照間小学校)の校長を務めた識名(しきな)氏が生存者とともに波照間島へ引き揚げる際、犠牲者を悼んで刻んだ「忘勿石 ハテルマ シキナ」に由来します。

なお、現在見られる慰霊碑「忘勿石之碑」は1992年に新たに設置されたものです。

photo by 竹富町観光協会

そんな壮絶な歴史があったとは思えないほど、ビーチは穏やかです。悲劇の歴史を振り返り、彼らの無念と安らかな眠りを心から祈りつつ、今ある「幸せ」のありがたさに気づかせてくれる、そんなスポットです。

うねる板根がド迫力!「古見のサキシマスオウノキ群落」

photo by Mayumi

まるでカーテンのように発達した板状の巨大な板根が特徴の「サキシマスオウノキ」。国内では沖縄や奄美地方でのみ見ることができる木で、西表島の仲間川上流域に生息する推定樹齢400年のサキシマスオウノキは日本最大と言われています。

このサキシマスオウノキ、実は仲間川クルーズに参加しなくても、もっと手軽に観察できるスポットがあります。それが「古見(こみ)のサキシマスオウノキ群落」。国の天然記念物にも指定され、サキシマスオウノキが群生する姿は圧巻です。

photo by Mayumi

群落まで渡された遊歩道沿いにはマングローブ林を構成するヤエヤマヒルギやオヒルギ群落が広がっています。西表島ジャングルの一端が感じられる、見ごたえ十分のスポットです。

※2024年1月現在、古見のサキシマスオウノキ群落は遊歩道の劣化に伴い立入禁止となっています。

番外編:西表島ならではのご当地風景

西表島はどこもかしこも「イリオモテヤマネコ」一色

photo by Mayumi

西表島といえばイリオモテヤマネコを思い浮かべる人も多いでしょう。広場の銅像から橋の欄干、公園のすべり台、塀に置かれたシーサーもどきまで、とにかく島はイリオモテヤマネコ一色。ぜひ宝探し的なノリで目を光らせてみてください。

ちなみに、画像にある道路標識のように、本物のイリオモテヤマネコにバッタリ遭遇なんてケースも案外少なくないとか。かくいう筆者もチラッと大富林道で見かけました。貴重なイリオモテヤマネコが交通事故に巻き込まれるケースも発生しているそうで、くれぐれもレンタカーなどの運転にはご注意を。

やっぱり沖縄の風景には欠かせない、愛すべきヤギたち

photo by Mayumi

そして、沖縄といえばヤギ。ほかの八重山の離島に比べて畑や牧場の少ない西表島ですが、運がよければこんな愛らしいベビーヤギたちに出会えるかも。

最後に:西表島訪問で気をつけておくこと

前述の新たな観光ルール以外でも、正直、観光面ではいろいろと不便が多い西表島。ほかの八重山諸島と同じ感覚で訪れて、「十分楽しめなかった……」なんてことにならないよう気をつけましょう。

photo by Mayumi

まずは移動手段。沖縄本島の次に大きい島であることからもわかるように、周遊道路の西の端から南の端までおよそ50㎞あり、さすがに徒歩や自転車で移動するのは難しいでしょう。

そして島唯一の路線バスは1日4本運行で、上原港から大原港までの所要時間は1時間ほど。頼みの綱のレンタカーや観光タクシーも台数はそれほど多くなく、シーズン中は争奪戦となります。また、海況が荒れると上原航路は欠航となり大原港一択に。

要するに、“足”を確保し、船の時間や移動などをうまく調整することが西表島を満喫する重要なカギとなります。

photo by Mayumi

次に、食事関連。飲食店や商店は港近くの集落にしかなく、数も限られます。もちろんコンビニはなく、特に飲食店の営業時間には注意が必要です。食事つきの宿を確保している方は安心ですが、日帰りや素泊まり、キャンプの方は気をつけましょう。

結果として、必要なものが揃ったツアーに参加するのがもっとも安心かつお手軽という話になりますが、とはいえ、自分のペースでいろいろ組み合わせられる、自由度の高い個人の旅もやっぱりおすすめです。

決められた観光ルールやマナーを守って、ほかでは味わえない西表島の魅力を満喫してくださいね。

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