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新作フレグランス「ニュールック」は、クリスチャン・ディオールの創造へのオマージュ。

  • 2024.1.31

メゾン クリスチャン ディオールから、クリスチャン・ディオールを象徴するスタイル"ニュールック"を、現代的に解釈した香りが発売される。自由かつ大胆な創作を手がけたフランシス・クルジャンの言葉から、ディオールの哲学に導かれる香りの魅力を解き明かしていく。

Francis Kurkdjian/フランシス・クルジャンディオール パフューム クリエイション ディレクター。20代から調香師として才能を発揮し、世界的な名香を手がけるなど輝かしい実績を重ねる。2009年に、自身の名を冠したフレグランス

日本人にもファンが多い香りの創造者、フランシス・クルジャン。彼がパルファン・クリスチャン・ディオールのパフューム クリエイション ディレクターに就任したと聞いて、心躍ったファンも多いのではないだろうか?彼の才能が見事に昇華した待望の新作が「メゾン クリスチャン ディオール」から発表される。創作の核心にインタビュー。

「2021年の就任後に手がけたジャドール ロー(23年発売)は、ある意味ムッシュ ディオール本人に対するオマージュでした。花をこよなく愛した彼の人物像を反映したフローラルな香りです。一方、今回新たに発表した"ニュールック"は、ムッシュのクリエイションに対するオマージュ。ニュールックは彼を象徴するクリエイションですが、ひとつのシルエットである以上にスタイルでありアティチュード、そして精神そのものです。このテーマに挑戦したいという気持ちは自然と湧いてきましたし、自分の使命だと感じました」

ご存じ"ニュールック"は、1947年にクリスチャン・ディオールが手がけた初コレクションを象徴する言葉。発表されるやいなや、そのエレガントなスタイルは世界を席巻し、戦後ファッションの新時代の扉を開いた。キュッと引き締まったウエストやボリュームのあるスカートなど、女性らしさを強調するスタイルはメゾンの永遠のアイコンとなっている。その偉大なヘリテージの名を冠した香りを作ることは、当然のことながら大きな挑戦だったという。

「8ラインやコロール(花冠)をはじめ、ムッシュ ディオールの頭の中には建築的、構築的な服を作りたいというイメージがあったことを知りました。そこで香りを作る際もその意図を引き継ごう、と道筋を定めました。ニュールックはくっきりと構築的なフォルムをもつスタイルなので、輪郭のはっきりした香りを作ることにしたのです。空気のように消えゆきそうな儚さと温かさのあるアンバーやフランキンセンスを中心に据えたことで、非常に"着心地のいい香り"になりました」

それは、スタイルと香りの美しい対話。モダンで洗練された"ニュールック"を、最高品質の香料を用いて現代的に表現した、フランシス・クルジャンらしさが光る軽やかな香り。しなやかなアンバー アコードを基調に、フランキンセンスの神秘性とアルデヒドの煌めきが響き渡る。メゾン クリスチャン ディオール ニュールック オードゥ パルファン250ml ¥48,400(写真)、同125ml ¥34,100、同40ml ¥15,950(2/2発売)/パルファン・クリスチャン・ディオール

新作フレグランス、ニュールックは、香ってみるといい意味での衝撃が感性を駆け巡る。煌めくようなフランキンセンスに、バニラやアンバーが融合。特定の花のような具体性は感じられないのに、忘れえぬイメージが残像となるような神秘的な香り......。纏った時の持続性の高さも大切にしたと言う。

「ディオールのアーカイブには頻繁に足を運んで、クリスチャン・ディオールという人物と彼のクリエイションとの対話を続けています。知識や情報が、ある程度蓄積したところで、次はそれをどう生かしていくか、どう現代的な感覚で表現し、新しいものを作っていくかを考える作業に入ります。そしてこれは、キム・ジョーンズやマリア・グラツィア・キウリも同じだと思いますが、私たちのミッションは過去の繰り返しではなく、個性や才能を生かし、ヘリテージを現代的に解釈することです。そこには個人的な要素も入ってきますが、その責任を負う覚悟をもっています」

クルジャンは、奇才の調香師でありながら、非常に哲学的なアプローチで香りと向き合うことでも知られる。「なぜ私たちは香りを纏うのか?」という本質的な質問を投げかけてみた。

「人間と機械とを区別するのが"香り"だと考えます。AIや仮想現実が発達する中で、人間が人間らしくあることを助けてくれる存在として香りがあるのではないか、と。新型コロナウイルス感染で嗅覚異常を経験した方々がみな、人生の楽しみのひとつが奪われたと話していましたが、香りは人間が人間らしく生きるのに大切な要素だと思っています」

大の親日家でもあるクルジャン。インタビュー中もパリのマレ地区にあるOgata Parisという和のブティックで購入した匂い袋を手にしていた。

「日本人特有の露骨でないユーモアも好きですし、自然と人間との距離の近さも素敵です。フランスの哲学者ロラン・バルトが著書『表徴の帝国』で、日本はすべての表現や行動に何かしら意味があると書いていますが、私も同じ感覚を持っています。日本は、私の美意識に大きな影響をもたらしています」

●問い合わせ先:パルファン・クリスチャン・ディオールtel:03-3239-0618www.dior.com

*「フィガロジャポン」2024年3月号より抜粋

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