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『Saltburn』ちょっぴり過激な中毒性が観ずにはいられない……⁉【ものかきSYOがスウィートガールに捧ぐ今月の推し映画】

  • 2024.1.29

『Saltburn』ちょっぴり過激な中毒性が観ずにはいられない……⁉【ものかきSYOがスウィートガールに捧ぐ今月の推し映画】

sweet誌面で映画や小説・漫画を毎号紹介している物書き・SYOさんが今月の推し映画を紹介する連載【ものかきSYOがスウィートガールに捧ぐ今月の推し映画】

vol.13の今回紹介する映画はハマる人が続出して話題となっている『Saltburn』。

コンテンツ過多の現代、可処分時間(自分の自由に使える時間)のいくらかを情報収集に充てないと取りこぼしてしまう……という瞬間が増えた。小説や漫画の新刊出てたの!?と後から気付くことも多いし、劇場映画はまだ“宣伝期間”があるからいいものの、(特に海外の)配信作品は著名な俳優が出演していても事前に知らされず、映画業界にいてもなかなか存在を認知できないのが密かな悩みだ。もちろんいい映画は口コミで広がっていくもの、というのもわかってはいるが、ちゃんと体制を作ってほしい……というのが本音。ということで本連載では、『フローラとマックス』や『終わらない週末』等の配信作品も積極的に取り上げてきた。

今回紹介するのは『Saltburn』(ソルトバーン)。原題まんま!タイトルからどんな話かわからん!という作品のためハードルが高いやもしれないが、入り込みやすいのに過激でゴージャスな画面に実力派の怪演も楽しめる……というキレッキレな映画になっている。『プロミシング・ヤング・ウーマン』エメラルド・フェネル監督×『ダンケルク』『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』バリー・コーガン×『ゴーン・ガール』ロザムンド・パイク×『ドライヴ』キャリー・マリガンと、洋画好きにとってはキャスト・監督の時点で観る!となる豪華度(実際僕も待ちわびていた1本)だが、肝心のストーリーはどうか。ざっくり説明すると、ドロドロ下克上モノだ。

名門大学に入学した奨学生オリバー(バリー・コーガン)は、初日から“イケてないヤツ”認定され、孤独な学生生活を送っていた。そんなある日、ヒエラルキーのトップに君臨するフェリックス(ジェイコブ・エロルディ)を助けたことから彼に気に入られ、夏休みに彼の実家(もはや城レベル)に招待される――。というのが簡単なあらすじ。

序盤の展開は王道の学園恋愛漫画やBL的であり、非常に理解しやすい。かといって既視感があるわけではなく、クラシックな雰囲気漂う映像やバリーの卑屈な名演、ソフィア・コッポラ監督の新作『プリシラ』(4月日本公開予定)や、ギレルモ・デル・トロ監督の新作『Frankenstein(原題)』が控える注目株エロルディの圧倒的強者感で「わかりやすくて目が楽しい」状態を作り出してくれる。

しかも、オリバーの心情描写が絶妙。フェリックスに気に入られても彼のパリピな取り巻きやセレブな家族からは下に見られてしまい、必死にレギュラー入りを目指す痛々しさ――彼の心に渦巻く妬みや羨望が「学園パート」と「実家パート」で丁寧に描かれていく。フェリックスと飲む約束をしたのに連絡がなく、行きつけのパブに行ったらいつもの仲間と飲んでいた際の絶望感、フェリックスのいないところで「君は僕たちと同じにはなれない」「あなたは所詮、いまだけお気に入りのおもちゃ」「光に集まる蛾みたい」的な“口撃”を受けるしんどさ……。フェリックス自身はピュアな良いヤツなのだが、周りがまぁいけすかない怪物だらけ。ただ、本作が面白いのは先に述べた「ドロドロ下克上モノ」の部分――つまりオリバーが“逆襲”していくところにある。

勤勉な学生であるオリバーは屋敷に呼ばれるとすぐに調査と勉強を始め、フェリックスの母エルスペス(ロザムンド・パイク)の心を掌握。少しずつ、だが確実に自分の居場所を築き、小馬鹿にしていた相手を陥れたり懐柔したりしていく。その方法論とフェリックスへの偏愛が常軌を逸しており、それらのシーンに出くわした際には度肝を抜かれることだろう。さらに、最後まで観ると「あれはそういうことだったのか!」と気づかされる伏線シーンも多数。ちなみにバリー・コーガンは本作での演技で本年度のゴールデングローブ賞主演男優賞(ドラマ部門)にノミネートされており、本編を観れば納得の強烈なパフォーマンスを見せている。

面白くてヤバいもの観ちゃった……とつい言いたくなるような過激な中毒性を有した『Saltburn』、「何かトガッた作品観たいな」と思うおうち時間にぜひチェックしてみてほしい。

Saltburn

story:オックスフォード大学に入学したオリヴァー・クイック(バリー・キオガン)は大学生活になじめないでいた。そんな彼が、貴族階級の魅力的な学生フィリックス・キャットン(ジェイコブ・エローディ)の世界に引き込まれていく。そしてフィリックスに招かれ、彼の風変わりな家族が住む大邸宅ソルトバーンで生涯忘れることのできない夏が始まった。

text : SYO

web edit : KAREN MIYAZAKI[sweet web]

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