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「朝日を浴びるようになって私の睡眠に起きた変化」

  • 2024.1.26

ラベンダーのピローミストや通気性のよい上質な寝具を使ってみるなり、大人のベッドタイムストーリーを聞いてみるなど、眠れないときにできることはたくさんある。それぞれに違ったメリットがある一方で、睡眠を改善する最善の方法と言われているのは、実はとんでもなくシンプルな習慣で、しかも夜とはまったく関係のないことらしい。

それは、朝の過ごし方。具体的に言うなら、どこで過ごすかということ。最近ソーシャルメディアでは、「概日リズム」としても知られる生体リズム「体内時計」を整えるために、早朝(または起床後すぐ)に外に出て太陽光を浴びるように推奨する人で溢れている。

でも、最近ではますますこの用語が「バイオハック」や「最適化(Optimisation)」と関連付けられるようになり、私は懐疑的ではあるものの、朝日が本当に睡眠を改善するのか真実を追求してみたくなった。

概日リズムの基本

「概日リズムとは体内の24時間時計です。遺伝子に組み込まれているもので、光がなくても機能し続けています」と説明するのは、オックスフォード大学の准教授で、概日生物学者のアーティ・ジャガンナート博士。「この体内時計を味方につけるには、体は光から情報を受け取る必要があるのです」

これは、体のすべての細胞に存在しているが、ジャガンナート博士は、脳の視床下部に拠点を置く「マスタークロック(主要の体内時計)」があると説明している。このマスター時計は目から情報を受け取り、目に入る光の量を基準に朝か夜かを判断しているんだそう。「こうしてマスター時計は脳や体全身に信号を送り、体内のすべての細胞に存在する体内時計を調整しているのです」とジャガンナート博士。「起床や食事のタイミング、消化器を動かすタイミング、就寝に向けて体をリラックスさせるタイミングなどがわかるようになります」

問題は、起床後すぐに車に飛び乗って通勤したり、ベッドから自宅のデスクに直行したりすると目に十分な光が入らないため、脳が昼間であるという信号を受け取れなくなること。体内時計が混乱すると体はさまざまな影響を受け、一日中疲れを感じるようになったり、夜に眠れなくなってしまうんだそう。

これもまた、ただのバイオハック?

近年では、朝日を浴びるメリットがバイオハッキングのサイクルと関連付けられるようになり、科学的根拠のないただのTikTokのトレンドではないかと疑念が沸いた。

でも、専門家のジャガンナート博士が私の考えを変えてくれた。ジャガンナート博士によれば、現代の生活が体内時計を頻繁に混乱させるとのこと。「電気や人工光がなかった時代は、太陽光だけを頼りにしていました。それに昔は屋外で過ごす時間のほうが長かったのですが、現代では室内で過ごす時間が増え、太陽光に当たる時間が減っています」。これに加え、相応しくない時間帯に光に晒されることが増えた。例えば寝る直前。「夜は照明で室内を明るくし、オフィスで一日中晒されている光と変わりないため、体内時計は本当に混乱してしまうのです」

ジャガンナート博士いわく、自然光が睡眠にもたらす影響は、複数の研究によって裏付けられている。大学ボルダー校の研究では、キャンプに参加した人(自然光だけを浴びた人)は、家で過ごした人よりメラトニン (夜であることを示す生物学的なシグナル)の濃度が高かった。2014年の別の研究では、夜間の光と高齢者の睡眠の質の低下や不眠症を紐づけている。

さらに、これらによる影響を受けるのは睡眠だけではない。「気分もまた、体内時計の支配下にあるんですよ」とジャガンナート博士。「人は夜中に気分がもっとも下がるようになっているため、気分が上がったり下がったりする日中のサイクルがあります」。実際に自然光は気分を高揚させる要因であると知られており、うつ病や季節性感情障害(SAD)の患者には光療法ランプが処方されることはよくある。ある研究では、朝日が双極性障害患者の入院期間を短くしたことが報告されている。

代謝への影響もある。「体内で食べものを代謝し、消化し、栄養が適切に利用されるためには、肝臓でいくつかの経路が活性化される必要があり、これらの経路も体内時計によって制御されています」とジャガンナート博士。もし体が朝に食事を摂ることを予期できていたなら、それらのカロリーやグルコースを夜に摂取したときより、体はずっと効率よく処理することができるようになるんだそう。

専門家による、朝日を浴びるアドバイス

Women's Health

朝日を浴びるのに最適な時間と長さはどれくらい? 明確な答えを出すには十分な研究が行われていないけれど、「外で得られる自然光の量が多いほど、体内時計への効果が高いことがわかっています。おおよその目安としては、目が覚めた直後に太陽光を浴びながら20分ほど散歩をするのが理想的です」とジャガンナート博士。

庭に座って朝日を浴びるだけでも確かに効果は実感できるけれど、ジャガンナート博士の考えでは、運動と朝日を組み合わせることで効果が増強するとのこと。「体内時計にとっては運動も手がかりであるため、これらを同時に行うことで、体内時計ははるかに強力なシグナルを得ることができるのです」

「早起きをしてアクティブに体を動かし、光を浴びて目をしっかり覚ますようにすると、その日のうちに体の変化を実感することができます」とジャガンナート博士。「これらはすべて相互に影響し合うため、夜はよく眠れるようになります。これを維持できれば、数日にかけて効果を感じられるはずです」

朝日が体の目覚めを助けてくれるのと同様に、薄暗い照明は体をリラックスさせるのに役立つ。「夜に光に晒されるとメラトニンの分泌が抑制されるため、寝付くまでに時間がかかるようになるだけでなく、起床後も体にだるさが残ってしまいます」とジャガンナート博士。

この解決策はなにかある? 夜は光源を気にかけること。夕食後はメインの照明を消して、間接照明を使うようにするといいそう。スマホやパソコンのスクリーンを長時間見るのもよくない。

「画面が暖かい色で表示される夜間モードに切り替えると、ブルーライトによる悪影響を阻止できると考える人もいますが、それは残念ですが事実ではありません」とジャガンナート博士。就寝前に目が冴えるのは光のせいだけでなく、あなたが見ている刺激的なコンテンツによる影響もあることをお忘れなく。「とくにソーシャルメディアで目にするコンテンツは、心を興奮させるものが多いですからね」

実際に、朝日を浴びる効果を実験してみた

Women's Health

上記のアドバイスを参考に、朝日を浴びることをルーティンに加えてみた。普段私は、仕事を始める前にリビングでヨガをしたり、デスクに座る前にコーヒーマシンへ向かう。朝日を浴びながら散歩するルーティンをもっと価値のあるものにするために、早めにコーヒーミーティング(カジュアルな会議)を入れ、ジムのクラスを予約し、日中もコワーキングスペースまで歩くようにしてみた。

2日目にして最初に気づいた変化は、生産性とモチベーションが上がったことだった。これが起床後すぐに朝日を浴びた直接的な効果かなのか、それとも外で体を動かすようにしたり、新たなコワーキングスペースでインスピレーションを受けたからなのかはわからない。いずれにしても、気分がいい。ジャガンナート博士も、朝の習慣は人生にポジティブな変化を生み出す素晴らしい方法だと言っている。「一つのことを始めると、他の面の改善にも取り組みやすくなります」とジャガンナート博士。

肝心な睡眠はというと? 私はいつも十分に睡眠をとれてはいなかったけれど、かと言って改善するためになにかを試してみたこともなかった。寝るまで電気を付けているし、寝る前にTikTokをスクロールするのが習慣付いている。ジャガンナート博士のアドバイスを参考に、早めに照明を落とし(心地よかった)、スマホはおやすみモードにして、代わりに本を読むようにしてみた。私はApple Watchで睡眠を記録しているんだけれど、その差は歴然だった。寝付きが早くなり、レム睡眠、コア睡眠、深い眠りのバランスが改善し、夜中に目が覚めることもなくなった。

この実験を始めてから最初の数日間は毎朝晴れていたけれど、週末にかけて空は灰色だった。本格的な雷雨だった日もあり、実験を続行するのが難しかった。イギリスに住んでいれば、常に朝日を浴びることは可能じゃない。だけどジャガンナート博士は、どんな光でも、どんな動きでも、ゼロに越したことはないと言っている。だから私は、どんな天候でも外に出ることにした。

この実験を始めて以来、学んだ教訓を守り続けている。本当に変化を実感しているから。もちろん、この違いがどれほど朝日による効果なのかは言い難い。とくに睡眠に関しては、ストレスレベルや生理周期など、複合的な要因も関係しているだろうから。それに、毎日このルーティンを実行できているわけでもない。週末は何度か夜更かしして朝遅くまで寝ていたし、太陽光をまったく浴びずに過ごす日さえあった。でもジャガンナート博士は、これを咎めることもなかった。「睡眠は、体内時計と睡眠の必要性という2つの要因によって調整されるのです。起きている時間が長ければ長いほど、睡眠が必要になります」とジャガンナート博士。「もし睡眠が必要なときは、できるだけ休息をとることが大切です」

「私なら、ルーティンを続けるために休息を犠牲にすることはありません」と、ジャガンナート博士は私を安心させるように言った。それでも、朝起きて体を動かせるときは、朝日を浴びて1日を始めることを強くオススメしたい。 ※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。Text: TAI IBITOYE Translation : Yukie Kawabata

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